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AT『アベルとテツの』冒険譚 if 異世界転生したおっさんが普通に生きる  作者: カジキカジキ


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ドラコーン王国の旅5

 見張の交代の時間になったのでアベル達を起こす、アベルは起きて話を聞いていたのか少し眠たそうだ。


 入れ替わりにオレとリザリスさんがテントに入り仮眠するが、オレもリザリスさんも何も話そうとはしなかった。


 朝になり、野営の後片付けをして次の町を目指す。ひたすら一日中歩き通し、町が近くなってきたのか畑が見えてきた。もうここは侯爵領のはずだが、何だか畑の様子がおかしい。聞いていた通り土地が痩せて作物が育ち難いのはこれまでの旅でも分かっていたが、この辺はそれ以上だ。


「ねぇテツにぃ、畑が」


 アベルも畑の様子の違いに気がついたみたいだ。


 アルとリザリスさんは、あまり畑に馴染みがないのだろう、しゃがみ込んで畑を見ているオレ達を不思議そうに見ている。


「どうしたのだ?」


 リザリスさんが聞いてきた。


 オレはリザリスさんに振り返り。


「畑の具合が悪すぎるんです、ほとんどの作物が枯れている。水が足りないのか土も乾いているし、今頃なら麦も青々としているばすなのに……」


 そう言って周りを見回す、まだ日はある。農民が畑仕事を辞めて帰るには早いくらいなのに誰もいる気配がない。


 ここに居ても仕方がないので、取り敢えず町を目指して歩く。町で聞けば何か分かるだろう。


 しばらく歩いて町に到着し、宿屋に入る。町は静かな感じだったが、宿屋はやっていたので助かった。


「四人さんだね、二部屋で食事付きなら銅貨四百枚なんだけど、いま食料が不足していてね、大した食事は出せないから三百枚でいいよ」


 それでも高い! と声が出そうだったけど宿屋の様子もかなり困っていそうだったので素直に払う。


 少しホッとする顔をした主人が銅貨をしまい、部屋の鍵を渡してきた。取り敢えず部屋の中は普通だったので荷物を下ろし、魔石で水を出して足を洗う。


 今日の部屋割りはオレとリザリスさん。アベルとアルだ、と言うかこの頃はずっとこうなってしまっている。オレが足を洗い終わると、リザリスさんが身支度する為にオレは一度部屋を出る。


「ご主人、ちょっと聞いていいかい?」


 ちょうど良かったので、宿屋の主人にこの辺の畑の事を聞いてみることにした。


 雨は確かに最近少なかったようだが、全く降らない訳ではないみたいで。どうやらこの地域の畑では麦ばかり作っていたようだ、以前は畑を休ませるために間を開けたりしていたそうだが、収穫量が減ってくると常に作らないと足りなくなってしまったらしい。そうなると……たしか父さんが言っていた連作障害ってやつか?


 食事は、麦の少ない麦粥と肉だけはそれなりに入っていたが、正直足りなかった。


 食事の後、アルとリザリスさんにも部屋に来て貰い話をする事にした。四人入るとちょっと狭い部屋、アルとアベルはベッドに腰掛け、リザリスさんは椅子に座ってもらう。


「さて、今から話す事はオレ達が国を出る前、ゴドスさん、アスラさんと一緒に相談して決めた話になります」


 アルとリザリスさん、思いもしなかった名前が出てきて驚いている。

 

◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


 ヴァルスガルド王国で剣闘大会が開催された少し後、アスラさんの屋敷にオレ達とゴドスさんが集まって、ある話し合いが行われた。

 

「わが国に新しい作物を送り届け、育てさせるという計画は大変素晴らしいのだが。届けられた作物が全て必要な所へ届くかは残念ながらワシにも分からん」


 どこに行っても邪魔する人はいるんだよね。既得権理に群がる貴族とか……。


「そこで相談だが、国へ献上する物資については商人に運ばせるとして。テツ殿とアベル殿には別の事をお願いしたい」


 ドラコーン王国に届けられた作物は、麦と比べてどの位多く収穫出来るのか? どの位育ちやすいのか? その作物はどの位儲かるのか? などの話によって、誰の領地にどれだけ割り振るかが話し合われ、裏取引きがされ、全員が納得できる権利が確定出来たところで配られる事になる。それまでには、何ヶ月……下手すれば何年も掛かるかも知れないという話だった。


 そこで、デオニスさんが運ぶ献上の作物の他に、オレ達もマジックバックに作物を入れて運び、本当に必要とする土地で使って欲しい、と言う事だ。


 マジックバックはアスラさんが持っている物を使わせて貰えると言う。間口が広く、大きなポタタの袋もそのまま入れられて、ちょっとだけ時間遅延があるマジックバック。それをオレたちの背負い袋に入れておいて運ぼうと言うのだ。


「見つかりませんか?」


「国の使節団の一行でもあるし。王城に入れる訳でもない冒険者の荷物にそれ程厳しく確認はせん。心配なら宿にでも置いておけばよい」


 宿に置いておけって、このマジックバックかなり高そうだけど……。

 

◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


「と言う事がありまして」


 そこでオレは、背負い袋から預かったマジックバックを出してみせ。さらに中からポタタと大豆の袋をひとつづつ取り出して二人に見せた。


「こっちがポタタ、でこっちの豆が大豆といいます」


 テーブルにゴト、ゴトとポタタを並べ。カラカラカラと大豆を落とす。


 アルもリザリスさんも、不思議そうに手に取ってポタタと大豆を眺める。


「問題は、ここで直ぐにこの作物を教えて良いのかどうかです」


 アルとリザリスさんが不思議そうに頭を捻る。


「この町の人や農民は確かに困っているかも知れませんが、権力者がこの事を知っても黙ってポタタや大豆を育てさせてくれるかどうか……」


「王城の貴族のように、我の利益を求めて何処かに売る」


 リザリスさんがボソッと呟く。


 アルは、さっきからずっと黙ったままだったが。


「僕は、嫌と言うほど王城の貴族の汚いやり取りを見てきた。僕が大人しくしているからって、弟の目の前で僕が居ないかのように振る舞ったり。弟に利のある貴族同士のやり取りも酷いものだった。リザリスには申し訳ないけど、ここは第二王子派の領地だ。僕はこの地にこの作物を教える事は賛成しない」


 リザリスの顔が蒼白になる。確かにリザリスの両親は一番に第二王子派に名乗りを挙げた貴族だが……。


 オレは、ポリポリと頭を掻きながら。


「うーん、そう言う事じゃないんだけどな」


 そう言って、二人の顔をしっかりと見る。


「アルの言い分はわかる、だけどそれでは王城にいる貴族たちと言っている事は何も変わらない」


 アルの体がビクッと震える。


「リザリスさん、この領地に住んでいるのはリザリスさんのお祖父様とお祖母様なのですよね? そのお二人は領地の開拓についてはお詳しいのですか?」


 リザリスさんは少し考え、昔聞いた話を思い出すと。

 

「お二人が領主の頃には、領都付近はかなり開けていたと聞くが。そのお祖父様やお祖母様がいらっしゃった頃には、子供だったお祖父様はよく畑を見に連れて行ったりされていたそうだ」


 なるほど、とオレは頷いて。


「もしかすると、お祖父様やお祖母様がオレたちの味方をしてくれるかも知れませんよ」


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