97.戦場と化す王城
『ショウナイの街』に着いた。
北門に、残りの衛兵や守護たちが集まっている。
そういえば、アガサさんを追っていた国軍兵士や『ショウナイの街』の衛兵を無力化して、放置したままだった。
守護たちは、様子が気になるものの、魔境に踏み込めずにいるようだ。
俺は船を着陸させ、北門から中に入っていく。
何かを言ってくる兵士を問答無用で殴り倒し、守護の首根っこを掴み引きずりながら守護の屋敷に走った。
やっている事は、無法者と変わらないが、そんなことを気にしてる状態ではないし、そんなことを気にする相手でもない。
守護は、俺に引きずられながら何かを叫んでいるが、そんなことは知らん。
転移門の場所に着き、守護に威圧しながら命じて、稼働させた。
おそらく機能としては単純なものだろうが、使ったことがないので、守護にやらせるのが手っ取り早いのだ。
役目を終えた後に、「変なことをしたら、後で殺す」と軽く脅して、鳩尾に拳を入れ悶絶させた。
『聖者』の『称号』を得た者には、ふさわしくない脅し文句かもしれないが、こういう奴には脅しが一番効くだろう。
さっき北門を出て少し行ったところに転がしておいた国軍兵士とこの街の衛兵、そして街に残っていた衛兵は、クラウディアさんとサクラさんの指揮の下、『河童族』の戦士たちが縄でぐるぐる巻きにして、連れて来ていた。
『河童族』の戦士たちは、常備品として拘束用の縄を装備しているようだ。
かなり使い勝手が良さそうなので、少しだけ訊いたら、『魔鬼瓜』という魔境で変質した巨大なキュウリの蔓の巻きひげの部分を利用しているのだそうだ。
魔力を通して投げつけると、対象に巻きついて拘束してしまうらしい。
『巻きひげ縄』という名前だそうだ。
かなり便利なので、今度分けてもらおうと思う。
というか、その巨大なキュウリが生えているところに行ってみたい。
ちなみにその巨大キュウリは、食べてもあまり美味しくないので、キュウリ好きの『河童族』でも食べないそうだ。
まぁむしろ、キュウリ好きだからこそ、食べないのかもしれないが。
味にうるさいわけだから。
拘束した者たちを、この転移門の前にまとめて置いておく。
そして俺たちは、転移門に飛び込む——
◇
王城側の転移門を出て建物の外に出ると、混乱の最中だった。
王城内でもいたるところで、戦いが展開されている。
すぐに行動に移りたいが、一つだけ懸念材料がある。
この転移門を使われて、俺が不在の『ヤマダイ国』を攻められたら大変だ。
まぁこんな混乱の中で、王国軍が攻めていくとは考えにくいが、念には念を入れたほうがいい。
俺は、一旦転移門がある建物内に戻り、『大剣者』を握った。そして一閃した。
転移門を横薙ぎに、両断したのだ。
完全に破壊した。
これで、『ショウナイの街』に転移することはできない。
それは、俺たちも転移で戻ることができないことを意味しているが、全く問題ない。
俺が、『献身』スキルを発動すれば、修復することができるからだ。
俺が建物の中に戻って、いきなり転移門を破壊したので、皆驚いていたが、クラウディアさんを始めとする仲間たちは、俺のスキルを知っているので、意図を察したらしく、頷いていた。
デワサザーン伯爵やシーア族長たちは、俺のスキルによる修復の事はまだ知らないわけだが、『ヤマダイ国』への襲撃を防ぐ為に、破壊したと思っているようだ。
少しの間の後に、軽く頷いていた。
「ヤマト殿、私はアガサとともにモーリス侯爵の下に行って、状況を確認します」
デワサザーン伯爵がそう言ってくれたので、俺は「お願いします」と言って、『小剣者』を一つ渡した。
これで随時通信ができるので、情報を伝え合える。
そして残りの人員は……人々の救助と敵の各個撃破だ。
俺は、『大剣者』の『亜空間収納』から飛行船『天船』を出した。
実は、『ショウナイの街』に入る時に、収納して置いたのだ。
もちろんシーア族長の許可を得て。
族長は最初驚いていたが、「いい作戦だ」と呟いていた。
「族長にお願いします。サポート部隊の十人と、『河童族』の精鋭戦士五十名を連れて、上空から要所に戦士たちを降ろしてください。。
『河童族』の皆さんは、降りた場所周辺の敵の殲滅と逃げ遅れている人の保護をお願いします。
サポート部隊の人たちは、王都の地理に詳しいでしょうから、飛行経路の提案と、回復薬などによる支援をお願いします。
この王城周辺は、私の持っているゴーレムで対応するので、ここから離れた場所を優先してください」
俺はそんな指示を出し、シーア族長にも『小剣者』を一つ渡した。
「了解した。では早速参る!」
族長の返事と共に、皆素早く行動し、飛行船は発進した。
俺は、四体の『クマゴロウ』とそれに内蔵されている五体の狼ユニットを王城近郊の敵を倒すために解き放った。
これらの制御は、『大剣者』に任せる。
数が多いが、『大剣者』なら全く問題ない。
そして俺たちは、敵の大元を叩く。
『大剣者』のアナライズ機能で、捉えているのだ。
敵の大元……それは悪魔契約者ユーリシア、そして魔王ジャスティスだ。
二人の波動情報を捉えている。
一度認識した人の波動情報は、すぐに照合することができるのだ。
王宮本殿にいるようだ。
今回は逃さない、叩き潰す、俺は残りのメンバーとともに動き出す。
俺に同行するのは……ラッシュ、クラウディアさん、イリーナ、フランソワ、『河童族』の戦士サクラさん、勇者ミーアさん、その従者レオナさん、『神託の巫女』ナナリーさん、神殿騎士サザリーさんの計九人だ。
途中襲ってくる魔物や、『小悪魔』は力業で薙ぎ倒しながら進む。
アナライズによれば、空を飛んでいる羽の生えた小鬼は『小悪魔インプ』で、地上で暴れている小鬼は『小悪魔ジャキ』というようだ。
『勇者選定機構』での講習で存在は知っていたが、実物を見るのは初めてだ。
それから魔物と思っているものは、実際はゾンビ化した魔物だった。
王宮本殿が見えてきたところで、驚くべき敵が現れた。
それは見知った顔だったからだ。
俺と同じパーティーにいた魔法使いマルリッテと、第二位パーティーのタンクのタテゲルグと、ロングアタッカーのキューボウドがいるのだ。
『アナライズ』によれば、奴らはゾンビとなっていた。
しかも何やら強化されたゾンビらしい。
一緒に現れている兵士のゾンビは、おそらくマルリッテたちが殺されたときに、一緒に殺された周りにいた兵士だろう。
この者たちも、強化されたゾンビだ。
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