ダンジョンの暴走3
『そろそろ起きてちょうだーい。セーフエリアが消えるわよー』
ジョーカーの声に起こされ、慌てて辺りを確認する。テツさんとアベルは道具を片付けて荷物を纏めている。キリギスさんは周囲の警戒、ロウは僕の横に立って警戒してくれている。
「リザリス、体は大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。アルこそ疲れてはいないか?」
昨日怪我を負ったリザリスを心配するが、白魔石で治療したのでキズは消えており、ゆっくり休めたおかげで疲れも取れているようだ。自分も、思ったより疲れが取れていると感じて体を動かしてみる。
グッ、グッ
「何だろ?」
僕の様子に気がついたテツさんが声を掛けてきた。
「どうしたんだアル?」
「何だか体の調子が良いような気がして。疲れも思ったより溜まっていないし……」
「ダンジョンのレベルアップだな。昨日もあれだけボス級の魔物を倒しているんだ、レベルアップして休んだおかげで体の動きも良くなっている筈だぞ」
僕は服の中から冒険者証を取り出して見てみた。
「レベルが二つも上がってる!?」
「そうだろうな」
「なっ!」「うぉ!」
僕の話しを聞いたのか、ロウさんとキリギスさんの驚いた声も聞こえてきた。
「これで、少しは楽に戦えると良いけれど」
「出てくる魔物も強くなっているんでしょうね」
「だな……」
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それからセーフエリアを出て魔物を倒しながら進み、今は六層までたどり着けていた。さすがに上層より魔物の数は減ってきている気がするけれど、その分強い魔物が出てきている。
「ハイオーガが出てきたか、そろそろ三十層のボスが出てくるのかも知れないから用心して」
テツさんからも注意の声が聞こえてきた。
それからも、複数のホフゴブリンやオーガ、時々現れるハイオーガを倒しながら進んで、やっと七層への階段を見つけて入る。
「やっぱり昨日よりは戦い易い感じがする」
「私も、大楯をこんなに軽く感じたのは初めてですよ」
皆それぞれがレベルアップの恩恵を感じているようだ。
階段で水分の補給と軽い食事を取って休憩したら、七層に向けて準備をする。
「皆、準備はいいか?」
テツさんが皆の顔を確認し、またロウを先頭にして七層へ出る。
「グォオーーッ!」
「「!!」」
少し離れた場所から、吠える声が聞こえてきた。トロルだろうか?
七層は木々が増えて、殆ど森のような状態。視界も悪くなるのでキリギスさんの索敵が頼りだ。テツさんやアベルも気配を感じ取る能力が高く、僕らより早く魔物を見つける事が出来る。これも冒険者をやってきた経験の差なのだろう。
「ガゥッ」「ガゥッ」
「ハイウルフだ! 群れで出てくるぞ! 左二匹、右三匹だ!」
キリギスさんが索敵で感じ取った情報を伝えてくる。
「ロウさんは右を! アルとリザリスで抑えて! アベルは左だ!」
テツさんの指示が飛ぶ、このダンジョンに飛ばされてからテツさんの指示がどんどん的確になってきてる。
「ハッ!」
ザシュ!
「フン!」
ガッ!
「うりょ!」
「ウガァー!」
倒したハイウルフの後から、トロルが現れた!
「トロルだ! 毛がある部分は刃が通りにくい、それに切っても怯まないので気を抜くなよ!」
ロウさんが咄嗟に前に出てトロルを抑える。トロルが殴ってきたところをシールドバッシュで弾き、姿勢を崩した所をリザリスのグレイブが切り裂く!
「ウガァ!」
「ハアッ!」
僕の力を溜めた一閃で、トロルの胴が真っ二つになり黒いモヤに変わる。
「もうトロル相手でも落ち着いて相手出来るようになってきたな」
テツさんが魔石を拾ってきて、リザリスに渡しながら話す。
「これだけ魔物が出て来たんじゃ、驚いている暇もないよ」
入れ墨の力も上手く使えてきている気もするしね。
「テツ、この先に八層の階段がありそうだ!」
キリギスさんの言葉で皆気を引き締め直し、先へと進みだす。途中でホフゴブリンの群れに当たったが、六人総出で倒した。
それから先は、あまり魔物に出会わないまま八層の階段が見つかった。流石にボス級を倒した後だと魔物の数も減るのかな?
「キリギスさん、十層のボスは何だと思いますか?」
階段に入り、キリギスさんにこれまで出てきた魔物から十層のボスを予測出来ないか聞いてみた。
「そうだな……今の流れからすると。四十層のボス、キングオーガが妥当なところか? 一足飛びにワイバーンなんて事はないだろう」
「キングオーガ……オーガとはどの位違うのですか?」
「キングオーガそのものの強さもあるが、取り巻きを呼べるってのが面倒だな。最大でオーガ一体とホフゴブリン六体を呼び出せる。雄叫びを上げると出てくるから、声を出させないようにするか。取り巻きが一体でも残っていると追加は出せないと言うから、一体を残して戦うとかだな」
「戦力が分散させられるのが厄介ですね」
十層まではあと二層、ここまでも少し怪我を負ったりして白魔石で治してきたけれど。これから魔物もより強力になるのでもっと用心しないと。
「そろそろいいか?」
またロウを先頭にして階段を下り、真っ黒な壁を抜けて八層に出る。この瞬間が一番緊張するな。




