王都へ
シャーナンド領を出発し、街道を馬車が進む事三日。次の目的地、オウルスト領が見えてきた。と言ってもまだオウルスト領の一番端で、領都までは二日くらい離れているみたいだけどね。
隣の領との領界にある、オウルスト領へと入る街に到着。今日はここに泊まって出発は明日だって。
さらに翌朝からまた馬車に乗って移動しているけれど、流石にドラコーン王国最大の大穀倉地域。見渡す限り畑が連なっている。今は小麦は終わって耕された畑、これからカブを植えたり肥料を入れて、秋には麦の種蒔かな。
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オウルスト領都に到着したら。アルとリザリスさん、おじいちゃんだけが領主の館に向かい、僕らは街の宿屋で待機になった。
「まあ私は、こっちの方が緊張しなくて良いんだけど」
そう言ってグルガンさんは、宿屋の食堂でエールを飲んでいる。
「ドルドラ卿たち、上手くいくと良いけどな」
僕とテツにぃも、後はアル達に任せてゆっくり過ごす予定にしていた。
「通りがけに見えてた畑も、おじいちゃん達の所より大丈夫そうだったし、あの話しで上手くいくんじゃ無いかな?」
あの話しとは。もちろんポタタや大豆などの作物と、新しい農具の利用についてだ。内容については、おじいちゃんが既に理解しているので僕たちの出番はない予定だったけれど。
「おじいちゃんが呼んでいる?」
街に着いた翌日、僕らは街の散策に出掛けようと思っていたのだけど。おじいちゃんの使いの人が来て、僕たちも領主の屋敷に行く事になった。
「何があったんだろうな?」
迎えの馬車に乗って、領主の館まで移動中にテツにぃとも考えてみたけれど。やっぱり何も分からなかった。
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「すまんな、休んでいるところを呼び出して」
「大丈夫です。けれど、何があったんですか?」
領主の館の、おじいちゃん達がいる部屋に案内された僕たちは、何があったのかを聞いてみたら。
「この街に、暫く前に第二王子派の連中が来ておってな。儂らより先に同じ話を領主に持ちかけておったのだ。それで、領主がどっちの話にも懐疑的になってしまっておるのだよ」
そうか、僕たちがこの国に来てからもう大分経っている、既にこの話を聞いた第二王子派の貴族が、このオウルストの領主を取り込もうと動いていたんだ。
話の内容はほぼ同じだったのだけれど、一つだけおかしな部分があって。ポタタや大豆、農具は現物がなくて説明を書いた紙だけなのに、焼石灰は「我々だけが率先して入手した物を特別に」と言って領主に渡して来てたらしい。
おかしいよね? 現物は王都のお城で監察官が見ている前で渡しているけど、まだ誰かに配ったりはされていないはずなのに……。
「その焼石灰を見せて貰うことはお願い出来ますか?」
テツにぃもおかしいと思ったのか、おじいちゃんに焼石灰を見せてもらえるか聞いて貰える事になった。
格上の貴族からの話しと言う事もあって、焼石灰は見せて貰える事になったけれど、おじいちゃんはポタタと大豆の現物が手元にあると言う事も話したんだって。入手先は、アルが同席していれば勝手に推測してくれるとの事。
僕たちは、ゴウさんに教わっていた試験液を作って焼石灰が本物が確認する事にした。おじいちゃんとアル、リザリスさんと、領主と地主さんの数名が立ち会う中で試験液を使って確かめる。
試験液では、僕たちが渡した焼石灰を混ぜまると赤紫から青色に変わった。そして第二王子派が持ってきた焼石灰だと思われる粉では何となく青くなってる? そして適当にその辺の土を混ぜてみると赤っぽい。地主さんから持ってきて貰った畑の土は、赤くなった土と少し赤っぽい色になった土があった。
「ちなみに、こっちの土が麦がよく育った畑の土ですか?」
そう言って。テツにぃが、片方の土を指差すと「何故わかった!」と、地主さんの驚いた声!
「この焼石灰と言う粉は、この様に赤くなった畑の土に混ぜて、こっちの土の色位まで戻す為に使用します」
「この薄青くなった粉の方でも効果は薄いですが、一応役割は同じですね」
つまり、偽物ではないけれど、僕らが持ってきてる焼石灰より効果は薄いってことだね。
そこまで説明すると、今度は地主の人たちが詰め寄ってきた。
「その液を使って今のように畑の土を調べれば、作物が育ち易いかどうか分かるのか?」
「育てる作物の種類にもよるのですが、育ち易さと言うか、畑の土の状態が分かりやすくなる。と言うものです。地主さんや農家の方の中には、土を見るだけではなく舐めたりして判断されてる方もいるんじゃないですか?」
地主の人たちが顔を見合わせて「まあ確かに」「たまにな」等と話している。
「たまたま今年は畑の土がよく出来た、と喜ぶのではなくて。何がどうあれば良い状態なのかを知っておくと、悪くなった時の対処がし易くなるそうです」
「それは、誰が言っていたのか?」
テツにぃが恥ずかしそうに頭を掻きながら。
「俺の父さんから教えて貰いました」
「お前の父上は、何処かの地主か領主なのか?」
「いえ、今は町長をしていますが。それまでは町で狩人をしていました。後は、変な事もいろいろ……」
地主の人たちは顔を突き合わせて話し合いを始めた。
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「ドルドラ卿、あの冒険者たちは一体何者ですか?」
お祖父様の側にオウルスト伯爵が近寄ってきて、ひっそりと二人の事を聞き出そうとしていた。
「隣国から来られた冒険者で、今はガルバルド王子とリザリスの良き友人達ですな」
それを聞かされると、自分たちで手を出す訳にもいかないと分かったのか。
「作物の収穫量を増やせると言う話は、大変興味深い話しであります。新しい作物も、領民の飢えを凌ぐために役立ちそうですし。我がオウルスト領はシュットガルド領とは親しく付き合って参りたいものです」
お祖父様はオウルスト伯爵の言葉に頷くと。
「今日の件はこれくらいで良いでしょう。我々は、中に戻って有益な話の続きをしようではありませんか」
そう言って、いつもの笑顔で伯爵を促すと室内へと戻って行った。
残された私とアルは、地主達に囲まれて色々と聞かれているアベルとテツを、いつ助け出そうかと眺めていた。




