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「じゃあ次、目糞青太郎」


 とうとうやってきたと思う。僕は「はい!」と高校球児のような返事をすると、すぐにその場に四つん這いになった。

 サディ様のお尻が僕の背中に乗っかる。それはとても柔らかな肉感だった。彼女と触れ合う部分に全神経を集中させる。サディ様のずっしりとした重みを感じ、僕は幸せだった。


「さあ、進みなさい」


 サディ様の鞭が僕のお尻を叩いた。もちろん僕は「ヒヒーン」と鳴いた。


 馬になるにあたって、大切なことはたくさんあった。まずは主人を落馬させない。これは大前提。それから安定感。ふらふらと揺れていたら主人は不安に思うし乗り心地も良くないだろう。あとはスピード。鞭を打たれたら速度を上げる。主の温度感を読み取って適切な速度を心がける。


 僕は決してぶれないよう、細心の注意を払いながら前進を進めた。もちろんサディ様の鞭を受けるとスピードを早めた。

 サディ様の打擲と、彼女が背中に乗っていることに興奮し、僕はアドレナリン全開だった。彼女の重量をものともせずに、がんがんと前に突き進んだ。


「ふふっ、いいじゃない。もっとスピードを上げるのよ!」


 サディ様の鞭が僕のお尻を連続で叩いた。背中から聞こえる彼女の声は高揚感が感じられ、僕は忽ち嬉しくなった。


「Heheeeeeeeeeeeeeen!!」


 僕は咆哮するとさらにギアを上げた。背中からぼそりと「きもっ」という声が聞こえた。若干のショックを受けつつも、そのリアルなトーンに興奮を覚えた。そうです、僕はきもいんです。いくらでも罵ってください。スピードはさらに加速する。


「うふふふふ」


 サディ様の楽しそうな声を聞いて、僕はこの上ない悦びを感じた。このまま僕は貴方の馬になります。ならせて下さい。お願いします。




 肉体の限界を超えても、僕はサディ様を運び続けた。広い室内をぐるぐるぐるぐると回る。やがてサディ様は飽きたのか、馬の僕に止まるよう指示した。サディ様が背中から降りると、僕はすぐに彼女のお尻の感触が恋しくなった。


「お母様、この馬なかなかいいわよ」


 サディ様はベリィ様に向かって言った。その言葉を聞いて、僕は誇らしかった。


「それは良かったわね」


「まあ、子馬の割には、だけどね」


 確かに大人と比べると、スピードも安定感も桁違いなのだろう。僕はサディ様の馬になっているであろう大人の奴隷達にジェラシーを抱いた。


「その青目は従順なのはいいけれど、たまに凄い気持ち悪いのよね」


 ベリィ様はとても不快そうに言った。サディ様も気味悪そうに「なんとなく分かるわ」と答えた。

 親子の共通認識として、僕は中々に気持ち悪いようだった。それは当然のことであるし、悦ばしいことだった。


 それから僕は体の異変に気付く。どっと疲労が押し寄せ、上手く歩けそうになかった。それから手脚の痛み。手の平と膝は擦りむけて出血していた。僕はごろんと横になる。少し離れた所で、いまだにペプチドはへたばっていた。

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