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AT『アベルとテツの』冒険譚 if 異世界転生したおっさんが普通に生きる  作者: カジキカジキ


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アストリア伯爵領

「やっとついたー」


 セールの町を出てから十日、やっとアストリア伯爵領の領都に辿り着いた。さすが領都だ、人の多さも建物の大きさも全然違う。キョロキョロと見回していると人とぶつかってしまいそうだったのでテツにぃと一緒にギルドに寄ってから宿を探す事にした。


 不思議な事にギルドの中は意外と静かだった。


「こんにちは」


 僕は受付けの職員さんに声を掛ける。


 職員さんは不思議そうに首を傾げて何か用かと尋ねてきた。


「えっと、何かご用ですか? 依頼? では無さそうですが……」


 冒険者が冒険者ギルドに来たのに何か用かと聞かれたよ?


「あれ? 冒険者ギルドと思ったけど間違えたかな?」


「あっ?! 失礼しました、冒険者ギルドで間違いないですよ。けれど殆どの冒険者の方たちは外のダンジョン前ギルドを利用されるので、こちらを利用される方は護衛依頼程度しか扱いがないので……」


「あっ! そうです、護衛依頼の達成の報告もありました」


 あまりにも簡単な依頼だったので忘れていたよ。デオニスさんも一番いい評価をしておいた、と言っていたから次はCランクになれるのかなあ。


「領都は初めてなのですが、外にもギルドがあるのですか?」


 ギルドの職員さんが教えてくれた話では……。


 この領都にはダンジョンが二つ、スモールダンジョンとミドルダンジョンがある。そしてミドルダンジョン入り口の近くには、ダンジョン前ギルドがあるのだけれど、ギルドの周りにはいち早く冒険者から素材やアイテムを買い取れるように商店や防具屋、鍛冶屋が並び。さらに宿屋や飯屋、飲み屋など集まって小さな町くらいの状態になっているのだそうだ。

 

 それぞれのダンジョンは領都とは離れた場所に入り口があって周囲を頑丈な塀で囲われていて、万一のスタンピートでも都に被害が出ないように。塀の上にも人が登れるようになっていて上からダンジョン入り口が見える作りで、非常時にはここに冒険者が登って上から魔物を倒すんだって。


 僕たちもダンジョン前に近い宿屋に泊まる事にした、都の中の宿屋は冒険者向けには高かったんだ。


「明日はとりあえずスモールダンジョンに入ろう、体を慣らしてから明後日はミドルダンジョンだ」


 食事のあと、テツにぃと予定を決めて明日に備えて布団に入る……その前に!


「アベル、こっちにおいで」

 

 お楽しみのブラッシングタイムー。


 僕知ってるんだ、テツにぃも僕のしっぽをブラッシングしているとき、とても良い笑顔をしているって。テツにぃ、僕のしっぽ気持ちいいですか?


 ・

 ・

 ・

 

 翌日、いよいよ領都のスモールダンジョン。


 スモールダンジョン前のギルドに入り、ダンジョンに入る手続きをお願いする。


「冒険者証をお願いします」


 僕とテツにぃの冒険者証を渡す。


「はい、確認致しま……」


 職員さんの動きが止まってしまった? 何だろう?


「っつ! 失礼致しました! 手続き終わりましたのでお返し致します。ではお気をつけて、無事のお帰りをお待ちしております」


「はい、ありがとうございます」「行ってきます!」


 冒険者証を受け取った僕たちは、領都のダンジョンはどんなだろうとウキウキして中に入った。


 アベル達を見送ったギルド職員の呟き。


「何あの子たち?! まだ若く見えたけど、もうレベル十二だなんて。あの茶色のタレ耳の子なんかまだ未成年よね? コレはもうツバ付けとかなきゃかしら?」


 そして、ここはダンジョン四層。


 やっぱりスモールダンジョンは何処も見栄えが変わらないみたい……コレまで入ったダンジョンとほぼ同じ洞窟タイプで魔物も変わらないし。領都だけあって人が多くて、ここ迄も全然魔物を倒す間も無く辿り着いてしまったよ。


「サクッと十層まで降りて帰るか? きっと十層のボスも倒されてボス部屋も不在だろうけどな」


 と言う事で僕たちはサクサクと先に進み、七層に辿り着いていた。


「おっ、やっとまともに体が動かせそうだな」


 テツにぃは、ここ迄ほとんど魔物を倒せていなかった鬱憤(うっぷん)を晴らすように魔物に向かって行っちゃった。


 テツにぃはレベル十二になっていた。初回のダンジョンでボスを倒してレベル十一になり、二個目のダンジョンでも運よくボスを倒せた事でレベル十二まで上がったんだ。僕もレベル九になっている。体に取り込んだ魔素? の影響で体の動きや力も上がって魔物も倒し易くなった気がする。


「アベルほら、小魔石三個だ」


 テツにぃから受け取った魔石を布袋に入れ背負い袋に入れる。


「ここまでも赤か青しか出てないね」


「簡単に他の色は出ないってミミさんも言ってただろ」


 ミミさんか……初心者説明で色々教えて貰ったなあ。けど、最近も話した気がするのは何故だろう?


 二人でゆっくりと歩きながら、時に小部屋を覗いて魔物を確認し進んでゆく。


「テツにぃ。先の角、曲がった向こうに何かいる」


 そっと角まで近づいて先を確認すると、三匹のゴブリンがいた。


「ゴブリン、武器持ち、三」


 テツにぃと決めた合言葉で先の情報を共有する。


 魔物の種類、数、武器の有無、武器持ちの数。今回の場合はゴブリンで全て武器持ちだから数を言うのが最後だけ。もし左側の二匹だけ武器持ちだったら、ゴブリン三、武器持ち左二になる。


「それぞれ左右で一匹ずつ、残った一匹は早く倒した方が相手するって事で……行くぞ!」


 この場合の左右も受け持ちが決まっていて、テツにぃが右の魔物、僕が左側の魔物を相手をする。


 しっかり受け持ちが決まっているので迷いも無く自分の受け持ちの魔物から確実に倒す。たまに邪魔してくる魔物もいるけれど、その時は臨機応変に……。


 この知識って何だろう?


 また不思議な感覚を思い出してしまった。テツにぃは疑問も言わずに受け入れてくれるけど、僕のこと変だと思っていないかな……。


 結局、九層までで体を馴染ませた後の十層は……ボス部屋は空だったので、ポータルを使ってサクッと帰って来ました。



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