婚約者に「鏡を見てから、出直してきてくださる?」と言ってしまうのです…
小説家に『なろうラジオ大賞3』応募作品です。
テーマは鏡
婚約者との月に一度のお茶会。
これが、最近私を悩ませている。
お茶会の途中。彼との会話に限界を感じはじめると、私はこう言うの。
「鏡を見てから、出直してきてくださる?」
彼は、少し寂しそうな顔をしながら席を立つ。
「では…また」
いつもの様に言葉少なに帰っていく彼を見送った後、私は…
「もう無理!あれは、なんなの〜?」
顔を手で覆い隠して座り込む。
普段無表情な彼が、私の話を聞いている時、優しく微笑み相槌を打ってくれるの。あれは誰?しかも、寡黙なはずの彼の相槌がすごいの。
母と買い物に行った話をすれば、
「素敵な髪飾りだね、可愛い。とても良く似合っているよ」
クッキーの作り方を習った話をすると、
「すごいね、今度君が作ったクッキー食べてみたいな。試作品の味見でもいいよ、一番に僕に食べさせてね」
って!いつもの彼はどこに行ったの?その恋愛小説から持ってきたような、甘い台詞はどこで習ったの⁈
自分の話をする時は、要点をまとめた報告書を読み上げるような、いつも通りの無表情で寡黙な彼なのに。彼の微笑みと、甘い言葉を長時間受け続けるのは、申し訳ないけど今はまだ無理。
でも、来年から私達は学園に通う。色々な人と出会って、彼の微笑みが他の人に向けられると思うと、少し嫌な気分になる。彼との学園生活の為に、なんとかしないと。
次のお茶会の日。決意むなしく、また私の心は限界を迎えた。
「鏡を見てから、出直してきてくださる?」
いつもなら立ち上がる彼が、従者を呼んで何かを受け取った。
「今日は、手鏡を持ってきたんだ」
手鏡って…今まで家に帰って本当に鏡を見ていたのかしら?何それ…可愛い。
「僕は君の前で、いつもこんな顔をしていたんだね」
鏡を見ながら、彼がちょっと落ち込んだような顔をするので、私は慌てて気持ちを言葉にする。
「嫌…ではないのよ?ただ、慣れてなくて…」
「嫌でないなら、慣れてくれると嬉しいな。でも、僕は君のそんな顔を見るのも好きだよ」
彼は私に手鏡を向ける。そこには、真っ赤な顔で眉を吊り上げ、怒ったような顔をした私がいた。
「待って!これは私じゃないわ」
慌てて奪い取った鏡で顔を隠す。
私は恥ずかしくなると、こんな顔をするのね。この日、新たな自分の顔と、恋心を知った。
婚約者に「鏡を見てから、出直してきてくださる?」と言われたので・・
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前に投稿した少年視点の物語。
の少女視点のお話でした。
文字数ギリギリで、だいぶ削りました。
設定盛り込めなかったので、
こちらも見ていただけるとわかる事があるかも?
読んでいただきありがとうございます♪
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誤字報告書ありがとうございます!




