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AT『アベルとテツの』冒険譚 if 異世界転生したおっさんが普通に生きる  作者: カジキカジキ


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覚醒2

 僕たちとデュラハンの戦いは熾烈を極めていた。


 僕とテツにぃの連携もデュラハンにはまるで通じない。下手な小細工せずに二人同時に来い! と言った感じだ。


 何度も前後を入れ替え、時には二人同時、左右からや前後からと攻めるけれど全く通じない。


 キ! キン!


 今だって、殆ど同時に切り込んだのにどうして防げるの?!

 

 今日のデュラハンは、腰に下げた袋は持っていない。そこを攻める訳ではないけれど、さっきのジョーカーとの話しならこのデュラハンはモヤになって避けることはできないし、致命傷を受けると消滅すると言っていた。


 ハンデ無しどころか二体一なんだ、僕たちが負ける筈がない!!


 テツにぃの長巻がデュラハンを襲い、デュラハンが反応するタイミングで僕が死角から飛び込んで切る! んだけど。デュラハンはそのタイミングすら読んで、僕の切り込みを避けるんだ。


「はぁっ、はぁっ」


 僕たちは息切れして、汗もかく。


 魔物であるデュラハンにはそれがない、長引けば長引くほど僕らが不利になる。


「ハァーッ!」


 隙を突いて踏み込んだ一瞬、汗で濡れた床に足を取られ。体がブレたタイミングで放った突きがデュラハンの腕に刺さる。


 さっきまでは避けるようにしていたのに、今のはどうして腕で避けた? タイミングがズレたから? そもそもデュラハンはどうやってタイミングを見ているのだろう?


 頭が無いから視覚では無いはず……僕らが何らかの信号を出している? 僕らの動きや足音の振動?


 僕が何か考え込んでしまったのが分かったのか、テツにぃが一人で頑張ってくれている。


 僕は思いついた事を試すように、ワザと大きく足音を出して、適当にテツにぃやデュラハンの周りを走り回る。


 途端にデュラハンの動きがぎこちなくなった! テツにぃの動きには冷静に対応しているのに、僕が動き出したら急に動きに焦りがでている。


「テツにぃ! ワザと大きく動いて!」


 僕のやっている事が分かったのか、テツにぃもワザと大きく動いて足音を立て、時には足元の石を蹴飛ばしたりして物音を立てる。


 そうやって音で翻弄しながらデュラハンに攻撃を仕掛けると、さっきよりはデュラハンに攻撃が通るようになってきた。僕が大きな音を出して前から攻撃する瞬間に、後ろからテツにぃの攻撃が入る。


 さっきまでだと、何故?! と言うタイミングで躱されていたけれど。今回はテツにぃの長巻がデュラハンの鎧の隙間に突き刺さる。


 攻撃が通り、段々と精彩を欠きはじめたデュラハンにテツにぃの上段の一撃が決まる。


 テツにぃが下がったのと入れ替わりに僕の刀がデュラハンの正中を突く。


 デュラハンの目の前の僕。無いはずのデュラハンの顔が、僕の目をジッと見た気がした。


 デュラハンから黒いモヤが出始める……自分から体を起こし、刀を抜いたデュラハンが数歩下がる。

 

「!!!!!!!!!」


 最初の咆哮のような空気の振動が僕らを包んだ。けれどそれは喜びにも感じられる振動だった。


 デュラハンが完全に黒いモヤになり、魔石が落ちる。モヤになって消えたのではなく消滅したんだろう。



 パチパチパチパチパチ


「すごいわねぇ、あのデュラハンを倒してしまうだなんて!」


「「ジョーカー!」」


 いつの間にか現れていたジョーカーが、僕たちの側まで歩いてくる。


「おめでとう。五十層のボス代わりだったのよ」


「「五十層!?」」


「あら? 気付いてなかったの? ここは五十層のボス部屋の中よ。本来ならワイバーンがボスで登場するのだけれど、デュラハンがどうしてもあなた達と再戦したいと言うものだから、ちょっとここを借りたの」


 ワイバーンと聞いて周りを見ると……確かに天井もずっと高いし、広さもかなりある。空から襲ってくる魔物なんてどうやって戦うんだろう。


「ところで。あなた達はボス討伐の宝箱の中身は何が良い?」


「「えっ?!」」


 ちょっと、ジョーカーの言ってる意味が分からない。


「ボス代わりとは言え、強敵を倒したのだから宝箱は欲しいでしょ? だから中身は何が良いかと聞いてるの!」


「え、待って! 宝箱の中身を選べるの?」


「……あまり無謀なお願いは無理だけど、五十層の宝箱に相応(ふさわ)しい内容だったら構わないわよ?」


 いや、五十層の宝箱に相応しい内容ってのが、まず分からないのだけれど……。


「それは、例えばマジックバックや魔刀なんかもお願いできるのか?」


 テツにぃが、何か思いついたのかジョーカーに聞いた。


「マジックバックなら、時間軽減までね。魔刀は少し厳しいかしら」


 魔刀ってそんなに出すの難しいんだ!


「と言うか、さっき六十層のお土産に魔刀出してあげちゃったから。ここでも出すのは難しいのよね」


「「六十層!?」」


「そうよ、一緒に来ていた二人は六十層でボスと戦っていたのよ。王子様の坊やは見事に六十層のボスを倒したわ」


 アル!? 六十層のボス倒しちゃったの!!


「ちょっといいか?」


 しばらく考えていたテツにぃが、ジョーカーに話しかけた。


「なあに?」


「さっきの宝箱の件なんだけど、貸って事にはできないか? 今回の件の、お前に対する貸一つという事だ」


 スッとジョーカーの顔が厳しくなる。


「面白い事を言うじゃない。私がちょっと力を出せば、あなた達二人くらい簡単に消せるのよ? そんな私に対して借? 大人しくお金かマジックバック辺りをお願いして喜んで帰ったら良いのに」


「お前は、デュラハンのお願いを聞いて俺たちをここに飛ばしたんだろ? だったら巻き込まれた俺たちに詫びと、ボス討伐の宝箱の権利と合わせて貸ひとつだ」


 グイッと前に出てジョーカーを睨むテツにぃ。


「ふふふっ、面白いわね。私にそんな事いう奴が現れるなんて、私の正体を知ったら誰もそんな事言えないのに」


「正体なんて知らなくていい、俺たちはお前に貸一つ。これだけで十分だ」


 テツにぃが、ピッと指を立ててジョーカーへ向ける。


「分かったわ、このジョーカー。あなた達に貸りといてあげる」


 そう言うと、また指を一回ならした。


 パチン!


 黒いモヤが現れて、僕とテツにぃの胸に吸い込まれていく!


「「!!」」

 

 スッと入ったと思ったけれど、モヤはすぐに消えてしまった。


「その印がある限り、借り一つと言う事で。いつか返させて貰うわよ」

 

 パチン!


 また指を鳴らした瞬間、ジョーカーは消えてしまった。


「何だったんだ?」

 

 ガコン!


 音が聞こえたと思ったら、ボス部屋の扉が開いた音だった。


「テツにぃ!」


 テツにぃも頷いて、一緒にボス部屋を出る。


 さっきジョーカーは、アル達もボスを倒したと言っていた。と言う事はアル達はもう外に出ているのかも知れない。そう思ってボス部屋の外の移動ポータルでダンジョンの入り口まで戻った。


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