鉱山ダンジョン6
翌日、ギルド前に集まった僕たちとリーンちゃん。
リーンちゃんの手には試作品の戦鎚、試しに僕も持たせて貰ったけれど、やっぱり重くて振り回すなんて無理だった。
「じゃ、行こうか」
三人揃ってダンジョン入り口横の移動ポータルへ。リーンちゃんは初めての二十層に少し緊張している様子。大丈夫! 僕たちがついているよ。
「ほわぁ〜」
二十層のボス部屋があるフロアに移動し、十九層に戻る階段を上った所でのリーンちゃんの感嘆の声だけど。僕たちが見てきたミドルダンジョンとは違って、鉱山ダンジョンだから、僕らには違いが分からないんだけどね。
「さて、念のため十八層まで上がってロックアルマジロを探しますか」
リーンちゃんの安全を考えて、念のため十八層での行動を主にしながら、少しずつ十九層も増やす予定。十八層の魔物はホフゴブリンやロックウルフ、ロックタートル(大)、ロックアルマジロです。
動きの遅いロックタートル(大)とロックアルマジロはリーンちゃんにお願いして、僕たちはホフゴブリンとロックウルフを担当、リーンちゃんを守りながら戦うのは良い練習になった。
「リーンちゃん、ロックタートル(大)だ。任せてもいいかな?」
「はい! 行きます!」
リーンちゃんは戦鎚を構えて魔物へと向かう。ロックタートル(大)は十層より上で現れるロックタートルの親とも上位種とも言われている魔物で、背の高さは一メルトを超え、攻撃を加えても首は引っ込めず逆に襲ってくる。長い首を伸ばしてからの噛みつき攻撃が厄介な魔物だ。
リーンちゃんは上手くロックタートルの首をかわして横に回り、前足へ戦鎚を一撃「ドゴッ」さらに後ろへ回って後ろ足に「ドゴッ」、動けなくなって伸ばしてきた頭を狙って「ドゴッ」
素早さが上がった効果が出ているね。
「やっぱりお二人は凄いですね、この階層でも全然危なげないし、私は後ろから見ていますけどよく見えていますよね?」
「リーンちゃんも凄いよ! あのロックタートル(大)が簡単に倒せるんだもの」
「それは……この武器のおかげですよ」
リーンちゃんが、手に持っている戦鎚を撫でる。
「けれど、リーンちゃんもあのロックタートルの噛みつきを避けられるようになってるじゃない! ちゃんと見て上手く避けれてたよ」
「ありがとうございます」
とても素敵な笑顔を頂きました。
これまでに倒せたのは、ロックタートル(大)x三匹、ロックウルフx五匹、ホフゴブリンx五匹、ロックアルマジロx一匹
「やっぱりロックアルマジロは少ないね」
「あの、十九層に行きませんか?」
リーンちゃんは、ロックアルマジロの数が少ない事を気にしたのか、そう提案してきた。僕たちも調子が良かった事もあってその提案に乗ってしまったんだ。
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「えい!」
ドゴッ!
「やった、出ましたよ!」
十九層に下りると状況が変わって、ロックアルマジロの出現数も上がり、僕たちはミスリルを集める事が出来ていた。
「おーい、お前たち」
その時、ちょうど近くを通りかかったドワーフの鉱員さんが僕たちに声を掛けてきた。
「最近、この辺りまで徘徊者の目撃情報が上がってるんだ、ちょいと周囲に気をつけときなよ。何かおかしいと思ったら、すぐに逃げるんだぞ」
「はい、ありがとうございます」
ドワーフさんの声にリーンちゃんが返事を返す。
「リーンちゃん、徘徊者ってなに?」
僕たちは初めて聞いた言葉だったので、リーンちゃんに知っているのか尋ねたら。
「お二人は知らなかったのですね……徘徊者とは、このダンジョンに現れる魔物で、主に二十層より下で目撃されるのですが、階層を跨いで移動する魔物なんです」
「階層を跨いで?」
「階層が変わっても同じ魔物は出ますけど、アレは同じ個体ではなくて別の個体だと言われています。種類が同じなだけで階層は超えないと言うのが今のギルドの見解になっていますが、徘徊者はその目撃例から同じ個体だと言われています」
「何の魔物なの?」
「それが、ハッキリとはしていなくて頭のない鎧姿だと言われたり、大きな鎌をもった悪魔だと言われたり」
「強いの?」
「かなり強い魔物だと言われています、出会った冒険者や鉱員はそのほとんどが帰ってきていないので……」
「正体不明の魔物か」
僕たちは徘徊者が気になりながらもロックアルマジロを探して十九層を歩き回っていた。その行動が徘徊者を呼び寄せているとも知らずに……。
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「さすがに出なくなってきたな」
あれからまたロックアルマジロを探して歩いたのだけれど、だんだんと出現しなくなり、もう殆どゴブリンだけになっていた。
「そろそろ帰ろうか?」
リーンちゃんも、慣れない十九層での活動に疲れが見えていたので、このまま二十層におりて移動ポータルで帰ろうかと話をしていた時だ。
スーッと冷たい風が吹いたかと思うと、僕たちの目の前に黒いモヤが集まってきた。
「「「!!」」」
黒いモヤが人影を作る……それは、話で聞いた大きな鎌を持った悪魔にもみえた。
黒いモヤの悪魔は、その大きな鎌を持ち上げ。驚いて動けないでいる僕たちの首に向かって振り抜いたんだ。




