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AT『アベルとテツの』冒険譚 if 異世界転生したおっさんが普通に生きる  作者: カジキカジキ


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リザリスの記憶5

「お祖母様、私に免許皆伝の試練をお願い致します!」


 シュットガルドの屋敷に到着した翌日、リザリスさんはおばあちゃんにそう申し出た。今のリザリスさんは、免許皆伝の試練を受けた事も思い出せないので、もう一度試練を受けたいと言うのだ。


「分かりました」


 おばあちゃんはそれだけを言い、リザリスさんに準備をさせて部屋を出て行った。


 ・

 ・

 ・


「良いですか?」


 おばあちゃんは、以前にも見た白いふわりとした服で立っている。リザリスさんは旅の中でも見慣れた冒険者の格好だ、二人とも木槍を持って向かい合っている。


 見学しているのは、おじいちゃんとアル、僕とテツにぃ。


「行きます……雫流れ五連刺(しずくながれごれんし)『鈴蘭』」


 リーーーーン。


 ガッ、ガッ、パァーン!


「ぐぁっ!」


「リズ!」


 涼やかな音の後に、何か弾ける音が響いたと思うと。リザリスさんが苦痛の声を上げて倒れた。


 すぐに駆け寄るアル。そしておばあちゃん。


「良くやりましたリザリス。貴方に免許皆伝を与えましょう」


 そして、すぐにメイドさんがやってきて白魔石で治療をしていた。リザリスさんは意識はあるけれど、立ち上がる事が出来ないのか横になったままだ。


「リズ、失礼するよ」


 そう言って、アルはリザリスさんをお姫様抱っこすると、そのまま室内へと運んで行った。


 アルがリザリスさんを運んで行くのを見送って、僕はおばあちゃんに何が起こったのか聞いてみた。


「あの子は、初見の『鈴蘭』を三撃も止めたのよ。二撃までは良かったけれど、三撃目で加減を間違えて槍が破裂してしまったけれどね」


 なるほど、最初の二回の音は止めた音で弾けた音は槍が破裂した音だったのか……てか破裂!?


 リザリスさんが倒れていた辺りを見ると、ほぼ半分の長さになった木槍と破片が飛び散っていた。


「槍が当たった部分は白魔石で治療済みですし、何より王子が付いていてくれるようですから。私たちはお茶でもしましょうか。リザリスがあそこまで強くなった理由も、もう少し詳しく知りたいわ」


 僕たちは、おばあちゃんと一緒に居間へと戻り。辺境伯領のダンジョンで、どれだけのボス級魔物を倒したのか聞かせてあげた。


 お茶は、辺境伯領のアリアンテ男爵の所で貰ったお茶を渡したら。おばあちゃんもすっかり気に入って、すぐに買い付けの業者を呼んでいたよ。


◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


「ううっ……」


「気が付いたかい、リズ」


 ベッドに寝かせて、横になったままだったリズ姉が意識を戻した。部屋にいたメイドの一人が慌てて部屋の外に出て行く。


 もう一人のメイドが、冷たい水で冷やしたタオルを持ってきてくれたので受け取る。


「冷たいよ」


 そう言って、リズ姉の額にタオルを乗せる。


「はぁ、気持ちいい……ここは?」


「リズ姉の部屋さ、ウリスラ様から免許皆伝の技を受けて倒れたリズ姉を僕が運んだんだよ」


 ベッドから体を起こそうとするリズ姉を支えて、部屋の中を見せる。


「いつの間に……リリアンテ辺境伯の所から帰ったんだ?」


「リズ姉!?」


 思いがけない言葉に、僕もメイドの顔も蒼白になる。


 カチャリ


「リザリスが目を覚ましたそうだな」


 ちょうどその時、もう一人のメイドが呼びに行ったドルドラ卿達が部屋に入ってきた。


「お祖父様、それにお祖母様も」


「リザリス、具合はどう?」


 ウリスラ様から声をかけられて、返事をするリズ姉。


「それが……何故私は寝かされているのですか? 免許皆伝は既に賜った筈。それに、先日まで私達は旅に出て辺境伯領まで行っていた所でしたよね?」


 リズ姉の返答に全員が声を失う。


 ここで、いち早く声を出したのはメイドの一人だった。


「お嬢様は疲れておいでです。少しお休み頂いては如何でしょうか?」


 ハッとした僕たちは。リズ姉に、先ほど免許皆伝の試練を受けて怪我をした事と、白魔石で治したばかりの事を伝えて休むように言った。


 不満げな顔のリズ姉だったが、確かに疲れはあったのだろう。ベッドに横になると程なく寝息が聞こえてきた。


 ・

 ・

 ・


「記憶が……戻った?」


 ドルドラ卿の書斎に戻り、僕たちは考えを纏めていた。


 リズ姉は。免許皆伝の試練の怪我のショックで、旅をしていた頃の記憶が戻った。


 では、どこまでの記憶が戻っているのか。先ほどのリズ姉の言葉では、既に免許皆伝を賜っている事は覚えていた。辺境伯領の旅の途中である事も。


「そうなると、あの事故から目を覚ました後は覚えていないという事?」


 アベルのその言葉に僕はドキリとした。昨日、リズ姉と交わしたあの言葉は忘れてしまってのだろうか……。

 

「とにかく、リズが目を覚ましたら。ゆっくりと覚えている事を聞いて確かめてゆくしかないでしょうね。決して焦ってはいけませんよ」


 そう言って、ウリスラ様は僕の顔を見ていた。


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