98.囚われた魂を浄化
魔王ジャスティスと悪魔契約者ユーリシアの存在情報を確認し、その場所……王宮本殿に向かっていた俺たちだが、途中で現れた強化ゾンビに驚かされた。
その強化ゾンビの中には、『魔王』の『称号』を得て暴走した勇者ジャスティスに殺されたパーティーメンバーの魔法使いマルリッテと、タンクのタテゲルグと、ロングアタッカーのキューボウドがいたのだ。
そんな時、『小剣者』を通じて通信が入った。
「ヤマト殿、王都内の状況は思ったよりも酷い。全体をカバーするには、『河童族』の精鋭五十人だけでは時間がかかりそうじゃが、どうする?」
『トブシマー』一族のシーア族長からだった。
さてどうするか……?
いや迷う必要はないな、人命優先だ。
「わかりました。とにかくシーアさんは、王城から離れた場所を優先してください。王城の近くはゴーレムを放っていますが、クラウディアさん達にも行ってもらいます」
俺はそう答え、俺以外のメンバーには、王城を出て人命救助と敵の殲滅を行ってもらうことにした。
ジャスティスたちには、俺一人で向かう。
「先輩、私だけでも残った方が……」
ラッシュが、心配そうに訴えかけてきたが、
「大丈夫。『大剣者』もいるし」
俺はそう言って、ラッシュの肩を叩き送り出した。
さて、まずはこの強化ゾンビを倒してしまわないと。
レベル的に、俺を大きくは上回っているわけではない。
もともとは、マルリッテたちとはレベル差があったが、ここ数日でさらにレベルも上がったし、今は気にするような差ではない。
こんな奴らに時間をかけている暇ない。
「ソーラーレイ!」
俺をロックオンして襲いかかってくる強化ゾンビたちに、俺は『極上級』の光魔法『太陽光線』を発射し、次々に頭を撃ち抜いた。
ゾンビは、頭を潰してしまえば終わりだ。
——ビュウンッ
おおっと、危ない!
頭を撃ち抜いたのに、マルリッテが俺に魔法を放ってきた。
なんで?
おお、撃ち抜いた頭の部分が再生している。
ゾンビって、再生能力があったのか?
いや、ないはず。
強化ゾンビだからか。
やっかいな……。
そして頭を潰してもダメなのか?
「マスター、アナライズ機能で体構造のスキャンを試みました。
通常のゾンビと違い、『魔芯核』があります。
おそらく埋め込まれているのでしょう。
その作用と何らかのスキルで強化されているようです。
推論ですが、『魔芯核』の破壊で倒せる可能性があります」
なるほど。さすが『大剣者』、瞬時の分析は非常に助かる。
『魔芯核』は心臓の近くにあるから、その辺を撃ち抜けばいいだろう。
前面に出てきたタンクのタテゲルグに、ソーラーレイを発射する。
奴は持っている大盾を構えたが、俺のソーラーレイは、それを軽く貫通し、体の中心を撃ち抜いた。
…………。
動かなくなった。
よし、倒せたようだ。
俺は、次々にソーラレイを撃ち込む。
強化ゾンビたちは、俺のソーラーレイに再び成す術もなく瞬殺で倒された。
と思ったのだが……魔法使いマルリッテが、微妙に動いている。
何か言っている。
俺に言いたいことがあるのか?
少しだけ気になったので、『聴力強化』スキルを発動しながら、近づいてみる。
「……ヤマト……助けて……浄化して……体を燃やして……」
声にもならないような小さな呟き。
どういうことだ……?
「魂が……囚われている。また利用される……助けて」
更なる呟きを拾った。
もう声など全く出ていない気がするが、そんな言葉が聞こえた気がしたのだ。
魂が囚われているのか?
……確かにそうなのかもしれない。
普通ゾンビと言えば、魂の抜けた後の体だけが、本能的な欲求で動いているだけの存在。
だがこの強化ゾンビは違う。
ある程度の意思のようなものが感じられた。
そうであるならば、確かに魂を再利用される可能性もある。
浄化してほしい、体を燃やしてほしいと言っているが……待てよ、浄化といえば!
新しく発現した『光魔法——光の洗礼』が、対象を浄化できるし、アンデッドにも特効があった。
これを使えばいい!
俺はマルリッテに、『光の洗礼』をかけた。
凝縮された光の滴が弾け、光の粒子がシャワーのようにマルリッテを包み込む。
すると、体全体から黒い靄が滲み出てきて、弾け飛んだ。
そして、俺の目の前には、半透明になったマルリッテが浮かんでいる。
ゾンビ化していた死体は、そのまま地面に横たわっている。
囚われていた魂が抜け出て、それが一時的に見えるようになっているのかもしれない。
マルリッテは、俺に深く頭を下げて、そして拡散するように消えた。
多分、魂を解放できたということだろう。
人は死ぬと、その魂は体を抜けて、輪廻の輪に戻るとされているが、おそらく戻れたんじゃないだろうか。
俺は、残りの者たちにも、『光の洗礼』をかけて浄化した。
「マスター、波動情報等からの仮説ですが、マスターのスキルにより対象が高度に浄化されています。
あまりにも高い浄化力で、残留思念ですら浄化されている可能性があります。
その遺体は、聖なる波動を出す一歩手前と言ってもいいかもしれません。
故に、再度アンデッド化することはできないと思われます。
おそらくアンデッド化を促すスキルがあったとしても、再利用不可能でしょう」
『大剣者』が、そんな分析を報告してくれた。
なんか色々とすごい強力な効果のスキルだということがわかったが、大事なのは、再度アンデッドとして利用される事はないだろうというところだ。
「マスター、周辺情報の解析の結果、この襲撃で命を落とした者が自動的にアンデッドになっているようです。
アンデッド化を促す強力なスキルが、発動しているようです。
広範囲に発動していて強力なことから、おそらく『固有スキル』です。
悪魔などによる補助も、あるかもしれません。
今倒した強化ゾンビのように『魔芯核』を埋め込む事はされていないわけですが、死者が増えれば増えるほど、敵戦力が増えるという厳しい状況といえます。
そして死亡直後の者をアンデッド化していることから、魂が囚われている可能性もあります。
すべてのアンデッドに、『光の洗礼』を発動することが、新たな犠牲を減らし、敵戦力を削減する最善策です」
なるほど。確かにそうだな。
大元である術者……おそらく魔王ジャスティスだと思うが、そこを叩くのが最善とも思えるが、仮にジャスティスでなかった場合、どこかに隠れている悪魔のスキルだった場合、その間に犠牲が増えてしまう。
人命優先という観点からすれば、『大剣者』が言うように、アンデッドの戦力を駆逐して、再利用できなくした方がいい。
そうすれば、残りは『小悪魔』だけになる。
ただ問題は、どうやって多くのアンデッドに『光の洗礼』をかけるかだ。
今のところ、一人ずつというかたちでしか使えない感じだ。
一気に多くの者に、スキルを発動する方法は無いだろうか……。
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