王都へ2
「アルもリザリスさんも、もっと早く助けてくれても良かったのにー」
僕とテツにぃは、それから暫く地主のおじさん達に色々説明させられて、やっとの所をリザリスさんが声をかけて助けてくれたんだけど。
「でも、作物にかける熱意は凄かったね」
「流石にドラコーン王国で一番の収穫量を誇るだけはあるな」
アベルも、地主さん達の勢いには感心していた。
「お祖父様達の話も、上手く進みそうだしな」
別室では、おじいちゃんとオウルスト伯爵が話しをしている。新しい作物や四輪作の導入は。今後、ドラコーン王国でも広まって行くだろうし、アルの事も、きっとオウルスト伯爵も良い方向に考えてくれるだろう。
皆んなが、そうやって何となく良かったと思っていた時だった。
オウルスト伯爵家のメイドさんが慌てたように伯爵達がいる部屋へと入って行った。そして、急に部屋の中が騒がしくなったかと思うと。荒々しく部屋の扉が開き。
「何の先触れもなく来たと言うのか!」
オウルスト伯爵とメイドさんが、部屋から出てきて慌てて玄関の方に向かって行った。
遅れておじいちゃんが出てくる。
「何があったのですか?」
リザリスさんが、おじいちゃんへ聞きに行ったら。
「どうやら、先に来ていたと言う第二王子派の貴族がいきなり訪問してきたらしいな」
伯爵の屋敷に先触れも無しに訪れるなんて、同じ伯爵か侯爵さんとか?
「!!⭐︎? !※で、⭐︎※!」
廊下が騒がしくなってきた、こっちにやってきたみたいだね。
ガチャ。
扉が開き、着飾った服のドラゴニア族の男性が中に入って来たと思ったら。
「おやおや、我らの隙を狙ってオウルスト伯爵を取り込もうとされていたのは、ドルドラ卿でしたか。おかしいですな? 確かシュットガルド侯爵は第二王子派だったはず」
「イルゾーグ伯爵、あまり無礼をなさると困りますぞ!」
遅れて入ってきたオウルスト伯爵が、ドルドラ卿に謝りながらイルゾーグ伯爵を窘める。
ちなみにアルとリザリスさんは、変な空気を感じて奥の部屋に隠れている。
「何が無礼なのですかな? 私はオウルスト伯爵に、この領の為になる話をしに来たのですよ。話の邪魔をしているのは、こちらのドルドラ卿ではないのですか?」
「「!!」」
凄い! 伯爵と呼ばれているのに、おじいちゃんに文句付けている! 確かに隠居しちゃってるけど、家督は義息子に継いでるけど、それでも侯爵家だよ? あなたより上の貴族の方ですよ?
イルゾーグ伯爵の態度にオウルスト伯爵の顔が真っ青になっている。
「伯爵如きが侯爵家にその様な態度を取るとは、王都に篭りすぎて礼節を忘れてしまったか?」
イルゾーグ伯爵は、一瞬体をビクッとさせるけど、何かを思い出し。
「第二王子を次期国王に押す声は、既に国王も理解されております。さらにアルドラゴ公爵も我らと同じ志をお持ちですので、今更第一王子を推す侯爵家なぞ、なんの恐れもありません」
うわぁ、王国内ってそんな事になってたんだ。だけど良いの? 今の話、隣の部屋まで聞こえているよね……。
「イルゾーグ伯爵、その話し、もっと詳しく教えて貰えるか?」
そう言って隣の部屋から出て来たのは。
「!!」
「どうした?」
「ガルバルド王子……何故ここに?」
「父に言われて、隣国の使者と王国を見て回っていたんだ。今はたまたまオウルスト伯爵領に来ていたのさ」
「くそ、面倒な」ボソッ
「これはこれは、失礼致しました。いらっしゃるとは存じませんでしたので。では、こちらが隣国の使者の方達で?」
と言って、目定めるような目つきで僕たちを見るイルゾーグ伯爵。
「そうだ、所でイルゾーグ伯爵。先ほど話していた第二王子派の件だが、アルドラゴ公爵はどこまで知っているんだ?」
「どこまでとは?」
「そうだな、お前達が勝手に隣国からの献上品を横領していたり。イルゾーグ伯爵の所にも、畑の改良剤と言って粗悪品を渡していた件……とか?」
アルに言われてみるみる顔が青くなるイルゾーグ伯爵。
「そっ、それは! どこにそんな証拠があるのですか!?」
いや、やってる事の否定はしないんだ?
「すまないが、お前たちのやっている行為が行き過ぎていると言う事で公爵からも苦言が出ていてな。幾つか策を練らさせて貰ったよ」
「なっ!?」
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時間は、シュットガルド領に最初に辿り着き、ドルドラ卿と話していた時まで遡る。
「もう、その様な話まで届いているのですね」
僕らがアベル達と一緒に王都を出てから、シュットガルド領へ辿り着くのには十六日掛かった。それを、ここまで真っ直ぐ目指せば早馬で七、八日で着くだろう。王国の最新の情報を仕入れて話が届くまで十分な日数だ。
隣国、ヴァルスガルド王国の使節団は五日後には帰路に着いた。そして、献上品のポタタや大豆の配分について、案の定各方面から横槍が入り始めたとの事。
王都にいるリザリスの父上、シュットガルド侯爵は役務柄、その横槍の矢面に立たされていた。そんな中、知ってしまう第二王子派の実情。
そして、僕が飛ばされたダンジョンから帰った後も。
入れ墨の件は黙っておくと言ったけど、ゴドス卿にだけは説明していた。ゴドス卿の判断で弟王子の様子を探り、国王に話しても良いと手紙を送っておいたのだ。
さらに手紙はもう一枚送られていた。リザリスのお祖母様が、王都にいるシュットガルド侯爵の奥様宛に送られた手紙。内容は、勝手をしている旦那を躾けるようにとお叱り。そしてそのまま第二王子派を騙り、情報を流すように……つまり間者になれとの指示であった。
ゴドス卿とシュットガルド侯爵からの返信から、弟王子は元から国王の座には興味は無かった事。第二王子派の一部が騒ぎ立て、弟王子を祀り立てていただけだと言う事。シュットガルド侯爵の手紙には、公爵が後ろ盾になったと勘違いした第二王子派の一部の連中が献上品の横領まで始めている情報も掴んでいた。
僕らが辺境伯領まで行っている間に、調子に乗った第二王子派の中の一部の連中は、少しずつ孤立の道を進み。気がつくと梯子を外された後だったのだ。




