王都のドワーフ2
「さて、ちと遅くなったし話の続きは明日にするか、お前たち宿はどこなんだ?」
「あ、それが……」
昨日の宿の話をすると、ガングルさんは豪快に笑ってから。
「仕方ねえ、お前たち今日はココに泊まれ」
と言う事で、なぜか宴会になっています。
ガングルさんのお店は三階建ての建物で、一階と二階が店舗、三階は住み込みの従業員さん達が住んでいます。
いつもはガングルさんは家族のいる家へ帰るそうですが、今日はバルトさんの話を聞きたいからと家には帰らないそうです。
「がっはっはっ! そうかお前たち師匠から研ぎも直しも教わったのか!」
「うん、忙しい時なんか金槌持たされたりもしたよね?」
「そうだな、一日中相槌打たされた時はキツかったな」
それを聞いたガングルさんが急に真顔になる。
「……まて、お前ら師匠の相槌もやったのか?」
「やったよー、メチャクチャ大変だったんだから!」
「それってもう師匠の弟子って事か?」
「そうなの?」
テツにぃの顔を見る。
「いや、違うと思うけど?」
「いやいやいやいや! 相槌打たせる相手と言ったらもう弟子だろうよ!」
他の職人さん達も、うんうんと首を振っている。
「お前たち師匠の直弟子か! やばいなワシの弟弟子になるのか!」
宴会に参加していた他の職人さんたちの手が止まっています。
「おい、お前たち聞いたか? コイツらはワシの弟弟子だとよ。て事はお前たちの兄弟子だぞ、態度に気を付けろ?」
さっきまで普通に話していた職人さん達の態度が変わる、朝の掃除していたドワーフさんは青い顔してるし。
「やめて下さいよ。本当に弟子入りしたとかで無いんですから、お手伝いしただけですって!」
「それだけでも凄いんだがな……」
そうして遅くまで宴会した後は、部屋を案内して貰って解散になりました。僕はテツにぃと同じ部屋、リーンは久しぶりに一人になれそうです。
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カチャ
眠っていた部屋から、宴会をした食堂へ水を貰うために出てきたリーン。
「ふぅ」
「どうした? 眠れないのか」
「!」
誰も居ないと思っていたのに、ガングルさん起きていたんだ。
「ガングルさん、こんな所で寝ていたんですか?」
「ワシはどこでだって眠れるからな」
「ガングルさんの所は凄いですね、こんなに大きなお店を持って、大勢の職人さんもいて……」
「まあ、それだけ頑張ったからな」
「……」
「眠れないのなら酒でも飲むか?」
「飲めません! まだ未成年ですよ」
「ドワーフなら未成年も何も、酒くらい飲めるだろう?」
「飲めますけど…… それにドワーフじゃないです、ハーフドワーフです…… ハーフ…… ドワーフ」
「うん?」
無言の時間が進む。
「眠れないのなら、ちとワシの話に付き合って貰えるかい、お嬢ちゃん?」
「リーンです……」
「リーンか、これはワシの知り合いの話なんだがな……」
「その職人もハーフドワーフでな、何をやっても不器用でトロくて、せっかく鍛冶屋に雇って貰えても他の職人からイジメられたりして長持ちしなかった。そんな自分に嫌気がさして荒れた時期もあったようだが、一生懸命修行して、鉄を打って打って打って…… いつの間にか自分の鍛冶屋を持ち、他の職人を雇い、どんどん店も大きくしながらも腕を磨き、ついには国で一番と言われてグランドマスターになっちまいやがった」
「それ……」
「この店の職人を見て気がついたか? この店には色んな種族の職人がいるだろう? ソイツはな、自分がハーフドワーフだからって差別された事を悩んでた。誰でも好きな事をやって良いんだと言って、どんな種族の職人も受け入れた。今では多種多様の職人がそれぞれの分野で一流の仕事をしているまでに育ったよ」
「好きな事をやって良い……」
「それなのに、ある日……この店はお前に任せた。とだけ言って居なくなっちまうんだからな、任された方はたまんねえよ」
「えっ」
「とにかく、嬢ちゃんはまだ若いんだ! 好きな事を思いっきりやって自由に過ごすといい。そうすりゃいつか本当にやりたい事も好きに出来るようになるさ!」
「本当にやりたい事を好きに」
「さてと……ちょっと昔話でしんみりしちまったな。ワシは飲みに行ってくるから戸締り頼むわ」
「えっ? 鍵は?」
と言うと、ポイっと鍵をわたされた。
「締めといてくれ、どうせ朝まで帰らねえから」
リーンは、見えない背中にずっと頭を下げるのだった。
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