旅の防具屋3
「今日はいよいよ三十層まで行ってボス戦ですよね?」
宿の食事場で揃って朝食を食べている時だった。二十層のボスを良い感じで倒せたアルくん、今日も張り切っているところ悪い知らせだ。
「ギルドの職員さんが、ボスの復活は微妙だって言ってたぞ?」
「そんな……テツさん。なんでそんな意地悪言うんですか」
いや、そんな悲しい顔をしなくても。リザリスさん、アルのフォローよろしくお願いします。
二十層を攻略した次の日の昨日は、体の疲れを取るために一日休みにし、全員がそれぞれやりたい事をして過ごした。そして今日は三十層まで進むつもりだったのだが、昨日ギルドで聞いた話では数日前に三十層のボスが倒されているので復活はまだ先だろうと言う事だった。
「テツにぃ、どうする?」
アベルも聞いてくるが。二十層以降に進むのはアルの訓練にはなるのだけれど、次の街に進みたい気もある。と言うか、グルガンさんから漏れ出る「次の街へ行け!」と言う圧が凄いんだ。
「なあ皆んな。出発する準備も終わっているし、次の街まで進むか?」
「私は断然オッケーよ!」「僕も大丈夫」「私は……アルはどうなの?」
皆んなの視線がアルに集まる。
「僕は……」
アルは、皆んなの顔を見回して。
「先に進もう」
と、がっくりしながら呟いた。
「アル! 途中でも訓練してやるから、そんなにしょげるなよ」
そう言って、アルの背中をバンッ! と叩いて気合いを入れる。
「痛いよ、テツさん」
「ハハハハハハッ!」
リザリスさんがアルの背中をさすりながら、出発を促す。
「さて、食事が済んだら次の街。アリアンテへ向かいますよ」
次の目的地のアリアンテは、ドラコーン王国の一番端。リザリスさんの実家のシュットガルド領からは北西の端で辺境伯領に入った最初の街になる。
辺境伯領と言っても、隣国とはかなり大きな山脈が間にあり、簡単に行き来ができる場所では無いが、隣国自体に問題がある為、辺境伯が過敏になっているとドルドラさんから聞いている。
食事を終えて、それぞれの荷物を纏めると宿屋の女将さんに挨拶をして出発だ。
「お姉さん、昨日はありがとうございました。ご飯美味しかったです! 行ってきます」
アベルはいつの間にか宿屋の女将さんと仲良くなっていたらしく、別れ際に女将さんはハンカチを振ってくれていた。
「いつの間に仲良くなってたんだ?」
どうやら。昨日は宿の裏の洗濯に使う空き地でアルと一緒に素振りをしていたアベルが、女将さんの洗濯干しを手伝って仲良くなったそうだ。
「へへっ、お菓子いっぱい貰っちゃった」
女将さんから貰ったと言う焼き菓子を「アーン」と言って口へと運んでくれるアベル。
カリッ!
「おっ美味いな」
大麦と何かの種子に蜂蜜を混ぜて焼いてあるのかな? オヤツにもいいが、歩きながらの腹ごなしにも良さそうな菓子だった。
アベルは他の皆にもお菓子を分けていたが、全員に「アーン」をするのでリザリスさんなんかは真っ赤になっていた。
「わっ! 私は自分でっ!」
「何で〜? 美味しいよ?」
街の門を出て街道を進む。大麦の刈り取りが終わった畑では、麦わらを集めたり運んでいる人の姿が見える。
「この辺の収穫はどうだったんだろうな?」
「たくさん収穫出来ていると良いね」
アベルと畑の様子を見ながら歩く。事情を知らないグルガンさんは、畑と俺たちの顔を見ながら不思議そうな顔をしていた。
・
・
・
その日の夕方、街道沿いの開けた場所を今日の野営場所に決めて、食事の準備をしていたら。
ガサッ、バサッ
「薪、置いておくわね」
「ありがとうございます」
「あなた達、畑なんて気にしていたけど何かあるの?」
グルガンさんが小枝や薪を拾ってきてくれて、出発した時の事を聞いてきた。
俺は、野菜や干し肉を切って鍋に入れ、魔石で水を出してから鍋を火にかける。
パチパチパチパチ
「よし、と……」
グルガンさんの方に振り返り「僕たちの目的は……」と、旅のもう一つの目的を話し始めた。
「あなた達、変な事やってるのね」
そろそろスープが出来上がる頃に話も終わり。グルガンさんからは呆れた顔をされたけど……。
「けど、そんな坊や達のこと……きらいじゃないわよ」
と言って、ウインクされた。
「皆んなー、そろそろ食事ができるわよー!」
その日のスープには、ポタタも入れてみた。




