10
僕は顔についた血を手で拭う。尤も全身が返り血に塗れているので、それは気休めにしかならない。
辺りには騎士達の残骸が散らばっている。思ったよりも手間がかかってしまった。僕は再び騎士の群れを目指して疾走する。
僕は走りながら考える。眼前に見える騎士団は、ざっと5、60人程だろうか。先程みたいに後列を削るのを5、6回繰り返せば、奴らを全滅することができる。尤もそんなにうまくはいかないだろうが。
僕の猛追に気付いた後列の騎士達が、何やら騒ぎ始める。
「ひぃっ!」「うわぁ!」「鬼だ!」「違う! あいつだ!」「あの野郎、後ろの奴らをどうしたんだ!?」「きっと殺したんだろう」「なんだって!?」
僕は一気に加速する。後列の騎士達は僕を迎え討とうと各々武器を構えた。
「2次会の会場はここですかぁあああ!?」
僕はそう叫びながら、ライフルの弾丸のように、回転しながら奴らに突っ込んでいった。
騎士達のバラバラ死体が、日本庭園の庭石のように並ぶ。
1人強い奴がいた。僕は彼から受けた右腕の傷を確かめる。そうそう深くはないだろう。傷口からは血が流れているようだったが、返り血と入り混じり、どれ程の量が出ているかは定かではなかった。
僕は再び騎士団を追った。僕が姿を現すと、すぐに後列の騎士達がざわめきだった。
彼らは専ら僕のことが気になって仕方がないようだった。大勢から注目を浴びるのは気分が良い。この様子だと、僕の存在は隊全体に知れ渡っていることだろう。
僕は彼ら目掛けて更にスピードを上げる。
「毎度お騒がせしまぁああす!!」
僕は飛び上がるとグレイブを振るい、3度目の襲撃に取りかかった。
騎士達のスクラップが散らばる中央で、僕は全身傷だらけで立っていた。そこは見晴らしのいい大草原。イジュメール家の敷地からはとっくに抜け出していた。
遠くの方を走る騎士団が小さく見える。早く追いつかねば。そう思うのだが、中々身体がいうことを聞かない。
僕の体のあちこちにはナイフが突き刺さり、全身真っ赤に染まっている。どれが自分の血で、どれが返り血なのか、まるで分からなかった。
僕は騎士団に計5回追いつき、その度に後列との戦闘を繰り返していた。その騎士の行列は、前方に行く程に手練れの数も増えていくようだった。
3度目の襲撃時、曲刀を使う、息のあった2人の騎士が立ちはだかった。彼らのコンビネーションプレイに僕は翻弄され、身体のあちこちを切り裂かれてしまった。
彼らがとどめとばかりに同時に飛びかかってきた時、僕は必殺の回転斬りを発動し、なんとか2人を倒すことができた。
4度目の襲撃時は、4人の手強い槍兵が混じっていた。四方から一斉に放たれる電光石火の突きに、僕は危うく何度も串刺しにされそうになった。
彼らの同時攻撃は執拗に僕を追撃した。空中に避けたところを狙われ、グレイブでガードするも、何発もの突きが僕の体を掠めた。
全身に裂傷をこさえながらも、僕は彼らの特性を上手く利用した。彼らの攻撃を避け、僕は天高く舞い上がる。彼らは僕を追って空を見上げるが、そこにはギラギラと太陽が輝いていた。僕はその位置に来るように、さりげなく誘導していたのだ。
彼らが目が眩んだ一瞬の隙に、僕は次々と太刀を浴びせていった。
5度目の相手方は中々いかつかった。大きな斧を振り回す者、レイピアを手にし、優れた剣技を披露する者、鎖付きの鉄球をぶん回す者、遠くからナイフを投げつけてくる者など、様々な武器を扱う騎士がたくさんいた。
一見バラバラで統率のない様に見えるが、それぞれが上手く連動して、僕を間断なく襲い続けた。
僕は背中を斧で斬りつけられ、脇腹をレイピアで刺され、頭に鉄球を受け、全身がナイフまみれになった。
どうやって奴らを倒したのかは覚えていない。傷付けられるごとに僕は快感を感じ、強くなっていったように思う。生命の危機に興奮し、無我夢中でグレイブを振るった。気付けば全員が僕の前に倒れていた。




