表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/88

13

 僕は反射的に、前足にしていた右手で、落下するグレイブをキャッチした。

 その時ふと思った。僕はなぜグレイブを口に咥えていたのだろうか、と。


 理由は明白だった。サディ様の馬として戦うことを余儀なくされたので、僕は自然とそうしたのだった。

 四足の方が速いということもあり、そのままの流れで、僕はグレイブを口で扱い続けた。


 しかしこうしてグレイブを手に取った瞬間、僕の脳に雷が落ちた。

 絶対にこっちの方がいい! 使いやすい!


 僕は手に取ったグレイブを瞬時に振るった。敵の騎士の攻撃をガードし、その上で相手の剣が弾かれて飛んでいった。


「何ぃ!?」


 その騎士が驚きの声を上げる。僕は四足から二足に変態する。天高く上げたグレイブを、思い切り振り下ろす。

 僕の袈裟斬りが一閃し、その騎士は馬ごと斜めに切り裂かれた。馬と人間が真っ二つ、計4つのパーツに分かれ、その断面からどばどばと血が迸る。


 急激な展開に、残りの騎士達の動きがぴたりと止まった。中々動き出さない彼らに、僕は「どうしたどうした?」と言ってやる。


「怖気付いちゃったのかい? 9人の侍ならぬ9人の騎士さんよ。もっと僕を楽しませてくれよ」


「くっ」「調子に乗るなよ」「ぶっ殺す」


 各々の騎士が口々に言い放った。そうして彼らは僕目掛けて突進してくる。


「さぁさぁ! 宴はまだまだ続くよぉおおおお!」


 僕はそう叫ぶと、グレイブを持つ手を強く握った。




 1人、また1人と、僕は敵の騎士を倒していった。


「ば、馬鹿な……」


 1人の騎士が、呆然と漏らす声が聞こえてくる。


「これまで本当の実力を隠していたというのか? 一体、何の為に……」


 それはごもっともな疑問だった。現に僕は本当に死にかけていて、そうなるまで自分を追い込む必要はまるでなかった。

 全ては現場の閃きなのだよ、騎士Aくん。僕はそんなことを考える余裕まであった。




「ぐはぁあああ!」


 10人のうちの最後の騎士が大吐血した。腹を深く抉られた彼は、落馬して地面をごろごろと転がった。


「ま、まさか剣十時がやられるなんて……」


 リーダー格の男が狼狽えている。僕は彼に向かってグレイブを向けると、「チェックメイト」とかっこつけた。


「フ、フフフフフ、ハーハッハー!」


 気でもふれてしまったのだろうか。突如として高笑いを上げた男に、僕は哀れみの目を向けた。


「なるほどなるほど」と、一転して男は仕切りに頷いている。何も分かってはいないだろうに、鬱陶しいなと僕は思った。彼はさらに口を開く。


「確かにお前は強い。今まで本気を出していなかったなんて恐れ入った。だがしかし、お前は俺には勝てない」


「御託はいいからさっさと始めるぞ」


 彼の無駄な喋りに付き合ってやるつもりは毛頭なかった。早く奴を倒して、僕は伯爵を追いかけなければならないのだ。


 僕はグレイブを両手で握り、二本足で駆け出した。その最中、僕はぐらっとふらつき、危うく転倒しかける。それを見た騎士が、「フフフ」と不敵に笑った。


「お前が俺に勝てない理由その1、お前は既にダメージを負いすぎている。倒れていないのが不思議なくらいだ」


 確かにそれはそうだった。意識は朦朧とし、視界は霞んできている。しかしそれは意志の力でどうにでもなった。


「ううぉおおおお!」


 僕は自分を奮い立たせた。意識は明瞭とし、視界はクリアになる。

 自分のコンディションにしろ、伯爵のことにしろ、早急な決着が求められた。

 僕は再び相手に向かって走り出す。リーダー格の騎士は、さも余裕そうに、僕がやってくるのを待ち構えていた。


 僕のグレイブと、敵の大剣がぶつかり合う。ガキン!と大きな音が鳴り、辺りに火花が散った。


「ぐっ」


 思わず僕は唸る。やはり彼のパワーはとてつもなかった。対面時、口で振るったグレイブでは到底敵わなかったが、僕の両手をもってしても、彼の力の方がやや上回っているようだった。


「お前が俺に勝てない理由その2、仮にお前が万全の状態だったとしても、それでも俺の方が強いよ」


 眼前の騎士は、やはり余裕そうにそう言うのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ