96.命がけの救援要請
『大剣者』が突然、警鐘を鳴らした。
『ショウナイの街』の北門から、女性兵士が一人こちらに向かってくるというのだ。
どういうことなのか?
いつ王国軍が攻めてきてもおかしくないので、北門付近に『クマゴロウ』内蔵の狼ユニットを放って、哨戒させていたのだ。
『大剣者』がコントロールしているから、すぐに情報を拾ったわけである。
剣が突然話し出したので、初めて見る人は驚いていたが、そんなことを気にしている場合ではない。
「一人というのは、どういうことだ?」
「追われているようです。兵士たちが、追いかけてきています」
おっと、それはただごとではない。
直接出向いて確認するしかないな。
でもその前に、追われている女性兵士を守らないと。
「『大剣者』、狼ユニットにその女性兵士を守らせろ。追って来ている兵士たちを、殺さないように無力化できるな?」
「もちろん可能です」
俺は、『大剣者』に防衛行動をさせつつ、『オートホース』で急行することにした。
みんなも同行すると言ってきたが、『オートホース』には三人までしか乗れないし、ここで待機してもらうことにした。
『オートホース』で飛行し、北門付近につくと、追いかけてきた兵士十数名、『ショウナイの街』の衛兵五名が狼ユニット五体によって無力化され、転がっていた。
死んでないよなぁ……?
状況がわからない以上、無闇に殺してしまうことはできない。
まぁ『大剣者』がコントロールしてるんだから、大丈夫だろう。
改めて確認すると、追われていた女性兵士には見覚えがある。
前に勇者ジャスティスとともにやって来たエドガー将軍の傍にいた女性だ。
『鑑定』スキルを持っていて、俺のステータスを見た兵士である。
全身傷だらけになっているので、『光魔法——光の癒し手』で治癒させる。
「あぁ……ヤマト様、私は王国軍第二大隊所属の情報官アガサと申します。お願いがあってまいりました!」
回復して、意識ははっきりしているようだが、かなり慌てている。
まだ息も荒い。
「お願いと言うと?」
「今、王都に魔物や悪魔が襲来しています。王都の人々が危ないのです! 何卒お助けください」
「魔物や悪魔!? またユーリシアが? 魔王となったジャスティスも生きていて、攻めて来たのか?」
「我々は、王城から離れ王都内の人々の避難誘導を中心に行っていました。
その中では、悪魔契約者ユーリシアや魔王ジャスティスの存在は、確認できていません。ただおそらく、間違いないかと……」
「王国軍は、対応できているのか?」
「いえ、満足な対応を取れていません。
我々第二大隊と志を同じくする者達で、独自に人々の避難誘導をしているのです。
私は、その全体を指揮している元大将軍モーリス侯爵閣下の命を受け、ヤマト様に救援要請に来たのです。
王国に対し思うところはあると思いますが、何卒、人々のためにお助けください!」
アガサさんは、涙を浮かべながら必死に訴えてくる。
「わかりました。もともと悪魔や魔王は倒すつもりでいました。
王国を助けるつもりはありませんが、人々は助けたいと思っています。
一旦仲間のところに戻って、すぐに救援に向かいます」
「ありがとうございます」
アガサさんは、俺の返事に安堵したようで、目から大粒の涙をこぼした。
俺は、アガサさんを『オートホース』に乗せ、急いで『魔境台地』に戻った。
◇
「デワサザーン伯爵閣下、こちらにいらしたのですか?」
『魔境台地』に戻ると、出迎えたデワサザーン伯爵を見て、アガサさんが驚きの声を上げた。
そして、さっき俺に話してくれた状況を説明してくれた。
「あぁ……我々の予想よりも早かったか。
この『北端魔境』と王都、どちらかが狙われる可能性を考えていたが、王都だったか……」
デワサザーン伯爵は、唇をかみしめる。
伯爵によれば、元大将軍で、人望も厚いモーリス侯爵が、『北端魔境』に悪魔が出現した知らせを聞いて以降、対策を立て独自に動き出していたらしい。
その中で、デワサザーン伯爵に対しても、情報提供があったそうだ。
先日、伝書鳩の魔法道具でもたらされた王国側の考えも、モーリス侯爵からの情報提供だったらしい。
「伯爵、一刻の猶予もありません。我々は、『ショウナイの街』の転移門を使って、王都に向かいます!」
俺はそう言って、仲間たちに目配せをする。
皆、当然ながらやる気だ。
そのためにレベル上げもしていたのだ。
まぁ本音を言えば、もう少しレベルを高めてからの方が良かったが、泣き言を言ってもしょうがない。
「ヤマト殿、私も同行させて貰います」
伯爵の申し出に、黙って頷く。
「ヤマト様、状況から察するに、人手が必要と思います。我が里の兵士たちを同行させましょう」
サクラさんが、そんな提案をしてくれた。
それは助かる。
『河童族』の兵士たちは、国軍の一般兵よりもはるかに強いだろう。
「ありがとうございます。お言葉に甘えます」
「何をおっしゃいますか、皆ヤマト様にお仕えする身になりました。喜んで馳せ参じましょう」
「では『天船』を使って、『河童族』の兵士を迎えに行くのが良いじゃろう。
その後、『ショウナイの街』まで飛べば良い」
『トブシマー』一族のシーア族長が、そう提案してくれたので、早速船に乗り込んだ。
元『ショウナイの街』の住人で、『ヤマダイ国』の国民になってくれた人たちは、留守番をしてもらうことにした。
守備隊のラッカラン隊長に任せる。
万が一にも、同時並行でここが狙われる事はないと思うが、『小剣者』を渡してあるので、何かあったらすぐ連絡をもらえる。
いざと言う時に、時間を稼ぐための作戦も指示してあるから、大丈夫だろう。
少しして、『河童族』の里に着いた。
飛行船を使ったから、あっという間だ。
俺は、ドキア族長に事情を説明し、精鋭戦士五十名を選出してもらった。
そして、飛行船に乗せ、『ショウナイの街』の転移門を目指す——
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