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AT『アベルとテツの』冒険譚 if 異世界転生したおっさんが普通に生きる  作者: カジキカジキ


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街道の盗賊3

 ギルド内で「白魔石を取りに行く」と大っぴらに話したテツは、一人でダンジョンへ向かった。


 その様子を見ていた一人の男が、コッソリ動いている姿を横目に見ながら……。

 

 ダンジョン五層までは速かった、地図を頼りに迷宮を駆け、正面に現れる魔物だけを相手にし、時には角を曲がった先の魔物を蹴飛ばして抜けたりもした。


 しかし此処から先はそうは行かない、しっかり調べながら進まないと先のような事をしていたらあっという間に囲まれてしまう。


 アントの巣にでも突っ込んだらあっという間に(たか)られてしまうだろう。鼻が効くコボルトはゴブリンと連携を始める、武器持ちのゴブリンも現れる。


 テツは慎重かつ時には大胆に動きながら十層を目指した。


 間も無く……十層に辿り着いたテツ。


「扉は開いている……か」


 チラッとボス部屋の脇をみて、扉が開いていた事に落胆する。


 ボス部屋の中に入る。ギルド職員もまだ復活するタイミングではないと言っていたが、もしかしたらと期待していた分肩透かしをくらった気分だ。


 中は何もないガランとした空間、外部と比べて少しだけヒンヤリしているか?


「残念だったなボウス、ボスはまだ復活してないぜ」


 突然入り口の方から声がして、振り返ると三人?の人影が見えた。


「あんた達は?」


「俺たちもボス狙いの冒険者さ」


 そう言いながらズンズンと中に入ってくる。


「その割には武器がお粗末だな」


「口の減らねえガキだな、そんなガキは嫌え(きれえ)だ」


 話している男の影に、鼠人族の姿が見える。


「お前たち、もしかしてチュータを罠に嵌めた奴らか?」


「頭のいいガキはもっと嫌えだ。おいボウス、痛い目に遭いたくなければとっとと上に戻んな。そして何も無かったと言って街を出て行くんだ」


「嫌だと言ったら」


 男の顔が怒りに変わる


「オメエが痛い目に遭うだけでなく、相棒も同じ目に遭うだろうよ、ガハハハハッ」「ヒャハハハ」


「フッ」


 俺は話を聞いて鼻で笑った。


「何だ?」


「それを聞いたら、尚更帰れないな」


「何だとお? おいボウス本当に痛い目に遭わすぞ!!」


 オレは、鞘が嵌まったままの槍を回す。


 ヒュン、ヒュン、ヒューン


 ビッ! と槍を脇にかかげ、左手で相手を誘う。


「さあ、かかって来いよ!」


「クソガキが舐めやがって! オラ! お前たちやっちまえ!」


 しゃべっていた男の横の二人が剣を持って突っ込んでくる。コッソリ近寄る鼠人族も見えているぞ。


 素早く動き、槍で牽制しながら相手を翻弄する。足を掛けたり、槍で小突いて倒れさせたり。体の動きが軽い、思ったように体が動く!


 バシッ!

 

 隙を突いて小剣で切り付けてきた鼠人族を槍で跳ね飛ばす!


 ボス? の側まで転がった鼠人族が男の足元に隠れる。


「ネズ! 生意気なガキが! 調子に乗りやがって!」


 ボスの男が切り掛かってこようとした瞬間!


「「「「!!!」」」」


 突然、もの凄い寒気が襲ってきた!


 皆んなの動きが止まり、辺りを見回す。


「何だ?」


 さらにボス部屋の温度が下がる。


 ズズン!


 ボス部屋の入り口が閉まった!?


「誰が閉めやがった!」


「誰もいませんぜ?」

 

 真っ暗になったボス部屋の中のハズが、魔物を倒した時の黒いモヤのようなものが現れたのが見えた。


 モヤは不確定に動いていたかと思うと、急にボス部屋の真ん中辺りに集まり光りながら丸く回りだす。


 グルグルと回り、グググッと固まったかと思うと、ある物の形に変化した!


「クソッ!」「マジか!」「ヒエェェ……」


「ボス部屋ん中に人がいる間は復活しねえんじゃなかったのかよ!」


 盗人のボスが吠える!


「グオオオォォーーッ!!」

 

 ボス部屋の本来の(ぬし)が吠える! ボスが復活した!!


「マズイな……おいボウス! 一時休戦だ! アイツを先に倒すぞ!」


「オッサン戦えるのか?」


「コレでもこうなる前は冒険者してたんだ、何とかならあ」


「俺は全員ぶっ飛ばしても構わないんだがな」


「ふざけんな! アッチの三人はボスの相手は無理だ、俺とお前の二人掛かりでやるぞ!」


「仕方ねえ、オッサン足引っ張るなよ!」


「うるせえ、クソ!」


 復活したボスは一匹だけで取り巻きはいなかったが武器持ちだ、マトモに戦えるか分からないオッサンと二人でうまく戦えるか?


「うりょ!」


 ガキッ! ガン! キン!


 俺は動き回りながらボスを牽制する。


「ほらオッサン、もっと攻めろ!」


「うるせえ!」


 ガッ! ギィィン! ブシュ!


 オッサンの剣が弾かれたタイミングで槍を刺す!


「やったかボウス!」


「あっ、クソ」


 気を抜いたオッサンにホフゴブリンの拳が飛んだ。


 ドゴッ!


 転がってゆくオッサン。


「オッサン!」


 転がったまま、腕が上がったのが見えた。


「一人か……やってる!」


 俺は、さらに動き回りホフゴブリンを翻弄し槍を出す。


「うりよ!」


 ザシュ!


「ガァー!!!」


 ギィン! ガキッ! キン!


 何度も剣と槍を打ち合う!


「うりょあー!!」


 ゴン! ガコン!


 突然、ボス部屋に光が差し込む。

 

「おい! テツ君! 大丈夫か!?」


 救援に駆けつけたギルド職員と警吏(けいり)さん達だ。


「ああ……遅かったですね。待ちくたびれたんでやっつけてしまいましたよ」


 槍の先のホフゴブリンが、黒いモヤになって消えていく……。


「そこにいる奴らが今回の主犯です。捕まえてチュータの無実を晴らしてください」


「何だって!? よし皆んな捕まえろ!」


 賊たちが縄で縛られ連れられてゆく。


「テツ君! 大丈夫だったかい?」


 ギルド職員さんが心配して近寄ってくる。

 

「はい、大丈夫です! 駆け付けてくれてありがとうございます。あいつらはアベルの帰りも襲うつもりでした、しっかり計画を吐かせてください」


「分かった! ありがとう! 本当にありがとう」


 駆け出して行くギルド職員さんを見送ると、ボスの魔石を拾い、宝箱の中を確認する。


「?!」


 思わずダンジョンクリスタルの部屋を睨むテツ。


「金貨三枚……どこかで見ているんじゃないだろうな」


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