鉱山ダンジョン7
「うっ……こ、ここは?」
黒いモヤの悪魔に首を刎ねられた僕たちは、気がつくと別の場所にいた。
「テツにぃ、リーンちゃん!」
隣で横たわる二人を見つけて声を掛けると、二人とも目を覚ました。良かった二人とも無事だった!
何となく見覚えがある場所……。
「ここって、もしかしてボス部屋?!」
テツにぃとリーンちゃんも辺りを見回す、やっぱりボス部屋だと思う。
気が付くとさっきの黒いモヤの魔物? が部屋の真ん中付近に立っていた。そして新しい黒いモヤが……。
黒いモヤが集まり丸くなってグルグル回りだす。
「ボスが出てくる!」
急にテツにぃが叫んだ!
「えっ?!」
丸くなった黒いモヤが集まりグググっと固まったかと思うと……。
「グォオーーッ」
黒いモヤの塊からトロルが現れた!
「トロル……と言うことはここは三十層のボス部屋!?」
「あの黒いモヤの悪魔とトロルか、同時に掛かられたらヤバいぞ」
ボスのトロルはまだ動かない、そして黒いモヤだった悪魔がまたモヤに戻り回り始めた。
「今度は何?」
グルグル回って固まり、形作る……。
カシャン
首の無い鎧の魔物。
「デュラハン?」
姿を形作ったデュラハン? は、剣を両手で持ち大地に刺すとジッと動かなくなった。
そして動きだすトロル。
「先ずはボス戦てわけか」
僕とテツにぃが前に出る。
「リーンちゃんは少し下がって見てて」
青い顔をして、ガクガクと頭を振りながら下がっていくリーンちゃん。
「いくぞ!」
拳をぶつけ合ってボスの前に立つ。
「はぁーっ!」
「うりゃー!」
トロルの体は体毛が多くて刃が通り難い。上手く刃筋を立て、しっかり当てること!
右! 左! 下がって! 袈裟懸け!
「テツにぃ!」
アベルの袈裟懸けを避けたトロルに槍を突く!
素早く追いながら、首! 脇腹! 足!
「アベル!」
テツにぃと入れ替わり、弱ったトロルに追撃!
切り上げ! 返し!
「ハァッ!」
ザン!
トロルの太ももを大きく切り裂く!
一瞬の隙をつき、左に回り込んだテツにぃの槍がトロルの脇腹を捉えた!
「グォーッ!!」
大声を出し、腕を振り回すトロル。
空振りした腕が目の前を通り過ぎる!
ゴウッ!
トロルは無茶苦茶に暴れ回るけれど、僕たちを捉えきれない。
その時! 無音とも轟音とも取れる振動がボス部屋の中を震わせた。
「!!!!!!!!!」
ザンッ!
トロルの首が飛ぶ。
見ると、黙って立っていたデュラハンが大剣を振ってトロルの首を刎ねていた。
「ボス戦は終了、次は親玉の登場か?」
◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶
二人とも凄い!
さっきのトロルとの戦いも凄かったけど、今のデュラハンとの戦いは信じられないものを見ている気がする。
二人同時に掛かっても、難なく捌くデュラハン。それに対して焦らずに様々な手で攻める二人。
この街に来る前に、とても良い先輩達から学んだと言っていたけれど、とてもそんなレベルではない気がする。
武器? たしかにあの武器はとても良い物だけど、それだけであのデュラハンについて行けているのは説明が付かない。
「ああっ!」
デュラハンの強い払いがアベル君を襲うけど、アベル君は剣を合わせたかと思うと自分から飛んで勢いを殺す。
勢いのまま振り切ったデュラハンにテツ君の槍が届く! 狙いも正確で、鎧の隙間を上手く突いている。
ただ……首のないデュラハンの体に攻撃しても効いているのかいまいち分からない。攻撃を避けたりしているので当てられるのは嫌なのだろうけど。
「あれ?」
いまデュラハンが変な動きをした……テツ君の牽制で当たりそうにない攻撃なのに不自然に避けた。何だろう?
それから暫く見ているとある事が分かった。デュラハンは腰に何か小さな袋を下げている。その袋を攻撃される事を嫌っているのか、その部分への攻撃だけ大きく避ける。
「テツ君! アベル君! デュラハンは腰に下げている袋への攻撃を嫌がっています! そこを狙って攻撃すれば上手く行くかも知れません!」
「!!」
「ありがとうリーンちゃん!」
アベル君からの返事より、明らかにデュラハンの動揺の方が伝わってきた。
二人がデュラハンの腰への攻撃を見せ始めると、デュラハンの動きがぎこちなくなり精彩を欠き始めた。焦っているようにも見える。
それでも二人の攻撃はなかなか通じない。私は少しずつ場所を変え、中央へと寄っていく。
◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶
リーンちゃんのアドバイス通り。デュラハンの腰に付けた小袋を狙い始めると、明らかにデュラハンが嫌がっているのが分かった。
不自然に大きく避けたり、動きが鈍くなっている。僕たちは小袋を狙うようにみせながら、攻撃のチャンスを窺っていたんだ。
暫くすると、リーンちゃんがデュラハンの後ろに回り込んできたのが見えた。あの戦鎚でデュラハンの腰を狙えば、小袋に当たらなくてもかなりのダメージは与えられるだろう。
そのためには僕たちがもっと動いてリーンちゃんに攻撃のチャンスを作らなきゃ!
リーンちゃんも僕たちの動きの目的が分かったのか、少しずつ攻撃しやすい場所に移動してきた。
リーンちゃんが戦鎚の射程にデュラハンを捉えた。僕たちは二人のタイミングを合わせてデュラハンへ同時に攻撃する!
「ハァッ!」
「うりょ!」
ガァン! ギィィン!
「リーンちゃん!」
「はい!」
リーンちゃんが戦鎚を思い切り振り抜く!
ブン!
当たる! と思った瞬間、デュラハンはまた黒いモヤに変わり、離れた場所でまた黒い塊になりデュラハンの姿を現す。
「えっ?」「何?!」
「……」
動かないデュラハン。
何故かデュラハンは自分の手をじっと……見ているような気がする。
ガシャーン!
デュラハンが手にしていた大剣を落とす。
そして、スッと姿勢を伸ばしたかと思うと僕らの顔をジッと見た。
「「!!」」
ボス部屋の中に風が吹く。
風に気を取られた僕たちが再び前を向いた時には、デュラハンの姿はそこに無かった。
ズズズズズズ……。
ボス部屋の奥のダンジョンクリスタルの部屋の扉が開く。
「終わった?」
ダンジョンクリスタルの部屋には宝箱も無く。普通にボスの魔石と宝箱が出ただけだった。それと……デュラハンの大剣が残ったから、これがドロップなのかな?
僕たちはボス部屋の外に出て移動ポータルでダンジョン入り口まで戻ると、今日起こった出来事をギルドに報告した。




