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「ふ、ふざけるな! なんでぼくがうんこじろうなんだ!」
ペプチドは激昂した。相手が自分とそんなに変わらない子供とあってか、思い切り食ってかかった。
「サディになんて口の聞き方をするの!? この糞奴隷が!」
すぐにベリィ様がペプチドに鞭を飛ばす。
「ひゃうん!」
「大丈夫よお母様」と、サディ様はうふふと笑って言った。
「犬が吠えてきたって仕方がないじゃない。だって相手は畜生なのだから」
「ぼくはいぬじゃない!」
ペプチドは再び反抗して声を荒げる。すぐにベリィ様が「この糞奴隷が!」と叱責して鞭を打った。
「ひゃうん!」
「まあまあ、お母様」
そう言ってサディ様はベリィ様を宥める。彼女はなんて寛大な心を持っているのだろうと僕は思った。
「確かにあなたは犬じゃないわ。うんこですものね」
「うんこじゃない!」
「この糞ガキ!」
「ひゃうん!」
サディ様に反抗するペプチドをベリィ様が打つという、一連の流れが完成しつつあった。
「お母様、私にも鞭をください。このうんこ次郎を調教してみせるわ」
「仕方ないわね」
ベリィ様はそう言うと、どこからともなく子供用の鞭を取り出してサディ様に手渡した。サディ様が鞭を振るい、びゅんびゅんと空を切る音が辺りに響いた。
「さあ、うんこ次郎、馬になりなさい」
「は?」
「そこに四つん這いになって、背中に私を乗せるの。早くしなさい」
「なんでぼくがそんなことを」
口答えをするペプチドを、サディ様は鞭で思い切り叩く。
「ひゃいーん!」
「鳴き声は馬に近いわね。でもちゃんとヒヒーンと鳴くのよ。そら」
「ひゃひーん!」
「違う」
「ひひーん!」
「そうよ」
全くもって羨ましいと思う。僕もサディ様に鞭で叩かれたい、サディ様の馬になりたい。そういった願望が、僕を彼女の前へと歩み出させた。
「サディ様、馬になら私がなります」
「黙れ目糞」
「あ、すみません」
こうなることは分かっていたような気がした。焦ってはいけないのだ。自ずと僕のターンはやってくるのだから。
「早く馬になりなさい」
サディ様はペプチドに対してそう言った。ペプチドは苦々しい顔を浮かべ、なんとか抵抗を試みているようであったが、やがてサディ様の指示通りに四つん這いになった。
サディ様がペプチドの背中に乗る。嗚呼、羨ましいと、やはり僕は思う。彼女の重さを体感してみたい、彼女のお尻の感触を背中で感じてみたい。
「さあ、進みなさい」
サディ様はペプチドのお尻を鞭で打った。
「ひひん!」
ペプチドは顔を真っ赤にしながら四つの手足を動かした。自分より体の大きなサディ様を背負うのだから、自然とそうなるのだろう。
「遅い」
そう言ってサディ様はさらにペプチドのお尻を強く叩いた。ペプチドは茹で蛸のようになりながらも、必死で体を動かしているようだった。しかし彼の肉体は大きく傾き、ぎりぎりの前進を続けることになった。サディ様の鞭が飛ぶ。
「ふらふらしてんじゃないわよ。しっかり歩きなさい」
それからすぐに限界が来たようで、ペプチドは床に突っ伏した。サディ様の下敷きになりながら、彼はゼェハァと息を荒げていた。
「ほんと使えないわねえ」
サディ様は立ち上がると衣服の乱れを直した。それから床に転がるペプチドの脇腹を蹴った。
「ふぐぅ」
弱々しく呻くペプチドの姿は哀愁が漂っていた。




