88.『河童族』のデザートに、みんな爆食い。そしてラッシュは、蜂蜜でふにゃふにゃ
『河童族』の里の広場での宴が少し落ち着いた頃、新たなデザートが出てきた。
柔らかいパンのようなものだ。
米も小麦も作っていないはずなので、材料を尋ねてみたら、主に片栗粉を使っているとのことだ。
バナナ、卵、牛乳も使っているそうだ。
バナナは、この魔境のある特別なバナナで、『マナバナナ』という霊果らしい。
普通バナナは、緑で完熟すると黄色になるが、『マナバナナ』はピンク色なのだそうだ。
霊果だけあって、ほぼ一年中、実をつけているらしい。
もっともこれは、『マナバナナ』が持っている特質なのか、それともこの『魔境』の特別な条件が影響しているのかわからないが。
『マナバナナ』は、スタミナ回復効果があると言われているそうで、慢性疲労、筋肉疲労にも良いとのことだ。
魔法薬や霊薬の素材にもなり、特に皮には様々な用途があるらしい。
もちろん、普通に流通する事は無い希少な果実である。
卵と牛乳は、この里のものだそうだ。
さっきはよく確認できなかったが、『カッパル』たちの厩舎の奥のほうに、鶏と牛を飼っていたようだ。
その鶏は特別な鶏で、『大鶏』と言って通常の鶏の三倍位の大きさがあり、卵も三倍の大きさがあるらしい。
素晴らしい鶏だ!
何羽か分けてもらいたいものだ。
後でお願いしてみよう。
牛は、『豹牛』という珍しい牛で、黄色ベースの豹柄模様なのだそうだ。
『河童族』では昔から飼育しているらしいが、『カントール王国』では見たことがない。
『大鶏』もだ。
そんな珍しい素材満載で作られているこの柔らかい感じのパンは、名前を『カッパンケーキ』というそうだ。
材料を混ぜた液状のものを、鉄板の上で焼いて作るのだそうだ。
丸い平べったい形で、二枚重ねが基本らしい。
その上に、たっぷりの蜂蜜がかけてある。
「……ん、……この匂いは……蜂蜜!?」
ぐっすり寝ていたはずのラッシュが、突然飛び起きた。
「蜂蜜食べたいです!」
ラッシュは、叫ぶように言うと、『カッパンケーキ』を一気に口に放り込んだ。
そして、お皿に付いている蜂蜜を舐めまくっている。
ラッシュさん……それはお行儀が悪いのでは?
どうやらラッシュは、蜂蜜が大好きなようだ。
蜂蜜の匂いだけで目覚めるなんて、凄過ぎる。
そして蜂蜜を食べたら、完全に酔いが覚めたようで、めっちゃ元気一杯になっている。
この子もしかして……戦いの前とかに蜂蜜を食べたら、めっちゃ強くなったりするんじゃないだろうか……?
まぁそれは考えすぎか。
ラッシュのそんな様子を見ていた『河童族』の女性が、蜂蜜の壺をラッシュに渡してくれた。
ラッシュは、目を輝かせ、お礼もそこそこに、壺の蜂蜜をスプーンですくいまくっている。
口一杯に頬張り、顔がふにゃふにゃになっているけど。
こんな顔のラッシュを見るのは、初めてだ。
これは本当に、大好物に違いない。
それにしても、貴重な蜂蜜をよかったんだろうか?
族長に、貴重な蜂蜜をもらってしまって申し訳ないとお詫びしたが、蜂蜜が取れる場所がいくつかあるから、気にしなくて大丈夫と言ってもらえた。
他の女子たちも、甘いものは別腹なようで、すごい勢いで食べている。
酔いも覚めてくれると良いのだが……。
俺も食べたが、確かに美味い。
こんなに柔らかくて、ふわふわしたパンは食べたことがない。
蜂蜜の味も抜群で、みんなが一心不乱に食べちゃているのも、納得だ。
ラッシュも含めみんなお替りしている。
もちろん俺もお替りしたが。
◇
翌朝、俺たちは『河童族』の里で目を覚ました。
昨日は夕方近くから宴会が始まったわけだが、みんなそのまま酔いつぶれて泊まることになってしまったのだ。
本当は帰ろうと思っていたのだが、俺もまぁいいかと思い泊めてもらった。
『魔境台地』に残っている人たちには、簡単なことの成り行きと泊まる旨の連絡を入れてある。
守備隊隊長のラッカランさんに、『小剣者』を一つ渡してあったので、通信機能を使って連絡を入れたのだ。
昨日は遅くまで『河童族』の人たちと話をしたので、わずか一晩でだいぶ打ち解けた感じだ。
みんな俺を慕ってくれているようで嬉しい。
特に子供たちが、懐いてくれる感じがたまらない。
口数の少ない子が多いのだが、黙って隣にきたり、膝の上に乗ったりされると、可愛すぎて、たまらないものがあるのだ。
『河童族』の人たちは、朝全員でトレーニングをするようで、広場で体操のようなことを始めている。
「ヤマト様、おはようございます」
起きた俺に気づいて、族長のドキアさんが近づいて来た。
「おはようございます。皆さん、朝早いんですね」
「朝は、みんなで集まって、修練をするのが日課となっております。
それに、昨日ヤマト様のお陰で、弱体化というか、体全体の汚れのようなものが無くなって、皆スッキリしているのですじゃ。
何か力が漲ると、みんな申しております」
そう言ってる族長も、元気一杯という感じだ。
見た目こそ変わっていないが、纏っているオーラが元気ハツラツという感じなのだ。
そういえば、ちょっと気になっていたことがある。
「族長、昨日初めてお会いした時に、『カッパル』の上に座布団を置いて正座して、すごい速度で移動してたと思うんですが、あれは何かスキルを使っていらっしゃたんですか?」
「ああ、あれですか。あれはスキルも使っておりますが、訓練でもある程度できるのです。この里の者は、結構できるのですじゃ。
騎乗訓練で、手放しでの訓練をしておりますから。
騎乗したまま矢をつがえたり、槍を使ったりできなければ、一人前とは言えんのですじゃ」
「それじゃあ、スキルを使っている族長ほどでは無いにしても、あんな感じのことができる人が里には、何人もいるのですか?」
「そうです。ただワシと同様のスキルを持っている者も、何人かおります。
『通常スキル』なのですが、『絶対体幹』というスキルで、レアスキルではないかと思います。
どんなに激しく揺れる状況でも、ある程度体勢を保つことができるのですじゃ」
おお、そんなスキルがあるのか。
聞いたことがないから、族長の言う通りレアスキルだと思う。
それを所持している人が、何人もいるのか。
やはり取得しやすいような訓練をしていると、スキルも発現しやすくなるということなのか?
俺たちも同じ訓練をすれば、そんなスキルが発現するのかな?
落ち着いたら、訓練に参加させてもらうかな……。
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