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ツカツカと足音が聞こえる。ベリィ様がメッチャの前までやってくると、思い切りペプチドを蹴り飛ばした。
「うっひゃあ〜!」
ペプチドは男から剥がれると、ごろんと床に転がった。
「この糞ガキがあ!」
ベリィ様はペプチドの背中を思い切り踏みつけた。
「ぐぴゃああ〜!」
「足置きの癖に調子のってんじゃねえぞボケが!」
ベリィ様は何度も何度もペプチドを踏んだ。その度に彼の悲痛な叫びが轟いた。
「ペプチド!」
すぐに母親が駆けつけようとするが、メッチャの鞭が容赦なく彼女を打ちつけるのだった。
「ひやぁああ〜!」
「勝手に動くんじゃねえ、うんこ女!」
メッチャは連続で彼女の体を叩いた。
「やめてぇえ〜!」
「ダンスは下手だし、ガキは調子のってるし、ほんと最悪だよてめえは!」
「いやぁああ〜!」
フルートの音色に合わせ、ペプチド親子の悲鳴と折檻の音がハーモニーを奏でた。その様子を見て、僕の背中の上のサディ様は「ふふふ」と品の良い笑いを漏らした。周りのイジュメール家達も、楽しそうにけらけらと笑い出す。奴隷の女達は眼前の暴行に慄きながら、ぎこちなく踊りを続けている。
「脱げ」
メッチャが冷たく言った。ペプチドの母親は震えながら、「勘弁してください」と言った。すぐに鞭が飛ぶ。
「ひやあっ!」
「脱げ」
「む、息子の前で、そんな」
「いいから脱げ!」
メッチャの鞭が、ペプチドの母親の体を激しく叩いた。
「いやああっ!」
彼女は痛みに悶えた後、ゆっくりと自分が着ている麻の服に手をかけた。ベリィ様が踏みつけたペプチドに向かって、「ほら、母親の無様な姿を目に焼けつるのよ」と言った。
ペプチドの母親は服を脱いで裸になった。その体はミミズ腫れや痣だらけでむごたらしかった。ペプチドは「うぅ」と、小さく呻いては涙を流し始めた。
「そうら、踊れ」
メッチャに言われ、ペプチドの母親は裸で踊り始める。
「ハハハ、ハーハッハー!」
メッチャの高笑いが辺りに響いた。ベリィ様はペプチドに向かって、「ほんと、愉快なお母さんね」と語りかけた。
「うわぁああああああ!」
ペプチドは大粒の涙を流して絶叫した。
「うるさい」
そう言ってベリィ様はペプチドを踏み付ける。
「うぐぅ!」
ペプチドは呻くとぐったりした。その顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。食卓に座るイジュメール一家の笑い声が響く。
「本当馬鹿なガキだよなあ。あの間抜けさはきっとお前のガキだぜ」
トテモと呼ばれる緑色の服の男が、スゴクと呼ばれる黄色い服の男に向かって言った。
「何言ってんだ、間抜けはトテモ兄さんだろ。トテモ兄さんのガキに決まってるよ」
スゴクもムキになって言い返す。
「これこれ」
イジュメール伯爵が2人の仲裁に入った。
「さっきから何を言ってるんだお前達。奴隷から生まれる子供が、我々の子供な訳ないだろう」
兄弟は顔を見合わすと、「それもそうか」と言って笑顔になった。
「ハハハ、ハーハッハッー!」
そうしてイジュメール家の賑やかな晩餐は続くのだった。




