81.見習い巫女に降りていた神託
三人称視点です。
デワサザーン領、領都デワサザーンの領城
周囲を騒然とさせながら、飛行艇『天船』が領城の領軍訓練用の広場に着陸した。
兵士たちは空飛ぶ船の出現に動揺しつつも、着陸した飛行艇を一斉に取り囲んだ。
そこに駆けつけたデワサザーン伯爵が、警戒を解くように指示を出す。
「これはこれは、シーア様、お久しぶりです」
「伯爵、突然の来訪、非礼をお詫びする」
「いえいえ、そんな事を言ってる場合ではありませんから、気になさらないでください」
本来ならば、領主と領内の島の住民の代表という立場に隔たりがある二人だが、同格もしくはシーアの方が上のような接し方であった。
「まさか、伝え聞く『天船』を、直接目にできるとは思いませんでした。それにしても、美しい……」
伯爵は、着陸した帆船をまじまじと見て、感想を漏らす。
「時が来たでのう、封印を解いたのじゃよ」
「では、シーア様たちは、歴史の表舞台に立たれるのですか?」
「いや、今のところそれはない。だが、動く!
我らに伝わる力で、使えるものはほとんどない。
それでも、できる事はやるつもりじゃ。
この国の危機を、黙って見ているわけにはいかんからのう」
「ありがたきお言葉です。それで、これからどうなさるのです?」
「伯爵と少し打ち合わせをさせてもらった後に、すぐに旅立つ。『北端魔境』に行って、『光の聖者』に直接会うつもりじゃ」
「そうですか。『光の聖者』に会いに行かれるのですね。
その前に、寄っていただいて助かりました。
実は、ミーアが『トブシマー』に向かったのと入れ違いに、王都から客が訪ねて来ていたのです」
デワサザーン伯爵はそう言うと、ミーアと族長のシーアを応接室に案内した。
「はじめまして、私は『十神教会』総本部付きの見習い巫女のナナリーと申します」
「私は、護衛の神殿騎士サザリーです」
ミーアたちが部屋に入るなり、待ちきれずに立ち上がって挨拶をする二人。
「ほう、教会の見習い巫女さんと騎士様……。
デワサザーン領まで来るとは、これはどういう……?
いや、その前に挨拶をしなきゃだね。
私は沖合にある『トブシマー』の族長しておりますシーアです」
「孫のミーアです」
「お会いできてよかったです。ミーアさんを追いかけてきたのです」
ナナリーはそう言うと、ミーアの手を握った。
「え、私を?」
「はい、そうなのです。ミーアさん、『勇者』の『称号』を得てますよね?」
「え、……」
突然の問いかけに、言葉に詰まるミーア。
「ああ、大丈夫です。初めて会う私たちを信用できないとは思いますが、この件を知っているのは、私とここにいるサザリー、それと、巫女長のフィルミーヌ様だけです」
「なぜ、そのことを知っているのですか?」
「それは……私に神託が降りたからです」
「神託?」
驚きの声を上げるミーア。
その隣では、族長シーアが、ニヤッと笑みを浮かべ、納得といった表情で頷いた。
「そうなのです。この者たちが訪ねてきたのは、神託を伝えるため、そして神託を実現するためだというのです」
デワサザーン伯爵が補足する。
「神託が降りたとはのう。それは……主神テラス様かい?」
族長シーアが、問いかける。
事態を楽しむかのような笑みを浮かべながら。
「はい、テラス様からの神託です」
「なるほど。そいつはすごい。早速聞かせてもらいたいのじゃが」
「はい、お伝えいたします。
————私の愛し子たちよ、私の加護を受けし『光の聖者』の下に集いなさい。
『光の聖者』の下に、勇者たちが集いしとき、暗黒を打ち払う『光の聖団』が誕生するでしょう。
今この時、訪れる暗黒を討ち払えるのは、『光の聖団』だけです。
後の世に希望を託すために、今この時を守らねばなりません。
真の聖者と真の勇者が覚醒し、大きなエネルギーのうねりができた時、自然に、必要な時に、古の力は復活するでしょう。
鍵は、最初の『勇者』の『称号』を得た者、古の海洋民族の末裔である者にあります。
他の勇者の覚醒の鍵を握っています。
その者が『光の聖者』の下に集まってこそ、勇者覚醒のエネルギーが満ち溢れるのです。
私の言葉を受け取る愛し子よ、この情報を勇者と聖者に伝えるのです。
ただし、国と教会には秘匿しなければなりません。
その中枢にいる者たちは、欺瞞と腐敗にまみれています。
その者たちはいずれ、その身に粛清を受けるでしょう。
さぁ若き巫女よ、使命を果たすのです————
以上が、私が受けた神託です」
見習い巫女ナナリーの語った神託の内容に、皆圧倒され、言葉を失った。
しばし沈黙が続いた後、族長シーアが口を開いた。
「なるほど、そんな神託が降りていたわけか。
それで、ミーアを訪ねて来たわけなのじゃな。
そしてこれから、『北端魔境』に向かうのじゃな?」
「はい、そうなります。ただできれば、ミーアさんに『光の聖者』様と合流していただきたいのですが……」
ナナリーはそう言いながら、ミーアを見つめた。
「あの、実は、もうそのつもりです。この後、向かうつもりでいたのです」
「ほんとですか! それは良かったです。ぜひ私たちも同行させてください」
ナナリーは声を弾ませ、隣のサザリーは頭を下げた。
「いいじゃろう、『天船』に乗せて行こう」
「ありがとうございます!」
族長の言葉に、ナナリーは、満面の笑みで頭を下げた。
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