続ドラコーン王国の旅4
アリアンテ男爵領から辺境伯の住む領都リリアンテまで十日の旅。アリアンテ、リリアンテ。何だか響きが似ているね。
「ねえ、リザリスさん。アリアンテとリリアンテ、響きが似ているのは何か繋がりがあるの?」
「あー、それは……」
「それはね、アベル」
リザリスさんが言い淀んでいると、アルが代わりに教えてくれた。
「辺境伯領を最初に治めた初代リリアンテ辺境伯は、武功に優れた武将だったんだ。それこそ初代ドラコーン王と比較される程にね。そして、その力と集団を纏める能力も認められて辺境を任されたんだけれど。その初代辺境伯が大変な愛妻家で、辺境伯領の名前を奥様の名前にしたらしい」
ここで、アルはチラッとリザリスさんの方を見た。
「その後。男爵領のあの土地の開拓を指示した、当時の辺境伯の奥様のお姉様が、開拓団の団長の奥様だったんだよ。そして開拓した土地の名前を初代辺境伯に習って奥様の名前にして、アリアンテ村から町、男爵領へと発展していったのさ」
「アリアンテ男爵の先祖が、あの土地の開拓を辺境伯から任された話は。先に本人から聞いた通りだけど。話にあった売った家財と言うのは奥様が持ってきていた品も多かったと思うよ」
「奥様の事を大切にされているアリアンテ男爵家だからこそ、先祖の思いの詰まった品々を買い集めているのかなって思ったんだけど……あっ、名前が似ているの初代辺境伯の奥様の家系繋がりだからだね」
アルの。珍しく長い話の終わりは、僕の質問の答えで一行で終わる話だった。
それからも他愛ない話や、時々稽古をしたり。スモールダンジョンでアルが無双したりして、街道を歩くこと十一日目。やっと辺境伯領都の城門が見える場所に出た。
「あれ? 何だろう、城壁の形が今まで見てきたのと違うね?」
高台になっているこの場所から見える辺境伯の都の城壁は、ドラコーン王国の他の街や都で見てきた四角く囲った形とは違っていた。斜めに重なった四角が二つ? 星型になってるのかな?
僕らが見ている方角は、辺境伯の都の向こうの山脈の開けた場所まで見通せている。あの開けた先が隣国との境界になるんだって。実際にはあの先まで見張りの砦が何ヶ所もあるらしい。
「へぇー、変わった形の砦だねぇ」
「あの先の隣国の砦を参考にして作った物らしい。中々に攻め難く考えられた砦らしいぞ」
アルは。先日の領土の歴史や、こう言った事をよく知っている。以前まで、表に出ていなかった分。内政や国の歴史を勉強していたんだね。
「隣国とは争いが続いているの?」
「いや、この国は直接隣国とは争ってはいない。もう一国、川を挟んで隣り合っている国があるから、そちらの方が細々争っていたな」
ドラコーン王国側は、あの山脈が自然の砦にもなっていて隣国も簡単には攻めて来れないらしい、それにコッチに来ようとすると、川を挟んだ敵国に背中を向ける事になるから、来たくても来れないんだって。
「アルは色々国の事を勉強していたんだな」
リザリスさんも、アルが辺境伯の情勢や遍歴まで知っていた事に驚いていた。
「ずっと篭っていたからね。国の歴史は好きだったし」
ちょっと照れたアル。
「ねえねえ、もっと近くで見たいよ。早く進もう」
アルとリザリスさんが仲良くなっているのは嬉しいけど、僕は城壁が気になって仕方がなかった。門までの街道をまた暫く進んで、やっと入り口まで到着したけれど。
「こっちの方は普通だったね」
城壁の形が気になったんだけど、特別なのは山脈を向いている方の城壁だけで、自国側は普通に真っ直ぐの壁だった。向こうは斜めになっているみたいだけど、何でだろう?
門をくぐり、中へと入る。冒険者証の確認は厳しかったけど、ここでも国王印しの許可証は効果抜群だったよ。
宿を取ると、リザリスさんは辺境伯への手紙を書いて宿の主人と何か話していた。すると、宿の主人が外にいる子供の一人に手を振って呼び寄せる。これで、子供が手紙を持って辺境伯の館まで走って持って行ってくれるんだって。実際には門番の兵士の人に渡すんだけど、子供はお駄賃が貰えるから、宿の辺りにはそれ狙いの子供がいるんだってさ。
辺境伯からの返事が来るまで数日は掛かるだろうと思っていたのに、翌日の朝には使いの人が来て晩餐に招待されたよ。昼過ぎに馬車を寄越すので来て欲しいだって。
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「殿下、この様な辺境までお越し頂きありがとうございます」
辺境伯と奥様が並んで挨拶をされる。辺境伯は噂通り大きな体で、見上げるほど大きな体躯をされている。奥様は少し小柄で優しそうな雰囲気、キレイな青のドレスに白の縁取りがとても似合っている。二人とも領民には慕われていて、初代辺境伯夫妻の再来とも聞く。
「突然の来訪で申し訳ありません、隣国の使者を連れての旅の途中でしたが、辺境伯には挨拶をと立ち寄らせて頂きました。こちらは隣国の使者で、冒険者のテツとアベル、それからグルガンです。グルガンは隣国でも高名な防具職人なのですよ」
「リザリス嬢、お気遣いありがとうございます」
辺境伯は紹介した三人に近寄り、挨拶を返す。
「何もない辺境ですが、ゆっくりされて下さい。まずはお茶を、最近手に入るようになった珍しいお茶があるのですよ」
辺境伯から席を案内されテーブルに付くと、つい最近嗅いだ香りが漂ってきた。先日、アリアンテ男爵領で頂いたお茶のようだ。
カチャ
それぞれの前にお茶が並ぶと、まず領主が一口飲み、それから皆がカップを手に取る。
やはり良い香りだ、思わず顔が綻ぶ。




