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AT『アベルとテツの』冒険譚 if 異世界転生したおっさんが普通に生きる  作者: カジキカジキ


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リザリスの実家

 翌日、僕らはいつもの冒険者の格好で修練場へと集合。お祖父様のドルドラさんとアルはメイドさんが設置したテーブルでお茶をしていた。二人は参加しないのかな?


 修練場の真ん中には、真っ白な服にヒラッとしたスカートと革鎧の組み合わせのウリスラさん。

 

「まずは、リザリス。どれだけ上達したか見てあげましょう」


「はい!」


 リザリスさん、無茶苦茶緊張している。それもそうか、リザリスさんは三歳の頃からウリスラさんとお母さんにグレイブの指導を受けていると言っていた。言ってみれば今日は久しぶりの抜き打ちテストみたいなもんだよね。


 お互いの手にはグレイブ代わりの長い棒を持っている。


「ハッ!」


 カンッ! カンッ! カンッ!


 ブン!


 ザッ!


 ガッ!


 ブンッ!


 リザリスさんの攻撃はとても鋭いものだったけど、おばあちゃんの動きはそれを感じさせないものでスカートの揺らめきがとても優雅に見えた。


「「すごい」」


 おばあちゃんはリザリスさんの動きを全て読んでいるかの様に棒で受け流し、まるでそう動かなければならないようにリザリスさんが動かされている。


「ハアッ ハアッ ハアッ」


 リザリスさんが息切れして打ち合いは終わったけれど、おばあちゃんは全然平気そう。それどころか僕たちの方をみて「次はどっちがやる?」て聞いてきた。


「僕が行く!」


 さっきのおばあちゃんとリザリスさんの打ち合いをみてたら、アスラさんの指導を受けていた時を思い出しちゃった! 僕もアレから自分で訓練を続けているんだ。少しはやれる様になっているはず。


 刀の代わりの木剣を持っておばあちゃんと対峙する。向かい合うと分かる。このおばあちゃん、アスラさんと同じくらい強い!


「お願いします!」


 最後に指導を受けた時のアスラさんの動きを思い出す。何度も何度も繰り返して動きを真似て練習してきた事。このおばあちゃんは、どう合わせてくれるのだろう。


◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


 おや? なんて立派な顔をするのだろう。昨日、オヤツをあげた時は末の孫娘のような顔でとても可愛く見えていたのに。おばあちゃん、おばあちゃんと言ってくれるから、久しぶりに孫可愛がりしすぎたかね。やっぱり見た目で侮ってはいけないね。


 あまり見たことのない構えからの打ち込み、相手は剣だから槍の間合いでは届かないはずなのに思わずドキッとしてしまったよ。


 強い踏み込みに真っ直ぐな太刀筋、まるで誰かに自分の姿を見せているかの様な……そうかい。あなたの師匠に見せる、今の最大限の剣を私に見せてくれているんだね。


 アベル君の剣は、とても真っ直ぐで気持ちの良いものだったよ。思わず良い弟子をもった師匠を羨んで(うらやんで)しまうほどに。


 さて、次はテツ君だね。


「お願いします!」


 テツ君は、元は槍を使っていたと言うことで私と同じ棒を持って立っていた。


「!」


 シュボッ!


 踏み込みからの最初の一撃はとても鋭いものだった、私の反応が思わず遅れてしまう程にね。お陰で反撃を手加減するのが狂ってしまったよ。


 ドガッ!


「ガハッ!」


 倒れてしまうかと思ったが、どうやら持ち(こた)えたようだね。まだ負けてないかい? いい目つきだ、好きだよそういう強い坊や。


 坊やもアベル坊やと同じ師匠に教わった筋も見えるけど、それより元の筋が良いのか目が良いのか、私の動きも見えているようだね。


 一旦棒を大きく振り、坊やを下がらせる。


「さて、受けてごらん。奥義、連撃五重奏『蓮華(れんげ)』」


◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


「あの構えは!!」


 お祖母様とアベルの打ち合いは、アベルの剣を受けるお祖母様の顔を見るだけで理解できた。新しい才能に出会い、嬉しさが滲み出ている笑顔だったのだ。あの表情(かお)は見たことがある、私が小さな頃や、見込みのある若者に出会った時のお祖母様の笑顔だ。


 そして今。テツに向けた顔は、私も未だ(いまだ)一度しか見たことのない顔……。


 私が、免許皆伝を許された時に受けた技。


◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


 ゴゥッ!


 おばあちゃんの姿が一瞬ブレて凄まじい旋風が通り過ぎたと思ったら、テツにぃが血を吹いて倒れた……。


「テツにぃ!!」


 慌ててテツにぃの元に駆けつける、リザリスさんとおじいちゃんの横にいた執事さんも近寄ってきた。


「グッ、ふっ」


 テツにぃは、棒を支えに起きあがろうとする。


「テツにぃ!」


 テツにぃは、手を貸そうとした僕の手を断り、自分の足で立つ。


「良い心がけだ」


 ゆっくりと歩いて近づいてくるおばあちゃん。


「おばあちゃん! どうして!」


 僕は、おばあちゃんに詰め寄って聞いた。


「たまげたね、二箇所も避けたのかい!?」


 テツにぃの体からは、訓練用の棒で受けたとは思えない刺し傷が肩と脇腹、太ももに出来ていた。


 隣にいたリザリスさんも驚いた顔をしている。


「スーダン、治療してあげな」


 スーダンと呼ばれたメイドさんが、小袋から取り出した白魔石をテツにぃの傷口に当てて魔力を通す。傷口に光が降り注ぐと、スーッと傷口が消えてゆく。


 僕が初めて見た白魔石の効果に驚いていると。


「テツよ、お前はこれで免許皆伝だ。神槍槍術(しんそうそうじゅつ)マエタ流免許皆伝を名乗るといい」


「お祖母様!」


 リザリスさんがおばあちゃんの言葉に驚いている。何? 免許皆伝て。


「リザリス、テツは私の奥義を二箇所も止めたんだ。当然だろう」


 にこやかに、さっきテツにぃを本気で刺した人とは思えない笑顔だったんだ。


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