アルの修行2
その後は盗賊が出てくる事もなく旅を続け、ミドルダンジョンの街までたどり着いた。その日はとりあえず宿に泊まり、翌日からダンジョンに入る事になったんだ。
そして翌日。皆でダンジョン前ギルドに入る。
「ダンジョン前ギルドにようこそ」
ダンジョンに入るために冒険者証を見せる。受付の職員さんがアルとリザリスさんの冒険者証を見た時に固まっていたけど。リザリスさんが口の前に指を立て、冒険者証をその手から抜き取っていた。
「あれは何だったの?」
ダンジョンの入り口に向かって歩きながら、さっきのが何だったのか気になったのでリザリスさんに聞いてみた。
「冒険者証は偽造が出来ないからな。アルも私も本名が書かれているから、私達の名前を知っている職員だと嗚呼なるか、騒ぎ出す者もいるので注意が必要なのだ」
そうか、僕たちは貴族ではないから名前だけ。アルやリザリスさんは名前と家名まで全て書かれているんだ。そう思って冒険者証を見るとレベルが四十四になっていた!?
「テ、テツにぃ」
コッソリと冒険者証のレベルの欄をテツにぃに見せる。テツにぃも自分の冒険者証のレベルの欄を押さえて頷いている。きっとデュラハンを倒したのが経験値になってレベルが上がったんだ。それでもレベルが六も上がってるだなんて!
「そろそろ良いか?」
コソコソしている僕たちに、黙って見ていたリザリスさんが声を掛けてきた。
「あっ、ごめんなさい」
慌ててダンジョン入り口まで近寄り、ミドルダンジョンの階段を下りる。
「ここも平原ダンジョンなの?」
「いや、ここはヴァルスガルド王国と同じタイプのダンジョンらしい」
テツにぃがダンジョン前ギルドの受付で貰った地図を見ながら教えてくれた。
「さあ、一層に出るぞ」
リザリスさんが先頭になって階段の先の黒い壁を抜ける。目の前に現れたのは久しぶりの洞窟ダンジョンで少しホッとしちゃった。
「さて。問題はないと思うが、取り敢えず十層を目指そうか」
今日の本当の目的は十一層だから、十層まではサクサク進むよ。
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十層のボスはアルとリザリスに任せて倒して貰った。アルのレベルも三十二になっていたので全く問題なかったよ。
で、今は十一層。平原の端のほうのポツポツと木が生えている辺り。ここで何をするのかと言うと……。
「アル、準備はいいか?」
テツにぃは木の幹のそばに立ち、僕は枝の先で構えて立つ。アルとリザリスは少し離れて見ている。
僕が頷いたのを見たテツにぃが。
「それっ!」
ドンッ! バサバサッ!
「ハッ」
ヒュッ ヒュッ ヒュッ
パチ……ン
テツにぃが木の幹を蹴り、落ちてきた葉っぱを切るんだ。王国で知り合ったアスラさんに教わった修行の一つ、アスラさんはパフォーマンスだと言っていたけど。やってみたら分かる、これめちゃくちゃ難しいんだよ。
普通に振ったら剣の風圧で葉っぱがヒラリと舞ってしまうんだ。僕も一枚が切れるようになるまでかなり練習したよ。
アルとリザリスさんの方を見ると、アルもだけどリザリスさんの目が凄い。もう興味津々で今にも飛び付いてきそうだ。
テツにぃも予想していた事だけど、やっぱりこうなるよね。
「アルはこっちに来て。リザリスさんはテツにぃから教えて貰って下さい」
それから僕たちは、それぞれ二人に指導を行って。何度も何度も木の幹の蹴り飛ばし、たまに寄ってくる魔物を倒していた。時々通り過ぎて行く冒険者の人たちの、不思議なモノを見る目付きにも慣れました。
ヒュッ
「出来た!」
先に出来たのはリザリスさんでした。流石にグレイブでは無理があるのでリザリスさんも剣を使っていたけれど。やっぱりレベルがそれなりに高い事と、免許皆伝なだけあるよね。
アルはもう少し……やっぱり力が強すぎるのが影響しているかな。この落ち葉切りは強さより、より鋭く、葉っぱの動きを読んで剣筋を葉っぱに対して真っ直ぐに保つ事。あとは切れ味が良ければ何とかなったりするけれど、これは内緒。アルの剣は凄く切れ味良さそうだから、もう少しだと思うけどな。
暫くして、集中力が切れてきたあたりで一度だけ成功したアルだったけれど、それ以降はボロボロになっていたので今日はダンジョンを出て午後からは休みにする事にした。
アルとリザリスさんは午後からもやりたそうだったけど、やり過ぎも良くないよ? 落ち葉切りはあくまで練習で、本当の意味は別にあるんだからね。
実は昨日、宿の主人からある話を聞いたんだ。なんでも面白い防具屋がこの街に来ていて店を開いているんだけど。この職人が、相手を気に入らないと全然仕事を受けてくれないんだって。なんだかそんな人を何人か知っている気がするんだけど、面白そうだと思ったし。僕たちの防具もそろそろ職人さんに見て欲しいと思ってたから、午後からはその防具屋さんを探そうと思ったんだ。




