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「私は薄汚い子豚野郎です!」


 僕とペプチドは、2人並んで精一杯声を張り上げた。その周りを、鞭を持ったベリィ様が獲物を狙う禿鷹のようにぐるぐると回っている。


「声が小さいっ! もっとおおお!」


「私は薄汚い子豚野郎です!」


「声が小さいっ!」


 彼女の鞭がペプチドの背中に炸裂する。堪らずペプチドは「うひゃあ!」と叫んだ。

 全くもって羨ましいと僕は思う。ベリィ様に従順過ぎて、僕はありったけの大声を出してしまっていた。ペプチドも全力を出そうとしているようだったが、喉の細さや恥じらいも相まって、僕と比べると見劣りしてしまっていたのだ。僕は反省する。


「喚くな、この子豚野郎!」


「うぐう」


 ペプチドは泣くのを必死で堪えようとしているようだったが、目からは涙が溢れ、嗚咽を漏らし始めた。


「泣くんじゃないよ子豚野郎が。本当にあんたはどうしようもない子豚野郎だよ!」


 ベリィ様はさらにもう一撃加えようと、鞭を持った右手を後ろに振りかぶった。撲たれたかったというのが大前提ではあるが、ペプチドと約束したこともあったし、僕はベリィ様の前に飛び出した。


「やめるんだ! やるなら僕をやれ!」


「うるせえんだよ糞ゴミ虫。退けろ」


「あ、すみません」


 あまりの威圧感に僕は気圧されてしまった。やはり天性の女王様、オーラが違うぜ。

 ベリィ様はもう一撃をペプチドに加えた。「うひゃあ!」という叫び声が室内に轟いた。

 

「ほら、もっと大きな声で言うんだよ! 私は薄汚い子豚野郎ですってな!」


 ペプチドは泣きながら「私は薄汚い子豚野郎です!」と叫んだ。


「お前も言うんだよ!」


 そう言ってベリィ様の鞭が僕の方にも飛んできた。背中に鋭い痛みと衝撃が走る。


「はぬぅ〜ん!」


 堪らず僕が声を出すと、ベリィ様は「なんて穢らわしい鳴き声だ! この糞豚があ!」と言って、追撃の鞭を浴びせた。


「ぬはぁ〜〜ん!」


「おらあ!」


「はぬはぬぅ〜〜ん!」


「もう一丁!」


「まぬかはに〜〜!」


 全くもって最高だと僕は思った。




 玉座に座るベリィ様の前に、ペプチドは跪かされた。彼の眼前に、伯爵夫人のヒールを履いた右足が突き出される。


「舐めな」


「ええっ?」


 思わずたじろいだペプチドの顔面を、ベリィ様は軽く蹴飛ばした。


「舐めな」


 ベリィ様は同じ台詞を先程と同じ冷たさで繰り返す。有無を言わさぬ威圧感がそこにあった。


 ペプチドは意を決したように眉間に力を込めると、首を前にぐっと伸ばした。彼の小さな舌がちろちろとベリィ様の赤いヒールを舐める。それを見た伯爵夫人はフフフと笑い声を漏らした。


「裏っ側もしっかり綺麗に舐めるんだよ」


 ペプチドはベリィ様の指示に従順に従った。ヒールの裏側をちろちろちろちろ舐める。


「フハハハハ! ハーッハッハー!」


 ベリィ様の高笑いがこだまする。ペプチドはやはり涙を流し、その顔は屈辱に塗れていた。


「青目、次はおまえの番だ」


 待ってましたと僕は心の中で呟く。ペプチドと入れ替わるようにベリィ様の前に跪くと、彼女は左足を僕の前に突き出した。


「さあ舐めろ」


 僕は心の中でいただきますと唱えた。べろんべろんと赤いヒールをねぶっていく。それを見てベリィ様は「ヒヤーハッハー!」と愉快そうに笑った。


 僕は興奮が止まらなかった。ベリィ様の足、ベリィ様のヒール。べろろんべろろんべろんべろんと、舌全体を使って圧倒的に舐めた。


「ほんと滑稽だよこの豚が。気持ち悪いったらありゃしない」


 僕はもう堪らなくなって、彼女のヒールの先端をめいいっぱい口に押し込んだ。


「うっ」


 ベリィ様の引いた声が聞こえたが、僕はもう止まらなかった。顔をぐりぐりと回転させながら、口内では舌が暴れ回っていた。その様は彼女の足先から、全ての栄養を吸い取ろうとしているかのように見えただろう。


「流石にキモ過ぎるだろ!」


 ベリィ様は右足で僕の顔面を蹴り飛ばした。後ろに倒れながら、僕の舌は激しく宙を掻き回した。つんざくような鼻の痛みを感じながら、僕はナイスキックと心で称えた。

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