ドラコーン王国の旅
「準備はいいかい?」
いよいよ僕たちはドラコーン王国内のダンジョンを回る旅に出る。
ゴドスさんに同行を頼まれた二人も一緒だ。
「アルも、リザリスさんも大丈夫?」
アルは僕と同じ歳だと分かったので、お互い名前で呼び合う事にした。武器は剣を使う。リザリスさんは少し年上? いつも冷静で何故かアルを見る目が厳しい。武器はグレイブ、柄の部分が赤く塗られていてかっこいい。意外とテツにぃと相性いいのかな?
「それでは、両人ともこの国をよく見て参れ。お二人ともアルとリザリスをよろしく頼む」
「お二人ともお元気で。このご恩は一生忘れません」
「二人とも元気でちゅ」
ゴドスさん、デオニスさんとチュータも見送りに来てくれた。
「「行ってきます!」」
僕たちは、三人に見送られながら王都の門を出た。
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私の名はリザリス。この国の侯爵の娘だが今は身分の事は明かしていない、その理由は一緒に同行する……アルの身分もあるので知らせない方が良いとしたゴドス卿の企みなのだが。
「はははははっ」
隣国から来た冒険者と呑気に笑っているアルを見ると虫唾が走る。お前はそんなに呑気にしていて良いのか! もっと焦ろ!
しかし、同行を許したゴドス卿も何を考えているのだ? 私がついて行けば悪い報告しか上がってこない事は分かりきっているだろうに……。まあいい、時間はあるのだ、ゆっくり貴方のことを見定めさせて頂きますからね、ガルバルド第一王子。
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「リザリスさんは、グレイブを使って長いのですか?」
オレもアベルも暫くは初めての国の景色を楽しんでいたのだけれど、アベルはアルとの話に夢中になり。暇になったオレは、同じ長柄武器の使い手として単純に興味があって聞いたのだけれど。
「フッ、私にそれを聞くのか? よかろう聞かせてやろうではないか。すまんが長くなるぞ? 私の母方の家系がグレイブ使いとして有名でな、私も幼き頃から祖母から徹底的にグレイブの使い方を叩き込まれたのだ、そう……あれは私が三歳のとき……」
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「と言う事があり、私のお婆様はお祖父様のピンチを救い、命を助けたのだ! その縁があってお婆様とお祖父様が結婚してお母様が産まれ、そのお母様もグレイブ使いとして国で一、二を争う腕前まで育て上げられ。私はそのお二人からグレイブを習い、今に至ると言うわけだ。残念ながら未だにお母様にグレイブの腕で敵わぬが、いつかは必ず抜いて見せると鍛えておる」
そろそろ日も落ちかけ、泊まる予定の町の門が見え始めた頃になってやっとリザリスさんの話が終わりそうになった。
「あっ、リザリスさん。町の門が見えましたよ! 今日は歩き続けたので疲れたでしょう? 話しはまた明日にして、今日はゆっくり休みましょう!」
何故だろう? なぜオレはリザリスさんに気を遣っているのだろう? それにしても……話せば長くなる? 長すぎるでしょう!
「むっ、そうか。もう町に着くのか、まだ話は続くのだが仕方ない、明日は私が免許皆伝を授かった時の話をしよう。あの時も……」
あの、リザリスさん……勘弁してください。
町に入ると宿屋を探し、二人部屋を二つ借りて泊まる事にした。
宿の食堂では四人一緒に食事をしたのだけれど、昼間と変わって静かな食事になった。やはりアルと二人部屋になったのが不味かったのだろうか? どうにも二人の関係がわからない。
とにかく落ち着かない食事を終わらせ、明日の予定を話し合ってからお互いの部屋に戻った。
「なあアベル、リザリスさんとアルはどう言う関係なんだ? 昼間話したとき何か言っていたか?」
オレは、アベルのしっぽをブラッシングしながらアベルに聞いてみた。
「もうテツにぃ、ブラッシングしている時は変な事は考えないで集中してよね。だけど確かに……一応アルの護衛? お目付け役みたいに感じるけれど、ゴドスさんは親類だと言っていたけどね」
そうなのだ、初めて会った時に挨拶した感じでは。かなりオドオドしたアルと、オレたちを値踏みする目つきで見るリザリスさん。アルの事も少し軽蔑するような目で見ていた。
アルはオレたちと握手するもの躊躇って軽く手を添える程度だった。リザリスさんはガッツリ握ってきたんだっけな……意外とオレたちの力が強くて驚いていたようだったけど、あとでダンジョンレベルを聞いて納得していた。
明日はこの町を出て次の街を目指す。次の街にはダンジョンがあるって話だから、いよいよドラコーン王国での初ダンジョンだ!
「いたたた! テツにぃ痛いよ! 考え事してないでちゃんとやってよもー」