89.序列二位の美女戦士
「それから、『カッパル』での騎乗訓練のお陰で、里の者には『弓馬術』というスキルを持っている者も結構おります。
このスキルも『通常スキル』ですが、珍しい部類のスキルではないでしょうか。
我らは、種族として弱体化していたせいで、魔力が垂れ流しとなり、魔法スキルを発現する者は、ほとんどおりませんでした。
その代わりに鍛えているせいか、魔法系以外の珍しいスキルを発現する者は、結構おるのですよ」
族長ドキアさんが、追加でそんなことも教えてくれた。
確かに『弓馬術』というスキルは、聞いたことがない。
これはおそらく、騎乗して戦う騎士の基本武装が、剣や槍だからだろう。
足場の悪い騎乗状態で弓を使う者は、必然的に少なくなるからだ。
王国の騎士団の中でも、弓をメインで使う騎士は少なかったと思う。
「すごいですね。騎乗しながら弓を使う人が多いのですか?」
「そうですじゃ。魔物を狩る時など、そのほうが便利ですからのう。
そのために普段から、『カッパル』の上で弓を扱う訓練をしております。
そのせいもあって、『弓馬術』が発現しやすいのでしょう。
『弓馬術』には、『流鏑馬』という上位スキルがあります。
今の我らの中には、そのスキルを所持している者はいないのですが、過去には何人かおりましてのう。
かなり強力な攻撃スキルだと伝わっておるのですじゃ。
レアもしくは超レアなスキルでしょうのう」
なるほど。
『弓馬術』というのは、おそらく馬上で弓を使う攻撃に強化補正がかかるスキルだと思うが、その上位スキルとは、一体どういう能力なのだろう?
「それは何か、特別なことができる能力なんですか?」
「そのスキルを身につければ、馬の上で自由に弓を扱うだけでなく、滑走するエネルギーを矢に込めることができると言われています。
矢の破壊力が激増する言われておりますのじゃ。
また命中率が格段に上昇するとも言われていて、一説には、定めた敵を矢が自由に動きながら追跡して、必ず命中するとも言われております」
それは、めちゃめちゃ凄そうだ。
矢の攻撃力自体が増大するのと、敵を追尾して必ず命中させるなんて、凄すぎる!
「凄いですね。そんなスキルを持っていた人が、過去にはいたわけなんですね」
「ええ、そうです。
ですが、近々また歴史に残る逸材が現れるかもしれませんのじゃ」
族長はそう言うと、ニヤッと笑った。
「と言うと……?」
「昨日、ヤマト様を問いただした女性が居たと思いますが、彼女は我ら『河童族』の武装隊のリーダーで、ワシに次ぐ強者なのですじゃ。
『河童族』選りすぐりの戦士にのみ与えられる『河童武士』の称号も与えられております。
ワシと同じ『絶対体幹』スキルも持っておりますし、『弓馬術』スキルも持っております。
あの子なら、遠からず『流鏑馬』を取得するでしょう」
最初に俺を誰何してきたあの色っぽい女性か……。
族長に次ぐナンバー2の強さなのか。
というか、族長、ヨレヨレのおじさんだったけど、実力ナンバー1なのか。
なんか、達人の雰囲気があるとは思ったけど。
「そうなんですね。まだ若いように見えましたが、彼女が実力ナンバー2なんですか?」
「そうですじゃ。まだ若いですが、我らの希望の星でもあります。
生真面目で融通がきかないのが、玉に傷ですが、はっはっは。
あの者は、名をサクラと申します。ヤマト様の従者に加えてはいただけませぬか?」
「え、でもこの里の守り手なのではありませんか?」
「まだ他にも『河童武士』はおります。あと三名ほどおりますので、大丈夫です。それに『河童武士』の資格は得ていなくても、強い者たちは多くおりますので」
族長はそう言って、サクラさんを呼んだ。
事前に話をしてあったようで、
「ヤマト様、昨日は大変失礼をいたしました。ぜひ私も従者にお加えください。必ずお役に立ってみせます!」
そう言って、俺に跪いた。
俺の従者になる必要はないんだが……
そんなところに、女子メンバーが起きてきた。
「ヤマト君、いいじゃない。頼もしいし。
私たちのパーティーに入ってもらってもいいだろうし、私たちが留守してる時の『魔境台地』を守ってもらってもいいと思う」
クラウディアさんはそう言って、サクラさんに微笑みかけた。
サクラさんは、はにかんだ感じで頷いた。
「サクラさん、私はラッシュといいます。よろしくお願いします。一緒に先輩を、盛り立ていきましょう!」
ラッシュは、どこまでも明るい。
「私はイリーナ。うちらに弓を使うメンバーがいないから、ちょうどいいんじゃないかと思う。よろしく」
イリーナも軽いノリで、挨拶をしてくれている。
親しみを込めて、わざとそうしてくれているのだろう。
「すごく色っぽくて、素敵なお姉さまって感じね。なんとなく……私の目指してるポジションを取られた気がするけど……まぁそれはいいわ。フランソワです。よろしくお願いします」
フランソワは、よくわからないことを言っているが、最後には笑みを浮かべている。
みんな歓迎してくれているようだ。
この流れで、俺が断るわけにもいかない。
「じゃぁ、サクラさん、これからよろしくお願いします」
俺のその言葉に、彼女は一瞬、頬を緩めたがすぐに真面目な顔になって、頭を下げた。
ということで、サクラさんが合流することになった。
この後俺たちは、サクラさんのお母さんとおばあさんから挨拶を受けた。
サクラさんのお母さんは、昨日ラッシュに蜂蜜の壺を渡してくれていた人だった。
そしておばあさんは、なんと族長の妹さんだった。
サクラさんのお父さんとおじさんは、亡くなっているそうで、三人で暮らしていたとのことだ。
サクラさんを里から連れ出して大丈夫なのかと確認したが、良い社会勉強になるし、大丈夫だと言われた。
そして何故か、末永くよろしくお願いしますと言われてしまった。
なんとなく娘を嫁に出すような感じで、少し涙ぐんでいたのだが……まさか、そういうことでは……いや、ないな、そんなはずはない。
そして『河童族』の戦士の中の強者である『河童武士』と名乗ることが許されている残り三人のうちの一人が、サクラさんのおばあさんだった。
族長とその妹さんのおばあさんは、『河童武士』なのである。
『河童族』の中での強さの序列一位が族長で、二位がおばあさんだったらしい。
サクラさんが最近急速に力をつけ、おばあさんが序列二位を譲ったのだそうだ。
どのぐらい強いのか、一度戦ってみたい気もするが……まぁ落ち着いてからでいいだろう。
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