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10

 トテモは片手にお盆を持ち、くるくると回りながら戻ってきた。


「お待たせ、サディ」


 彼は持っていたお盆をテーブルの上に置いた。そこにはティーセットとお茶の容器が乗っかっている。


「香りがとてもいいんだ」


 トテモはそう言うとポットを手に持ち、カップにお茶を注ぎ始めた。お茶を入れながら彼は顔を左右に動かし、鼻をくんくんと鳴らした。


「ほうら、いいだろう」


 サディ様も匂いを嗅いだようで、「うん、いい香り」と明るい声が聞こえた。


「さあ、飲んで飲んで」


「頂くわ」


 サディ様の手がカップを掴んだ。スゴクもカップを手にし、それを口元まで運んでいった。彼は一口お茶を啜ると、森林浴でもしているかのように、すっと目を閉じるのだった。サディ様が「うん、とても美味しいわ」と、真っ直ぐな感想をおっしゃられる。トテモはそれを聞いて、目を瞑ったまま、うんうんと仕切りに頷いた。


「本当に美味しい。ほろ苦く澄んだ香りが鼻をすっと駆け抜けて、口内ではお茶の渋味や甘味がじわじわと広がって……」


 そこでトテモは目を閉じたまま、隣に座る奴隷女の首に両手を伸ばした。


「そう、こんな感じで、じわじわ、じわじわと……」


 トテモは女奴隷の首を締め、ゆっくりと力を加えているようだった。


「ト、トテモ様、や、やめてくだ、さ、い」


 女奴隷は苦しそうに言った。それでもトテモは全く意に介さず、目を瞑ったまま、徐々に力を強めているようだった。


「じわじわ、じわじわと……」


「ト、 トテモさ……ま……」


 やがて女は喋らなくなり、カッ、カッと、痰を切るように、苦しそうに息をした。


「じわじわ……、じわじわと……」


 トテモは目を閉じて恍惚の表情を浮かべている。女の顔は鬱血して真っ赤に染まっていった。トテモの隣に座るもう1人の女は、その様子を震えながら、恐ろしそうにじっと見ていた。


「じゃあトテモお兄様、これももらっていくわね」


 サディ様はそう言うと、お盆の上の2つの茶筒を手に取った。トテモは何の反応もなく、相変わらずじわじわ言って、女奴隷の首を締め続けていた。


「さあ、行くわよ青太郎」


「え、いいんですか?」


「いいのよ、長くなりそうだから。ていっ。」


 サディ様は僕のお尻を鞭で打った。


「ぶっふぃーん!」


 僕はとことこと歩き始め、入り口の扉へ向かった。

 部屋から出る時も、トテモの「じわじわ……じわじわ……」という、気味の悪い声が聞こえてきた。




 また別の日に、僕はサディ様を背負って館の2階を歩いていた。サディ様はその胸に、幾冊かの本を抱えているようだった。


 先導していた使用人が、とある部屋の前で立ち止まる。彼は扉をノックすると、「メッチャ様! サディ様が参りました!」と部屋の主に呼びかけた。


「入れ」


 男の冷たい声が響き、扉が開かれる。

 そこは寒色で統一された空間だった。部屋のあちこちに、拘束された裸の女奴隷達がいた。宙吊りにされている者、磔にされている者、椅子に縛られて目隠しをされている者等、様々だった。

 部屋の中央に、メッチャが鞭とワイングラスを持って立っていた。彼の足元には、ボンレスハムみたいに縛られた裸の女が転がっていた。


「サディ、どうしたんだ?」


「メッチャお兄様、この前借りた本を返しに来たわ」


 メッチャは「そうかそうか」と言うと、ニヒルな笑みを浮かべた。


「読んでみてどうだった?」


 サディ様は「うーん」と唸った後、「まあ面白かったけど、少し難しかったかも。内容が哲学的だったし」と答えた。メッチャは「確かに」と相槌を打った。


「俺自身も完璧に理解できたのは10歳とかその位だったしな。次はもうちょっと分かりやすいのを貸してやろう」


 メッチャはワイングラスをテーブルの上に置くと、部屋の片隅にあった本棚まで移動し、数冊の本を抜き取ってこちらに戻ってきた。その過程で、彼は宙吊りにされた女の胴体に、行きと帰りで鞭を2撃入れた。その度に女は耳障りな金切り声を上げた。

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