リザリスの記憶4
僕たちはシュットガルド領へと辿り着いた。リリアンテ辺境伯領を出てから四十日目、少し掛かったが早い方だろう。
城門で門兵に声を掛けると、慌てて城へと走って行く兵士。今回は馬車を待たずに歩いてシュットガルド領主へ挨拶に向かう。
職人のグルガンは「領主の館なんて肩が凝るわ」と言って、職人街の方へと消えて行った。
「お祖父様、お祖母様。ただいま帰りました」
リザリスの帰りを出迎えたお二人は、とても優しいお顔をされていた。
そして、僕たちの顔を見て……。
「リズに何かありましたか?」
やはりお二人には隠しきれないか。
「では、後ほどリズのいない所でお話しさせて頂きます」
そう、リザリスには聞こえないように話したつもりだったのだが……。
「私の記憶に関する話しなのだろう、私にも知る権利があるはずだ。私が倒れる前、何があったのか聞かせて欲しい」
そう言われ、ドルドラ卿の書斎で全てを話す事になった。
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辺境伯領で新しいダンジョンが見つかった事と、異常の解決の為の調査で潜る依頼を受けた事。
メンバーとの連携のため、近くのダンジョンに入ったら。また、あのジョーカーが待ち構えていた事。
ジョーカーにより新しいダンジョンへと飛ばされると、ダンジョンの暴走を知らされてダンジョンクリスタルの破壊を依頼された事。
ダンジョン内では、一層で既に十層のボスがウロついており、明らかに異常だった事。
ボス級の魔物を倒しながら十層へと到達した僕らが、四十層のボス。キングオーガと戦った事。
そして……キングオーガの大剣を受け。一時はリザリスの命が消えた事。
「「!?」」
お二人の顔が驚きで固まる。
「命が消えた……」
リザリスは自分の胸元に手を当て、ジッと見ている。
ボスのキングオーガを倒した後は。ジョーカーに頼んで、アベルの持つ命の器をリザリスへと移した事。
今度は、二人の目線がアベルに集まる。
奇跡的にリザリスは命を取り戻し、ダンジョンクリスタルを破壊してダンジョンから脱出した事。その際にもジョーカーの悪巧みでテツさんの貸しを使った事などを話した。
「アベル殿、テツ殿。この度は我孫娘の為に貴重な力を使って頂きありがとうございました。この恩はシュットガルド家の総力を上げて、必ずお返しさせて頂きます」
ドルドラ卿とウリスラ様が二人とも立ち上がり、アベルとテツに深々と頭を下げた。
「ガルバルド王子も、リザリスを守って下さりありがとうございました」
二人は、僕にも頭を下げる。
「僕は、テツとアベルがやった事を見ていただけです」
「それでも、王子は私共との約束を守り。孫娘を連れて帰って下さいました」
そう言って、優しい眼差しで生きているリザリスを見ていた。
そう、リザリスは生きている。紛れもなく僕の知っているリザリスだ。今はあの事故を思い出していないけれど、もしリズ姉があの事故の事を思い出したら。また僕のことを軽蔑するのだろうか……。
そう思ってリザリスの方を見ていたら、フッと顔を上げたリズ姉と目が合ってしまった。
僕は慌てて顔を逸らす。
「アル……助けてくれてありがとう」
そっぽを向いた僕に、リズ姉がありがとうと言ってくれた。
「少し、思い出しました……私がダンジョンで目を覚ましたとき。あなたは手を握ってくれていましたね。とても強くて、私は手が潰れてしまうと思ったけれど、それはとても優しくて強い手でした」
「そうそう、こうも言っていましたよね『ずっと見てて、ずっと一緒にいてよ』と」
僕は、急に体温が上がり、顔が赤くなるのを覚えた。
「あ、あれは!」
「ふふふ、私は嬉しかったですよ。アル」
リズ姉は、僕の事を覚えてくれている。僕を見てくれている。今はそれで十分だ。




