99.浄化して殲滅
俺は『オートホース』を起動し、王都の上空高く、舞い上がった。
王都全域で暴れているゾンビを駆逐するためだ。
俺の『光魔法——光の祝福』で、ゾンビを倒しつつ浄化して、囚われた魂を解放する。
そうすれば、何らかのスキルで再利用されることも、防げるはずだ。
問題は、この広い王都各所にいるゾンビに対して、いかに効率よくスキルをかけるかである。
必死で考え思いついた方法を、試すことにする。
それは、上空から『光の洗礼』を拡散させることだ。
『光の洗礼』の発動により現れる浄化の光の滴『光滴』を作り、今俺ができる最大限の大きさまで拡大する。
そしてそれを、一気に拡散放射するのだ。
本来対象者を指定して『光滴』を作るわけだが、そこを指定せずに、エリア全体をイメージして作るのだ。
ぶっつけ本番だが、多分できると思う。
直感的にそう感じるのだ。
もちろん広い王都を一度でカバーすることはできないだろうが、これを何回か繰り返せばいい。
問題となるのは拡散放射する手段だが、現時点での俺のスキルの熟練具合では、心もとない。
そこで、『聖剣カントローム』を使うことにした。
『聖剣カントローム』の技コマンド『聖なる突風』を使って、砂塵を発生させる。
その砂塵で『光滴』を巻き込んで、光の砂塵にするのだ。
それを砂嵐として、拡散放射させると言うわけである。
浄化の光をまとった砂が、広範囲に無差別にまき散らされるのだ。
普通の人に当たっても、精神波動が浄化されるだけで、何の問題もない。
だがゾンビに当たれば、特効だし、囚われた魂を解放することができるだろう。
俺は、上空から王都を見下ろす。
なんとかこの位置から、視界に入る範囲のイメージを頭の中で固定化する。
最大でも、王都面積の十分の一くらいにしかならないだろうが、しっかり頭の中でイメージする。
そして、『光の洗礼』を発動する——
最大限の雫に、浄化の光を充満させる、そんなイメージだ。
すると、雫状の『光滴』が、だんだんと拡大し、巨大な球体になった。
それとともに、現時点ではこれが限界だと直感的にわかる。
まぁいいだろう。
俺が思ってたよりも、かなり大きいものができた。
そして、間髪入れずに『聖剣カントローム』を構え、『聖なる突風』を発射する——
最初は、『光球』のみを狙って。
その直撃とともに、念の力で砂塵を砂嵐のように巻き上げる。
聖剣の剣先から砂塵を起こし続けながら、光の砂嵐をコントロールし拡散放射していく。
光の砂嵐は、拡大しながら降下していき、吹き荒れる。
といっても、人々のところに到達する頃には、俺がイメージした範囲全域を駆け巡る、そよ風のようになっていた。
キラキラした、光のそよ風だ。
だがそれは、ゾンビにとっては破滅のそよ風である。
浄化の光を纏った砂に触れたゾンビは、しばらく苦しむような動きをした後に、動きを止めている。
予定通り、倒すとともに、囚われた魂を解放できたようだ。
光り輝くそよ風に触れた兵士や人々は、皆驚き惚けたようになって、キラキラ光るそよ風に見惚れている。
そして何人かが、上空にいる俺の存在に気づき、手を合わせるような拝むような仕草をしている。
まぁ飛行船が目立つから、見られるのはしょうがない。
それにしても、俺に対して手を合わせるなんて……俺が術を発動したとわかったのか?
見えたはずは無いのだが。
俺は、その後十回ほど同様のことを繰り返し、王都全域のゾンビを駆逐した。
残っている『小悪魔』たちは、俺の仲間や王国の兵士たちで何とかしてくれるだろう。
俺は急いで、王城に戻る。
そしてジャスティスたちに警戒されないように、奴らがいる王宮本殿周辺以外のエリアに、『光の洗礼』を発動し、ゾンビを駆逐した。
残るは、ジャスティスたちだ。
決着をつける!
『オートホース』で、王宮本殿に降りて行くと、不思議な光景が目に入り、一旦降下を止めた。
なぜか、新たな認定『勇者』であるはずのジェイスーンが、国王の首に剣を当てている。
本殿の奥から連れ出して来たようだ。
国王と一緒にいた宰相や大臣など国の中枢を担う者たちも、脅されているようで、一緒に出て来た。
ジェイスーンは、国王を人質にして、後から押し出すように重臣や高位の文官を本殿の外に出した。
そして、それを待ち構えているのが、嗜虐の笑みを浮かべた魔王ジャスティスと悪魔契約者ユーリシアだ。
これは一体どういう状況なのか……?
まぁ、どういう状況でも関係ない。
ジャスティスたちを確実に葬る!
俺は、ジャスティスたちの後方上空で静止したまま、攻撃を開始する——
——ビュンッ
——バウォンッ
俺の指先から放たれた『光魔法——太陽光線』が、ジャスティスの頭を撃ち抜いた、かに見えたが、瞬間、避けた。
ソーラーレイは、地面を穿ち爆炎をあげている。
どうやら、俺に気づいていたようだ。
まぁ確かに、気づかれるのを前提で、普通に降下していたからな。
「ガッハハ、ヤマト、よく来たなぁ。魔境まで行く手間が省けた。俺に殺されに来るとは、馬鹿な奴よ、ガッハハ」
俺のソーラレイの威力に、一瞬焦ったような顔をしたが、何事もなかったかのように、高笑いをしている。
「ジャスティス、魔王となってしぶとく生きていたようだが、それも今日で終わりだ!」
「ガッハハ、バカめ! もはやお前など、敵ではない! 俺の魔王の力の前に、お前は成す術もなく死ぬ。俺に触れることなどできないのだ! 行くぞ! ゾンビ供、集まれ! ヤマトを倒せ!」
ジャスティスは高らかに叫んで、右腕を突き上げた。
スキルを発動したのだろう。
やはり、死者を即座にゾンビ化するスキルの主は、ジャスティスだったようだ。
「アナライズしました。ジャスティスは、『固有スキル』に目覚めていたようです。
『死者蹂躙』というスキルです。死者をゾンビ化して、自分の手駒として使役できるようです」
『大剣者』が、俺にだけ伝わるような音量で報告をあげた。
そしてジャスティスは、得意げに腕を突き上げているが、異変に気づいたようだ。
何も起きないのだ。
当然である。
奴が手駒として使えるゾンビは、俺が既に浄化して殲滅しているのだから。
「なんだ、なぜゾンビ供がやってこない!?」
ジャスティスは、苛立つように叫びを上げた。
広範囲にゾンビ化する効果は及ぼせても、そのゾンビが失われた事は感知できないようだ。
「な、……これは一体? どうなっているユーリシア!?」
「私に聞かれても、わかるわけないでしょ! それにしても、おかしいわね……」
ジャスティスとユーリシアは、ほぼ同時に俺を見た。
「お前何を!?」
「まさか!?」
「どうかしたのか?」
俺は、余裕の笑みを浮かべる。
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