ダンジョンの暴走6
「リズッ!」
「リザリス!」
「目を覚ましてよ!」
リザリスを抱き抱え、泣き叫ぶアル。
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「ジョーカー! リザリスさんを生き返らせて! 何とかならないの?」
ジョーカーは黙って首を振り。
「あの大剣が胸を貫いているのよ、たとえ白魔石を使っても傷が治るだけで命は戻らないわ」
「そんな!? そうだ! ジョーカーには貸しがあったよね! あの貸しで何とかなんないの!」
ジョーカーは一瞬ビクッとすると、僕の目をじっとみて。
「たとえ貸しが無かったとしても、私の力で命まで戻すことはできないわ……命の器が壊れてしまったら、もう元には戻らないのよ」
そう言って、僕の肩を掴んだ。
「……」
「どうしたの?」
僕の肩を掴んだジョーカーが、驚いた顔をして止まっている。
「あなた……まさか」
「なに?」
「念の為に聞くけれど、あなた。子どもの頃から物知りだったり、変とか言われてなかった?」
僕は、ジョーカーの言葉にドキッとした! 僕がずっと知りたかった事、もしかしてジョーカーなら知っている?
「ど、どう言うこと?」
僕は平静に見せ掛けながら、ジョーカーの返答を待つ。
「もし貴方が魂の器を二つ持つ存在ならば、あのドラゴニア族の女を助けられるかも知れないわよ」
「何! どうしたらいいの!」
ジョーカーは、少し間を置いてから話し始めた。
「貴方は、きっと生まれる時に何か事故があって魂が弱った事があるはずよ。その時に、この世界を漂っていた別の魂が貴方に入り込んで、本来ならその新しい魂が貴方と言う存在になる筈が。元の魂が強さを取り戻して、入り込んだ魂が逆に弱ってしまっているのね」
「貴方、自分が知らない計算とか、知らない知識が頭に浮かんだりする事あったでしょう?」
「……あった」
「貴方のもう一つの魂の……ほんの僅かな活動が、貴方の魂に干渉して知識として出て来ていたのよ」
「その魂の器を、あの女に移し替えれば。あの女の命が戻るかも知れないわ」
「!!」
「貴方にある。そのもう一つの魂が無くなれば、その知識が浮かんで来る事も無くなるわ。貴方自身が変わる事は無いけれど、貴方はそれで良いかしら?」
今の。ほんの僅かな時間で、僕がずっと知りたかった事が全部分かった。僕は昔、盗賊に襲われた馬車の中で死にかけた事があったとシスターから聞いた事がある。きっとその時が魂が弱った時なんだろう、その時に別の魂が僕の中に入って来て、そしてこの不思議が事が起こるようになったんだとしたら……。
「っ! でも! この魂をリザリスさんに入れて、元のリザリスさんのまま生き返るの?」
「そこは賭けね。あの女の魂が、そう強く願っていれば。元の魂のまま生き返る事ができるはずよ」
それを聞いて、少し悩んだ僕に。
「やってくれ! 頼むアベル!」
それまでの、僕とジョーカーの話しが聞こえていたのか、アルがそう叫んでいた。
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「貴方も一緒に並んで横になってね」
ジョーカーに魂の器を移してもらう事になった僕は。言われるままにリザリスさんの横に仰向けになった。リザリスさんの胸に刺さった剣は抜かれ、白魔石で傷の治療は済ませてある。だけど……リザリスさんは目覚めないままだ。
「やるわよ」
ジョーカーの伸ばした腕の先から白いモヤが出てきた。そのモヤは僕の胸に触れるとスッと消えるように次々と体の中に入ってゆく。
「ぐっ!」
胸の中の何かを掴まれる苦しさが僕を襲う。
「我慢なさい!」
ジョーカーも額に汗を流しながら、苦しそうな顔で何かを掴もうとしている。
白いモヤはどんどん僕の胸に消え、苦しさもどんどん強くなってゆく。
「そろそろいくわよ」
ジョーカーの腕が上に上がると。
「ぐぁっ!」
僕の胸の中から、なにかが引っ張り出される感覚が!
どんどんと引っ張り出される何か。
「うぐぐぐぐ」
何処とは言えない体の中から、出てこようとする何か。
ズルッ
ついに僕の胸から白いモヤの塊に包まれた何かが出てきた。
「次は女の方ね」
ジョーカーの腕がリザリスさんの方に向かうと、白いモヤの塊はリザリスさんの上に移動して胸の上に乗る。
「さあ、耐えなさいよ」
ジョーカーの腕が下にさがると、白いモヤの塊がリザリスさんの中に入ろうとするけれど、何かに押し返されるようにしてなかなか入っていかない。
「受け入れるのよ」
ジョーカーの顔も苦しそうだ。
「リズ! 受け入れろ! 新しい器だ、生きるんだ!」
アルがリザリスさんの手を取って叫ぶ。
聞こえている訳は無いはずだけど、反発が少しだけ弱まった気がする。
「リズ! 僕を見ているんだろう!? ずっと僕を見ててよ! 起きて! 目を覚まして、ずっと一緒にいてよ!」
アルはリザリスさんの手を額に当てて、祈るように叫び続けた。
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「アル……そんなに強くにぎったら、手が潰れます」
「リズ!」
「!!」
リザリスさんが目を覚ました。アルの事が分かるという事は……。
「リズ! 僕だよ! 僕が誰かわかるかい?!」
リザリスさんは、必死な顔のアルを見て優しく微笑み。
「アルでしょう? 私の大好きなアル」
リザリスさんの言葉にアルはもう涙が止まらない。僕やテツにぃもさっきから目から汗が吹き出している。
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「何とかなったわね」
全くとんでもない坊や達だったわ。
半分冗談で呼んだんだけど、本当に暴走したダンジョンを止めてしまうだなんて。
けど、おかげで私の力を全て使わずに済んだし、借りも一つ返せたからね。
「あら?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
何とまあ都合の良いタイミングだこと。
「ダンジョンクリスタルの部屋が開いたわよ。どうやらここが最下層なのは変わって無かったみたいね」




