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それから日々は緩やかに過ぎていった。完全復活したサディ様の調教は申し分なく、僕は充実した毎日を送ることができた。
サディ様の鞭は力強く、しなやかに、僕の肉体を打った。僕は吹き飛び悶えながら、この上ない愉楽を感じるのだった。
サディ様を背中に乗せることも、この上ない喜びだった。彼女の重みやお尻の感触を背中で感じているとぞくぞくするし、何より彼女の役に立っているということが僕の存在意義にもなった。
様々な器具を使った調教も、以前のように行われた。より厳しく、より難易度が高くなる度に、僕はへろへろになった。
もっといじめてください! いっそ殺して! 気持ちいい!
調教中の僕は、内心で絶えず激情している。ありがとうサディ様。ありがとうイジュメール家。このうはうはライフがいつまでも続くことを僕は願った。
ある日寝床で、母は僕を抱きながら言った。
「嗚呼、エムバペ。私の可愛いエムバペ。私とあの人の、たった1人の、かけがえのない子供」
おやおや?、と僕は思う。
「あの人?」
僕は疑問を素直に口に出した。あらあら、と母は言う。
「そういえばあなたにはまだ言っていなかったわね。あなたのお父さんのこと」
「お父さん?」
確かにそれは疑問だった。僕の父親がイジュメール家の誰かだったとしたら、この青い瞳に説明がつかなかった。突然変異なのか。そうだとしても、僕と彼らはまるで似ていなかった。
「そう、あなたのお父さん、ウィルフリード・ソラールキーについて……」
誰やねんそれ、と僕は思った。
母曰く、彼女はとある小さな村で暮らしていたという。そこは森に囲まれたひっそりとした村で、王国の外れに位置していた。イジュメール家のある王国ではなく、その隣の国であった。
そこで母は踊り子をやっていた。村の祭事や祝い事の度に、彼女は人々の前でダンスを披露した。
その村は隣国(今僕たちがいる国だ)との国境近くにあった。村には時折騎士団が訪れた。国境警備の際に、その村を訪れるのだ。母達はその際に歓迎の舞を踊ったという。
とある訪問の際、1人の騎士が母に惚れ込んで猛アタックを仕掛けてきた。それが父のウィルフリードだった。
最初は母も戸惑っていたが、訪問する度に熱心に彼女を口説く父に、徐々に心が惹かれていった。
やがて2人は交際することになった。父の仕事柄、頻繁に会うことはできなかったが、着々と逢瀬を重ねていった。
ある日のこと、母は父からプロポーズを受けた。彼女はそれを承諾し、都市で一緒に暮らすこととなった。
結婚、引っ越し等の準備を進めている時だった。彼女の住む村を、隣国の騎士団が攻めてきた。領土を拡大したい隣国からすると、その村は格好の的であった。水面下で襲撃の準備を着々と進めていたようだった。
村はすぐに地獄絵図と化した。家々は壊され、焼かれ、村民達は次々と殺されていった。
母は家の隅でぶるぶると震えている所を捕らえられた。捕虜となった母は隣国に送られ、奴隷としてイジュメール家に買われることとなった。
「そうして奴隷になってから、私はあなたを妊娠していることに気付いたの。あの人との子供ができたことは嬉しかったけれど、立場的には複雑だったわ。このままあなたを産んでしまっていいものか。奴隷として一生を過ごすことになるかもしれないのに、そんなのあんまりじゃない。だけど私にはどうすることもできなかった。あなたを産む以外、私の選択肢はなかった」
母は深刻そうに言った。へー、自分の生まれる前ってそんな感じだったんだー、と僕は思う。母が僕の頬に手を添える。
「ごめんねエムバペ。こんな苦しい日々を余儀なくさせて」
なんのその。僕にとっては最高の日々だよ。そんなことを思いながら、僕は首を横に振る。母はじっと僕のことを見つめていた。
「嗚呼、あの人と同じ青い瞳。とても綺麗で、美しくて、愛らしい。あなたさえいれば、私は他に何もいらないの」
そう言うと、母は僕の肩に顔を埋めた。僕はサディ様さえいれば、他に何もいらないな、と思った。




