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 サディ様の専属奴隷になって数日が経過した。専属奴隷としての生活の中で、僕はサディ様の日常を知りつつあった。そうしてそれが僕の日常ともなっていく。彼女と同じ時間軸を生きれて幸せだった。




 早朝、いつものように使用人が僕のいる奴隷部屋へとやってくる。すぐさま僕は飛び起きて、彼と共にサディ様の部屋へと向かった。


 道中、使用人の後ろ姿を見ながら、別に彼らがいなくても、僕はちゃんとサディ様の部屋へ行くのに、と思う。専ら僕は彼女の奴隷になることを望んでいる。逃れようとする訳がなかった。尤も奴隷達が全員僕のようなメンタリティではない訳で、使用人の存在は必要不可欠だった。




 サディ様の部屋に着くと、彼女は早速僕の背中に乗った。僕の奴隷生活は、サディ様を朝食へお連れするところから始まるのだ。


「さあ、行くのよ、青太郎」


 サディ様の鞭が僕のお尻を打った。僕は「ヒヒーン」と鳴いて、ぱっからぱっからと歩き出す。




 イジュメール家の食事は朝、昼、晩、いつもの食堂で行われる。

 僕達が部屋の前に着くと、使用人の手によって大きな扉が開かれた。サディ様は僕から降りると、食堂の中へと歩み出した。


 食堂の前で使用人と共に待機していると、続々とイジュメール家の面々がやってきた。

 シックな装いで、豪腕なオーラを放つイジュメール伯爵。凛々しく姿勢のいい、青い服のメッチャ。色味からか、のほほんとして見える緑服のトテモ。アホそうな黄色い中坊、スゴク。圧倒的な存在感、気高く美しいベリィ様。彼らは僕に見向きもせず、それぞれの使用人と共に部屋の中へ入っていった。




 朝食が終わると、僕はサディ様を部屋にお送りする。食堂の前でサディ様が僕に乗っかっていると、部屋から出てきたスゴクが僕達を見て、嘲るかのようにフッと笑った。


「サディ、お馬さん遊びは楽しいかい?」


 その皮肉ってやったと言わんばかりの得意げな顔を、僕はサディ様に変わってぶん殴ってやりたいと思う。


「別に遊びではないわ。実際に馬に乗っているのとなんら変わらない。なんなら青太郎は馬よりも早く走ることだってできるのよ」


 そうだ、もっと言ってやってください、と、僕は思う。スゴクはハッと馬鹿にしたように笑う。


「馬よりも早くう? 何を行ってるのかねえ、このお嬢さんは」


 ねちっこく嫌味ったらしい彼の口調は、聞く者全員を苛つかせるだろう。

 サディ様は僕の尻を鞭で打った。彼女の意図を理解した僕は、後ろ脚のばねを最大限活かし、最高のスタートダッシュを決めた。スゴクの眼前を、ぶつかりそうな程きわきわの所を、一瞬で駆け抜ける。


「うっひゃああ〜!」


 スゴクは大いに取り乱し、後ろにのけ反って尻餅をついた。サディ様はとても可笑しそうに、僕の背中でくすくすと笑い声を上げた。我ながらいい仕事をしたなと思い、とても誇らしい気持ちになる。

 背後から「サディ様〜!」と慌ただしい声が聞こえた。後ろを見ると、使用人が置いて行かれないよう、必至の形相で僕達を追いかけていた。




 部屋に到着すると、サディ様は僕達を締め出した。こういうことは多々あった。彼女は1人きりで、プライベートな時間を過ごしたいのだろう。


 部屋の前で、使用人と二人して並ぶ。全力で走ってきた彼はぜえはあと息を荒げ、おでこに茶色い毛髪を張り付けていた。


「大丈夫ですか?」


 僕が話しかけても、彼がそれに答えることはなかった。基本的に使用人は全員彼と同じスタンスだった。僕が何を言っても無言を貫くか、軽くあしらうかだ。業務中の私語は一切しない。教育が行き届いていると思った。

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