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AT『アベルとテツの』冒険譚 if 異世界転生したおっさんが普通に生きる  作者: カジキカジキ


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王都へ3

 第二王子を推す連中から乗せられ、第二王子派を語ったまでは良かったが。あの連中、最近は少し調子に乗りすぎておるな、勢力を増やそうと力ずくであったり、儂の名も都合よく使っている話も聞く。


 頭を悩ませている日を過ごしながらも、王城の執務室で政務をこなしていたある日の事だ。


 「アルドラゴよ。久しぶりに手合わせをせぬか?」


 いつもの政務をこなしていると、王がとんでもない事を言い出した。


「私は構いませんが」


 チラと王の隣にいる執事の顔を見ると、平然としたままなので既に予定されていた事なのだろう。


「では、参ろうか」


 スッと王が立ち上がり、執事が扉を開けて歩み出す。何も言わずとも近衛達も先を歩くので、これは本当に仕組まれているな。


 普段は近衛や騎士団の鍛錬に使われる訓練場には、人払いがされていたのだろう、当然誰も居なかった。


 王が、訓練用の刃が潰された剣を持ち軽く振るう。


 ヒュッ、と鋭く風を切る音。


 私も、同じく剣を持ち。少し離れた位置に立つ。


 王の顔を見ると。


「以前は、よく二人で手合わせをしたものだったがな」


「お互い、忙しくなりました」


「歳を取ったとは言わぬのか?」


「まさか」


 王が剣を向けたので、私も相手する為に剣を構える。


「ガルバルドの事は聞いているか?」


 今更、何故その話題だ?


「確か、隣国から来た冒険者と国内を回られているとか?」


「そうだ、そして儂の元にきた新しい手紙では。ガルバルドが六十層のアースドラゴンを倒したそうだぞ」


「ドラゴン!?」


「羨ましいの、儂も一度で良いからアースドラゴンと対峙してみたかった。お主はどうだアルドラゴ?」


 そう問われた瞬間、王の体からもの凄い覇気が放たれた。


「グッ!」


「どうだ? これでもアースドラゴンには及ばぬかな?」


「私は……アースドラゴンと対峙した事はありませぬので」


 額から脂汗が流れ、震える手足を何とか抑え。剣だけは下ろさない……が。


「ぬん!」


 上段に振り上げられた王の剣が、(いかずち)の如く我の頭上に振り下ろされた。


 ・

 ・

 ・


「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」


「ヌハハハ、豪剣を誇ったアルドラゴも歳には勝てぬか?」


 執事から布を受け取り、我を見下ろしながら汗を拭く王。


「ケンデュロスの件で何やら策を講じておる様だが。お主との仲だ、今のうちに手を引いておけば聞かなかった事にする」


 執事に剣を渡すと、近衛を連れ帰ってゆく王。帰り際に「戻ったガルバルドとの手合わせが楽しみだ」と笑って去っていった。

 

「完敗……か」


◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


 梯子を外された貴族達がどうなったかと言うと。


 第二王子派を叫び権威を振り回していた一部の連中は、大きく他の貴族に遅れを取ることになり。さらに、目に余る暴挙に出ていた貴族は粛清を受けることになった。


 第二王子派として残ったのは、第二王子を支えた王妃と王妃の実家の侯爵家のみ。


「これで少しはアルも帰りやすくなったのか?」


「出来たら、ケンデュロスとも仲良くなりたいのだけれど」


 テツさんの言葉に思わず本音が漏れる。初めて会った時からずっと離れされてしまい、殆ど会うことも許されなかった弟。


 初めて会った時に、手をきゅっと握られた時のあの衝撃は、今でも鮮明に思い出す。その後の事故も……。


 だけど! 僕は、もうその事でクヨクヨ悩みはしない。自分の力を制御する方法も分かり、他の人と同じように力を加減する事も出来る。もうあんな事故は起こさない。


 少し俯いた僕に、心配したリザリスが近寄ってくる。リザリスと顔を見合わせ、ニコリと笑い。


「さあ、王都に戻ろう!」


 オウルスト伯爵と挨拶を済ませ、ドルドラ卿とリザリス。アルとテツさん……グルガンさんも居たね。


 揃って王都へ戻ろう。


「アルとテツさんは、王都へ戻ったらどうするの?」


 聞かれたアベルが、テツさんと顔を見合わせてから。


「僕たちも、ヴァルスガルド王国へ戻ろうと思います。グルガンさんも戻りたさそうだしね」


 隣でグルガンさんが、ウンウンと頷いている。


「そっか……」


 寂しくなるな。と思っていると、それを感じたのか。「まだ王都まで五日はあるから、それまで色々話そうよ」と、アベルに元気付けられた。

 

 王都まで、元々の予定はシュットガルド領から二十日掛けて到着する計画だったが。このオウルスト領で殆どの要件が済んでしまったので、王都までは寄り道せず、残り五日で到着の予定になっていた。


「オウルスト伯爵、世話になった」


 伯爵やズラッと並んだメイド達に見送られて、オウルスト伯爵領を馬車が出発する。


 ガタンッ! と馬車が動き出した振動に身を任せ、背もたれに寄りかかり気を休める。


「お疲れさま、アル」


 リザリスが頭を撫でてくれる。少し恥ずかしいがヒンヤリとした手が心地よい。ドルドラ卿も見ないふりをしてくれている。


「王都に着いたら、もっと大変になると思うから。今の内に休んでおきなさい」


「?」


 リザリスの言葉に僕が理解出来ないでいると。


「きっと国王が貴方と手合わせをしたがるでしょうし。アースドラゴンとの戦闘の様子は、皆が聞きたがると思いますよ」


「え?!」


 僕が驚いていると、向かいの席のドルドラ卿もウンウンと頷いている。


「手合わせは……仕方ないけど。アースドラゴンとの戦いは、無我夢中で殆ど覚えていないんだけど」

 

「きっとゴドス卿も来るでしょうね」


 僕が嫌な顔をしていると。


「その代わり、王都での面倒な件は私とお祖父様とで片付けておきますから」


「本来の目的とは変わってしまったが、孫娘の嫁ぎ先がゴタゴタしているのは勘弁だからの」


 僕が剣を振っている間に、面倒な事が済んでいるのは助かるけれど。


「それに……王都には、お母様もいらっしゃいますし」


 一瞬、ドルドラ卿の体がビクッと反応する。


「そ……そうだな、リスリラもいたな」


「お母様、アルとの手合わせ我慢できるかしら?」


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