84.河童族を救える新たなスキル
俺は、『河童族』の族長ドキアさんと打ち解けて、握手を交わした。
その瞬間、パチンとはじけるような音とともに、全身を静電気のようなものが駆け巡った。
そして次の瞬間、頭の中に声が響いた——
————愛し子よ、あなたにスキルを授けましょう。
この感じ、この声……テラス様だ。
「テラス様」
俺がそう声を漏らしたので、周りにいる仲間や『河童族』の人たちが驚いて、俺を見つめている。
だが俺は微動だにできない。
テラス様の啓示を受けて、集中した状態なのだ。
そんな状態でも、周りの状況が、なんとなくわかる。
みんなの反応が、情報として脳に入ってくるのだ。
————あなたは、『河童族の友』の『称号』を得ました。
————『河童族』に有用なスキルを授けます。『河童族』を救いなさい。そして、力を合わせるのです。
「はい、分りました。私で助けになるなら、精一杯努力します」
————それから、私の啓示を受けし愛し子が、まもなくあなたの下に到着するでしょう。力を合わせるのです。
「はい、分りました。その人はいったい?」
————それはお楽しみです。
この声が消えるとともに、テラス様の気配も消えた。
最後は少しイタズラっぽい感じに聞こえた。
神様も茶目っ気とかがあるのだろうか?
まぁそれはいいが、啓示は終わったようだ。
周囲を見回すと、みんな俺の言葉を待つように注視している。
そして、待ち切れないといった感じで『河童族』の族長が、カッパルの上で立ち上がった。
淡々とした感じから打って変わって、感情を露わにする感じで言葉を発した。
「ヤマト殿、今、テラス様の神託が降りたのですな?
ワシにも、少しだけお告げがありました。
『光の聖者』が『河童族』を救うと。
『光の聖者』とは、ヤマト殿ですな?」
族長が、神妙な顔だ。
テラス様からの短い啓示もあったようだ。
それもあってか、俺の呼び方が“ヤマト殿”に変わっている。
「はい、私は『光の聖者』の『称号』をいただいています。
そして今、テラス様から啓示がありました。
『河童族』の皆さんに役立つスキルを授けてもらったようです。そして皆さんを救うように言われました」
「おお、なんと!
ヤマト殿は、紛れもなく我らの救い主なのですな。
そしてテラス様は、我らを救ってくださるのですな……」
族長はそう言うと、体を震わせ涙を流した。
「……うう、我ら『河童族』は、種族として終わりかけていたのです。
いつの頃からか、魔力が漏れ出す体質となり、魔素が濃い魔物の領域でしか住めなくなったのです。
代を重ねる毎に、その体質は強くなり、今では、魔法系のスキルを発現する者はほとんどいなくなりました。
その代わりに、体を鍛え、物理系の能力はかなり高まったのですがのう。
古の言い伝えで、種族としての危機を救う『救いの主』が現れると予言されていたのですじゃ。
我らの濁ってしまった体を浄化し、失われた能力を呼び覚ます『救いの主』が現れると。
それがヤマト殿であるのは、もはや疑いようがありません」
族長は、神妙な顔でそう言った。
族長の話からすれば、今得たスキルによって、弱体化している『河童族』を救うことができるのかもしれない。
「族長、少しお時間をいただけますか? 今取得したスキルをセルフステータスで確認してみます」
俺はそう言って、ステータスを確認した。
それによると取得したのは、『通常スキル』で、『光魔法——光の洗礼』だった。
これも『光魔法——太陽光線』『光魔法——光の癒し手』と同様に、『究極級』の魔法スキルだった。
詳細表示によれば、『光を凝縮した光流で対象を浄化する』とある。
『精神波動を下げるマイナスの感情や精神の汚れを浄化する。
また、精神に障害をもたらす魔法等の効果を打ち消すことができる。
アンデッドに対しては特効がある』とも説明されている。
『河童族』に特別な効果があるとは表示されていないが、このスキルを使うと、彼らの弱体化を救うことができるのだろうか?
俺は、このスキルについて、族長たちに説明した。
本来なら、スキル情報は秘匿するべきだが、ここは話すべきと考えたのだ。
「おお、そうですか。『光の洗礼』というのですか。
それをワシに使ってみていただけませんか?
おそらくその浄化の力とやらで、弱体化した我らの体質を元に戻すことができるのだと思います。
何卒、お願いしますのじゃ」
族長が、地面にひれ伏した。
「やめてください族長、私にできる事は何でもやりますので、どうかお立ちください」
俺は、すぐに族長を立たせた。
「ありがとうございます。遠慮は要りません。どうぞ私に、そのスキルを使ってみてください」
先ほどまでは、淡々と冷静な、感情の起伏を見せない長老という感じの族長だったが、今はかなりの興奮状態だ。
「わかりました。それでは、早速スキルを発動してみます」
俺は、族長の希望に応えて、スキルを発動する。
「光の洗礼」
発動真言と共に、対象を、視線で族長に指定する。
すると、族長の頭上に光の粒子が収束し、大きな水滴のような形になった。
そして、そのまま族長の頭に流れ落ちた。
頭から、まるで水をかぶったように全身に光の粒子が流れる。
族長自身も、うっすらと輝いているようだ。
……数秒して、元の状態に戻った。
先ほどまでは、ヨレヨレな感じだった族長が、エネルギーに満ち溢れたような、若々しいオーラを出している。
白髪白髭のままだし、若返っているわけではないが、エネルギーに満ち溢れている感じなのだ。
「おお、力が漲る。そして魔力が、漏れ出ない!
素晴らしい! これが我らの本当の力なのか!?」
族長が、感動に打ち震えている。
どうやら、うまくいったようだ。
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