王都のドワーフ
ガングルさんを探して遂に王都まで辿り着いた。
「「「ほえー」」」
僕たち三人は王都の城壁の前でボーっと見上げて田舎丸出しだったのだろう、見知らぬ男性に声を掛けられた。
「にいちゃん達、王都は初めてだろう? 宿とか分かるのかい? 良かったらオレが良い宿を案内するよ」
王都は人も多かったけど、良い人も多いみたい。手頃な宿まで案内してくれて値段交渉までしてくれた。
「良い人でよかったね」
「ちょっと汚くないか?」
「王都だし、あの金額だと妥当じゃ無いですか?」
お金は余り使えないので三人同室だ。旅の途中の野宿でも、テントに二人で寝る事もあったので、リーンちゃんも慣れたものだった。
夜、長旅と王都の緊張からの疲れもあって三人ともグッスリと眠ってしまっていたんだけど。
「……どうだ?」「しっかり眠っているようだ」「よし入るぞ」
外から開けられるように特別に加工された扉、音が漏れないための厚めの壁、光の入らない窓……。
「どこにある?」
「ちっ、頭の方にしっかり集めてやがる」
夜目が効く者がいるのだろう、荷物の場所を確認して忍び寄る。
そっと荷物に手を伸ばし……。
ガタン! 「「!!」」
「誰だ!」
「クソ! 罠掛けてやがった!」
慌てて扉の外へと駆け出して行く二人の影。
「まて!」
「テツにぃ!」
追いかけようとするけど、扉から出た時には姿は見えなかった。
宿の受付に行き不審な人物が通らなかったか聞くが、どうやらこの宿もグルなのだろう、何もなかったとしか言わないのでそのまま宿を出た。
◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶
「ねみぃ」
欠伸をするテツにぃ。
結局昨夜は広場に行って交代で寝た。野宿も慣れてるけど初日くらいはゆっくり眠りたかったな。
「「「ほえー」」」
またも田舎丸出しで建物を見上げる三人。
「おいボウズたち、そんな所に突っ立ってたらジャマだぞ!」
店の外を掃除しているドワーフのお兄さんに怒られたので、丁度良い。とテツにぃがドワーフのお兄さんに声を掛ける。
「掃除のジャマしてすみません、ちょっと聞きたいんですが」
「今掃除してるとこだから後でな、掃除が終わってないとオレが怒られるんだから」
「あっ、じゃあ僕がやります! 掃除得意なんです!」
ドワーフのお兄さんは掃除してくれるなら、とテツにぃの話を聞いてくれた。
「ここは鍛冶屋のガングルさんのお店だと思うのですが、合ってますか?」
「そうよ! ここはヴァルスガルド王国で一番の鍛冶師、ガングル師匠のグルグル鍛冶屋だ! 何だ? 田舎から出てきたから最高の武器でも一目見ようと来たってのかい?」
「それも興味あるんだけど、この手紙をガングルさんに渡して欲しくて」
荷物の中から手紙を取り出す。
「手紙かい……あまり変なもんは受け取ってくるなと何時も言われているんだが」
「すみません、鍛治師のバルトさんから預かってきたと言って貰えたら伝わるはずなので」
手紙と一緒に銅貨を数枚渡す。
この辺も慣れてきたねテツにぃ。
「お、おう、しゃあねえな……おい、掃除もしっかり頼むぜ!」
そう言ってドワーフのお兄さんは裏口の方に駆けて行った。
「さてと、待ってる間どうする?」
「え? 掃除は?」
「それはアベルが得意なんだろ?」
「えー皆んなでやろうよ! そしたらすぐ終わるよ」
パカーン! 「⭐︎◯……!! が!!」
ドドドドッ!!
何だか凄い音が聞こえてきた。
「師匠!!」
「師匠! どこですか!」
裏口から年配のドワーフが飛び出して来たかと思うと慌てて辺りを見回している。誰かを探しているのかな?
「おい、キサマら師匠を見なかったか?」
ガッと腕を捕まれて聞かれる。
「痛い痛い! てか師匠って誰? 僕たち知らないよ」
「師匠だよ! この手紙にバルト師匠のサインがしてあるだろう!」
あー、この人は手紙を持って来たのがバルトさんと勘違いしたのかな?
「バルトさんはここには居ませんよ、手紙を預かってきたのは僕たちです」
「師匠は居ないのか?」
テツにぃと二人で頷く。
バルトさんが居ないと分かると急にしおらしくなってしまった。
その後、ガングルさん? に連れられて店の中に案内して貰ったけれど、掃除サボったお兄さんは結局怒られていた。
「僕らの町、アストリア伯爵領にあるセールの町って言うんですけど、今バルトさんはそこに住んでいます」
「アストリア領か……」
ガングルさんはそう言って暫く黙っていたけれど。
「で、何の用だい。ただ手紙を預かって来ただけじゃないんだろ?」
「実は…… コレを見て欲しいんです」
とアベルの剣をテーブルに置く。
「これは…… まさか師匠の新しい作品か?」
剣を手に持ち、鞘をそっと抜く。
刀身を見る目が、羨望から絶望へ。
「ずっとお前が使ってきたのか?」
「はい、手入れなんかも教わって自分でやって来ました。彼女…… リーンと言うのですが、彼女に会ってからは彼女が手入れをしてくれていたんですけど」
「一年と言ったか? 一年の間、鍛冶屋には見せず自分達で手入れして、ダンジョンに潜ってたってのか」
ガングルさんは黙って剣をみたまま。
「師匠の作品をこんなになるまでこき使うたあ、なんて贅沢な野郎だ」
「そんなに凄い人だったんだバルトさん」
「おいおい! 師匠の事知らんのか?」
「だって町では鍛冶屋のバルトおじさんとしか言ってなかったし」
「バルト師匠はこの国で唯一グランドマスターの称号を持つれっきとした貴族だぞ、そこらのガキが打ってもらえる鍛冶屋じゃねえぞ」
「いつも鍬とか打ってたよね」
「鍬……で、コイツをどうして欲しいんだ?」
「できれば直して欲しいです! 無理なら打ち直すとか?」
「お前……コレが普通の剣でない事は分かっているだろう? 普通のやり方では直せないんだよ」
「それなら、打ち方とか材料とか手紙に書いてあるって言ってましたよ」
「何い!!!!!!」
それからガングルさんは手紙を読むのに夢中になり、僕らはお店の人からお茶やお昼をご馳走になっていた。
「待たせたな」
夕方近くになり、ようやくガングルさんの意識がこっちへ戻った。
「とりあえず、お前のそれも見せてみな」
と言ってテツにぃの槍も調べる。
「ふん、やっぱりコッチも作り直しだな」
「槍もですか?」
「ああ、お前も同じように使ってきたんだろ? 当然ガタがきている、ある程度強くは作られているが、お前達の成長がそれ以上な事もあって、もう潮時だ」
テツにぃが槍をジッとみる
「この握りもダメですか?」
「それか? いい木材を使って何か特別な処理もしてあるようだが、細かなヒビや捩れが溜まってる。お前さんも使って薄々気がついているんじゃないか?」
「悪い事は言わねえ、全部作り直したほうがいい」
「嬢ちゃんのは……」
ガングルさんからジッと見られたリーンの身体がビクッとする
「まだ必要ねえか」
あの戦鎚だもんね。




