ダンジョンの暴走7
「ダンジョンクリスタル」
ダンジョンの機能を司るアイテムだとか、ダンジョンを産み出す元とか言われているが、今はそんな事問題ではない。俺たちがこれを壊し、このダンジョンの暴走を止める!
カチャ。
アルが剣を構えて、力を剣に貯めるように集中する。全身の力が巡り剣へと集まると、剣があの時のように白く光り出した。
「ハァッ!」
パッ、キィィィィィィィィィィン!!
甲高く、澄んだ音と共にダンジョンクリスタルが細かい破片になって舞い散ると、キラキラと煌めきながら消えていった。
「これで終わりか?」
ジョーカーを見ると、黙って頷く。
「さあ、帰ろうか」
アベルとアル、ロウさんにキリギスさん、そしてリザリスさんを連れて一緒に帰るんだ!
ゴ・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「「何だ!!」」
突然ダンジョン中に響く轟音! 地面が揺れているぞ!
「ダンジョンが消滅を始めたのよ。クリスタルが消えたのだもの、当然よね」
何でもない事のように話すジョーカー。
「消える?! 皆んな、移動ポータルへ急いで行くんだ!」
皆を移動ポータルへと誘導するが。
「無駄よ。ダンジョンクリスタルが消えたのだもの、移動ポータルは使えなくなっているわ」
「何だと! ジョーカー! 何故最初に教えなかった!」
「貴方たちに教えて何の得があるの?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
騒音と揺れがどんどん酷くなってゆく!
「どうしたら良いんだ! 一層まで走って戻るのか?!」
「リザリスの体力はまだそこまで戻っていない! 一層までなんて無理だ!」
「どうする!?」
そんな俺たちの様子を面白そうに見ているジョーカー。そうか、お前は初めから分かっていたんだな。
「おい、ジョーカー!」
俺は、ジョーカーの目の前に立つと、服の前をグッと開き。
「貸しの最後の一つだ! 俺たちを全員ダンジョンの外に送れ!」
胸に描かれたジョーカーの貸しの印を見せた。
「仕方ないわね……」
ジョーカーは、そうなる事が当然だったと言う感じで、ゆらりと立ち上がると。
パチン!
ジョーカーの指を鳴らす音が聞こえた。
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一瞬の浮遊感の後、気がつくと僕たちは真っ暗な場所に立っていた。
「何処だここは?」
周りを見回すと、何となく見覚えのある場所。
「後だ!」
キリギスさんの声に皆が振り返る。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
ダンジョンの入り口だった大岩が、淡い光と共に地面に吸い込まれるように消えていった。
「こうやってダンジョンは消えるんだ……」
ダンジョンが消え、周りの音が戻って来る。
虫の音と、遠くから聞こえる騒ぐ声?
「◯※だ……み※!!」
光がポツポツと見えたかと思うと、段々と声が大きくなって近づいてきた。
「誰かいるのか?!」
僕らを発見した人が近寄って来る。先頭にいたのは、辺境伯領の冒険者とギルド職員。もう一人いたけれど、僕らを確認するとすぐに戻って行った。
「大丈夫ですか?! 全員いますか?」
ギルド職員が、見覚えのあるキリギスさんとロイの所に駆け寄って皆んなの無事を確認する。
「全員無事だ。ただ、一人弱っている者がいるので、馬車を用意して貰えると助かる」
「分かりました」
ギルド職員は、冒険者の方を向くと馬車を持って来るように言って、話を続けた。
「何があったか、教えて貰えますか?」
「説明するが、先ずは休ませて貰えるか。みな疲れているんだ」
ギルド職員も余程焦っていたのだろう、僕らの顔をみて疲れているのが分かったのか、水や座る場所を準備してくれた。
暫く休憩して。馬車を待つ間にロイがこれまでとダンジョンでの出来事を話していた。
ギルドの方でも。僕たち一行が、入った筈のダンジョンから戻らない事で大騒ぎになっていたらしい。
僕らが訓練の為にダンジョンに入ってから既に四日が過ぎていたという事だ、ダンジョンから戻らなかったその日には辺境伯にも連絡が入って捜索隊が組まれて、翌日には捜索隊がダンジョンに入ったが、最下層まで行っても見つからなかったと報告されていたと言う。
それもそうだろう、僕たちは別のダンジョンに飛ばされていたのだから。
そして、今日。もう夜になっているけれど、この新しく見つかったダンジョンを監視していたギルド職員と冒険者の人達が、ダンジョンの方向から異常な音と振動を感じて駆けつけたところ、僕たちを発見したと言う事だ。
「ダンジョンは消えたのですね」
ロイの説明で、予定通りダンジョンが消えた事を確認出来たギルド職員。夜なので細かな事は分からないけれど、ダンジョンの大岩があった場所はきれいな更地になっていた。
その後、馬車が到着したのでリザリスを乗せて辺境伯の城まで移動した僕たちは、部屋に入るとそのまま眠ってしまい、目覚めたのは二日後の朝だった。




