アルの修行
「ハッ!」
スパッ!
おじいちゃん達に見送られてから五日、僕たちはスモールダンジョンのある街にたどり着いていた。今はダンジョン六層でアルがゴブリン相手に無双中です。以前のような力任せではなく、適度な力でキチンと刃筋を立ててキレイに倒しています。
アルは、入れ墨の効果と新しく手に入れた剣の力で、制御出来なかった力が自由に使えるようになって気持ちよさそうに剣を振っている。合わせて、おばあちゃんに教わった精神統一で、全身の入れ墨が目立たない位に抑える訓練もやってる最中だ。
「やっぱりスモールダンジョンだと全然足りない感じだね」
アルがゴブリンを倒し終わったので、近寄って水を渡す。リザリスさんは落ちている魔石を拾って革袋の中へ。
「ありがとう。だけど、手応えよりも剣を振るのが気持ちよくて。いつまでも振っていたい気分だよ」
「分かる。私もお祖母様にグレイブを教わっていた頃に感じた気持ちだ」
近寄ってきたリザリスさん。最近も似た経験あるよね。
「リザリスさんだって。このあいだテツにぃに腕の使い方を教わった後、かなり楽しそうにグレイブ振り回してたよね?」
思い出したのか、顔を真っ赤にして。
「あっ、あれは! ちょっと悩んでいた事もあって、思わず気持ちが先走ったのだ!」
「「「はははははっ」」」
久しぶりに皆んなの笑い声が広がった。
「さっさと十層まで行って帰ろうか、次はミドルダンジョンのある街まで進もう」
「十一層に行けたら、アレをやるんだね」
僕はテツにぃの顔を見てウインクする。
「アルは何枚出来るかな」
テツにぃは笑顔で返す。ちなみにテツにぃはウインクが苦手です。
残念ながら十層ボスは倒された後だったので、何もせず移動ポータルで帰ってきたよ。
翌日、スモールダンジョンの街を出発して、ミドルダンジョンがある街を目指して歩く。街道の途中には弱っている麦畑がチラホラと見えるけど、僕たちが国を回っている間に少しでも対応が進むと良いな。
「次のミドルダンジョンの街までは十日ほど掛かる予定だけど、二人は何かやりたい事は無いのか?」
テツにぃが、二人の事を振り返って聞いた。
「僕は、もっと経験を積んでこの剣や身体の使い方を学びたい……アベルにも言われたけれど、力は使えても、使い方がなってないから模擬戦でもアベルに負けるし。もっとダンジョンに入って経験を積んで力だけじゃ無い強さを手に入れたい」
その返事を聞いて、リザリスさんも少し驚いたような顔をしていたけれど、直ぐに普段の顔に戻った。
「うん、ダンジョンでの経験も良いけれど、模擬戦とかの対人戦やかけ引きも重要になるぞ。その辺は、リザリスさんや俺たちと対戦して覚えて行こうな」
「途中で盗賊でも出てきてくれたら簡単なんですけどね……」
あっ、リザリスさんフラグ立てたてちゃった?
・
・
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「グヘヘへ、お前達命が惜しければ武器や金目のモノ置いて行きな」
僕とテツにぃがリザリスさんの顔をジッと見る。
「リザリスさんがあんな事言うから……」
「なっ! 私のせいだと言うのか?!」
全く相手にされていない盗賊が、隠れている連中まで出てきて騒ぎ出した。
「お前達! この人数が分からないのか! 三倍はいるんだぞ、とっとと荷物と金を置けってんだ!」
いや、たった三倍だよ? マトモな武器も持っていなさそうな素人相手に負ける僕たちじゃないよ? なんならリザリスさんだけでも倒せちゃうよ?
アルだと……んー、ちょっと危ないかな。ちょうど良いから半分倒してアルの練習相手になって貰おうかな?
テツにぃと合図すると、サクッと動いて盗賊を三人ずつ倒す。アルは動けないでいたけれど、リザリスさんが動こうとしたので止めておいた。
「おっ! おまェ※?ら!」
盗賊さん、びっくりして声が裏返ってるよ。
「さて、アル。残りの六人、相手してみる?」
僕とテツにぃが下がる。リザリスさんも意図がわかったのかアルに一言だけ言って、僕の横に立った。
キョトンとした顔の盗賊さん達だったけど、意味がわかったのか赤い顔をして怒り出す。
「お前ら舐めてんのか! こいつ一人で残りを相手させようって言うのか!」
興奮した盗賊さん達が武器を構えてアルを睨む! アルは剣を構えて対峙しているけれど、落ち着いているね。大丈夫!
「一人にした事、後悔しな!」
一番前にいた男が切り掛かってくる。
「おらぁ!」
横にいた男も大声を出しながら切り掛かってくるけど、ダメだね。
キンッ! キンッ!
アルの振った剣で二人の剣が切り落とされる。ダンジョンでジョーカーに貰った剣、六十層のアースドラゴンの皮が切れるんだよ? そんな鈍の剣を合わせたら簡単に切れるに決まってるじゃない。
それと、後から襲ったおじさんも。そんな大声で襲ってきたらバレバレだから……ちょっとは考えてよ。
武器が無くなった二人が下がって、残った四人が剣を向けているけれど、足が震えている。もうビビってしまって逃げ出したい気持ちで一杯なんだろう。だけど、盗賊になってしまったら見逃す事は出来ないんだよ。僕らが見逃すと、別の誰かが犠牲になるかも知れないから。
ザッ!
アルが一歩前に出る。
弱気になっている四人は既に逃げ腰だ、アル……逃がさないようにね。
「ハッ!」
気合いを入れて突っ込むと、左の二人から左右に剣を振って切る! 真ん中から行くと左右で離れてしまうから、どちらかが逃げ出さないとも限らない。盗賊の背後へ回り、残りの二人を見るとそのまま袈裟斬りで倒してしまった。
武器を失った二人はリザリスさんが動いて倒してしまった。まあ、仕方ないか。アルは倒した盗賊を見てボーッとしている。
あれ? もしかして、アル……本物の対人戦は初めてだったの? リザリスさんがアルの所まで近寄ってグッと頭を引き寄せる。アルもリザリスさんに片腕で抱きついて固まっている。
「リズ姉」
僕とテツにぃは暫く路傍の石になっておきました。




