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15

 必死の走行を僕は続ける。途中何度もふらつき、意識が飛びそうになりながらも、僕は強烈な使命感だけでひた走った。


 遠くの方に森林が見えてくる。あそこまで行かれたら、僕が伯爵達を見つけることは難しくなるだろう。

 幸いにもその手前に、平原を走る小さな影を認めることができた。僕は爆速ダッシュで彼らを追いかけた。


 伯爵の乗った馬が、眼前に迫ってきている。僕は「おいコラァアア! 止まりやがれぇえええ!」と大声で叫んだ。

 僕に気付いたその騎士は、こちらを振り返って慌てふためいているようだった。


「なっ、お、お前はぁ! なんでここにぃ!? 団長達をどうしたぁああ!?」


 僕は静かに「殺した」と答えた。


「きっ、貴様ぁああああああ!!」


 激昂した男は踵を返し、僕に向かって馬を走らせた。なんて好都合なのだろうと僕は思う。サクッと奴を倒して、すぐに伯爵を取り返そう。


 僕はその騎士を返り討ちにしようとグレイブを噛み締めたのだが、男のすぐ後ろに伯爵が乗っていることに気付き、無闇やたらに手を出す訳にはいかなくなった。


「殺す!! ぶち殺す!!」


 男は怒り高ぶり、真正面から馬鹿みたいに突っ込んでくる。とりあえず僕は奴を戦えなくする為に、彼の手首を斬り落とした。


「ぎょえぇえええええ!!」


 彼の右手だけが剣を握ったまま、あさっての方向に飛んでいく。その手首からはぴゅんぴゅんと血が噴き出て、まるでロケットのようだった。


「ちくしょう!」


 男は叫び、そのまま馬を走らせた。僕から逃亡しようと、今まで来た道を引き返していく。そっちへ行っても意味がないだろう、この馬鹿たれが、と僕は思う。


 すぐに僕は彼らに追い付いた。眼前には伯爵の後ろ姿が見える。伯爵を傷付けない為にも、僕はその馬にぴょーんと飛び乗った。


 伯爵の背後に僕は立つ。確認の為に覗き込むと、伯爵は口に猿ぐつわをかまされ、両手を縄で縛られていた。縛られた両手からも縄が伸び、それは鞍と繋がっていた。


 前に乗る騎士が僕の方を振り向いて、「おっ、お前ぇ!」などとのたまいている。


「さっさと降りろこの野郎! ふざけんじゃねぇ!」


 僕は咥えていたグレイブを右手で持つと、男の頭部に突き刺した。


「あれれぇ〜?」


 男の銀の兜がピキピキとひび割れる。彼の側頭部から後頭部にかけて、グレイブの刃が貫いている。

 僕がグレイブを引き抜くと、男は上体を反らすように仰け反り、そのままずるりと馬から落ちていった。


 スピードを無くし、やがて馬は立ち止まる。僕は一旦地面に降りると、伯爵の猿ぐつわと縄を解いた。


「青太郎!」


 すぐに伯爵が声を上げた。


「まさか来てくれるなんて! 助かったよ! ありがとう! 本当にありがとう!」


 僕は「いえいえ」と言い、心の中で続きを思う。サディ様の為なら何のその。


「さぁ、館に戻りましょう。サディ様もベリィ様も、伯爵様の帰りを待っておられます」


「2人とも無事なのか!?」


「はい。ベリィ様は多少のお怪我はされてるようですが、命に別条はありません」


「嗚呼、なんてことだ! 神よ! ありがとうございます!」


 伯爵はオーバーに天を見上げた。確かにあれだけの大群が押し寄せてきて、イジュメール家の面々が元気でいられているというのは凄いことだった。


 馬がいるのは好都合だった。このまま2人で乗って館まで戻ろう。

 僕はそう思って馬に跨ろうとするのだが、何やら視界がもややんとぼやけだした。それから頭がぐらんぐらんに揺れ始める。そのまま世界は反転し、僕はなす術もなくブラックアウトした。

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