82.魔境探索で新たな種族と遭遇
前半は、三人称視点です。
「シーア様、私も同行させてもらえないだろうか。一度『北端魔境』に行き、『光の聖者』ヤマト殿と会っておきたいのです」
教会から来た二人が同行を許された状況に追随し、デワサザーン伯爵も同行を願い出た。
一つの領を預かる者として、これから起こるであろうと動乱に備えるためにも、会っておきたいと強く思っていたのである。
また、一人の娘の父親としても、会っておきたかったのだ。
「いいでしょう」
「ありがとうございます。それから、実はミーアとどうしても行動を共にしたいと言っている者たちがいるのです」
「ほう、ミーアにそんな者たちが……」
「誰ですか?」
「君が、王都で救ったサポート部隊の人たちだよ。十人ともそう希望している。
それと君のパーティーのサポート部隊で、君について来た獅子亜人のレオナ、彼女も強く希望しているよ。
実のところを言うと、その者たちが君の動向をしつこく聞いてきて、なんとしてもついて行くと言って、少し困っていたのだよ」
「ほほう、ミーアに対して、そこまで忠誠を持つ者たちがいたのかい」
「でも、みんなはここで生活の基盤を作ったほうがいいと思うんだけど」
ミーアは、少し複雑な表情になる。
「どうだね、呼んであるから、話をしてみては?」
「そうなんですか!? じゃぁ話をしてみます」
「それがいい。ここに呼ぼう」
伯爵はそう言うと、控えていた執事に合図を送った。
少しして、レオナと、助けた十人のサポート部隊たちが入って来た。
「ミーア! もう、酷いよ! 私、どこまでもついて行くって言ったよね!?」
獅子亜人のレオナが、ほっぺたを膨らます。
「ごめんごめん、でもこれから危険な戦いに入るだろうから……」
「何を今更! サポート部隊だって充分危険だったよ。とにかく私は一緒に行くから!」
一方的に断言するレオナに、ミーアは複雑な笑みで返した。
もちろん彼女の申し出は嬉しいのだが、彼女の身に危険が及ぶことを心配しているのだ。
「ミーア様、我々も助けていただいたご恩を返したいのです!
後方支援でしか力になれないと思いますが、救われた命、あなたのために使わせてください!」
今度は、サポート部隊の隊長ダルカスが申し出た。
「でも皆さんは、ここで生活基盤を整えて、王都にいる家族を迎えに行くんじゃ?」
「はい、もちろんそうしたいと思っています。
ですが、そんな状況ではなくなっているのは、わかっています。
ミーア様が魔王や悪魔と対峙するなら、私たちはお供します。
それが、王都にいる家族の為にもなると思っています。どうか従者として、同行させてください!」
ダルカスがそう言って跪くと、他の者も一斉に跪いた。
「え、そんな……」
突然皆に跪かれて、戸惑うミーア。
「ミーア、いいじゃないか。
この人たちの決意は本物だ。
それに、これからどんな状況になるかわからない。
後方支援を担当する者も必要になるじゃろ」
族長のシーアは、ニヤリと笑みを浮かべてミーアを見る。
「おばあちゃん……」
「ありがとうございます!」
「「「ありがとうございます」」」
シーアの言葉を受けて、ミーアの返事を待たずに、レオナとダルカスたちは、感謝の言葉を告げる。
ミーアは、しょうがないとばかりに肩をすくめて、頷くしかなかったのだ。
「話はまとまったな。それでは、早速『北端魔境』へ向かうことにしよう。よろしいですかな、シーア様?」
伯爵の言葉にシーアが頷き、皆慌ただしく出港の準備を始めるのであった。
◇
伝書鳩の魔法道具より知らせが届いた日の翌日、俺たちはレベル上げに励んでいる。
『魔境台地』の奥側、北側にある山に入っているのだ。
麓から上を目指して登って移動しているが、午前中の行程では、この近辺の森に現れるようなレベル10から30程度の魔物しか現れなかった。
だが午後になって、ある程度標高が高くなったあたりから、レベルの高い魔物が出現するようになった。
レベル40を超える魔物が、コンスタントに出るようになったのだ。
ほとんどがクマの魔物だが、連携を高めるための訓練にもちょうどいい魔物である。
結構タフだから、いろんなパターンの攻撃を試しながら倒しているのである。
実は、レベルが高い魔物といっても、俺たちは結構余裕を持ちながら、戦っているのだ。
本気で戦うと、ラッシュがすぐ倒してしまうのである。
ラッシュは、俺たちの中では一番レベルが低かったわけだが、『小剣者』と『笹穂剣 トンボ』という二つの切れ味抜群の短剣を手に入れ、『軌道予測』というスキルも獲得したために、圧倒的な強さを誇っているのだ。
元のレベルが低かった分、ラッシュはすごい勢いでレベルを上げている。
ラッシュが一人で倒したとしても、パーティーである俺たち全員に経験値が入るが、みんなで連携して戦う訓練にはならない。
そこで、ラッシュには戦い方に制限をつけさせてもらったのだ。
使う武器を、もともと使っていた市販の短剣に変えたりという制限を加えて、戦ってもらっているのである。
ラッシュは、順調にレベルが上がっているわけだが、もともとレベルが高いイリーナやフランソワ、それに近いレベルの俺のレベルの上りは、決して早いとは言えない。
それを考えると、本当は、もう少し高いレベルの魔物に遭遇したいが、贅沢は言えない。
そんなことを考えていると、突然、『大剣者』が俺の腰ベルトから離れて宙に浮いた。
「マスター、急速接近して来る者たちがいます。
人型の種族ですが……もうすぐ遭遇します!」
『大剣者』が警鐘を発した。
俺たちは、即座に臨戦態勢を取る。
すぐに、その集団は現れた。
見た目は人族、また妖精族のような感じだ。
今回も妖精族の『ノッカー』かと思ったが、違う系統のようだ。
『ノッカー』は、比較的小柄な人が多かったが、この人たちは、スラッと背の高い者が多い。
そして、肌の色がうっすら緑っぽい。
『大剣者』の『アナライズ』を使って、直接確認する。
おお、『種族名』が『河童族』となっている!
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