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80.封印を解かれし古の船、そして旅立ち

三人称視点です。

 デワサザーン領、沖合に浮かぶ島『トブシマー』の入り江


「おばちゃん、ただいま! 帰ってきたよ」


 出迎えの先頭に立つ族長に、元気よく挨拶したのは、第三位の勇者候補パーティーの勇者候補だったミーアである。


 デワサザーン伯爵が用意してくれた高速艇で、故郷に戻って来たのだ。

 この高速艇は、魔法機関が内蔵されている特別な船で、魔法装置によって高速で運行できる貴重なものである。

 デワサザーン領で一隻しかない、滅多に使わない船を用立ててくれたのだ。


「ミーア、おかえり。よく無事で戻ったね」


「ごめんね、おばちゃん。私、がんばったんだけど、『勇者選抜レース』で勝ち残れなかった……」


 ミーアは、申し訳なさそうに表情を曇らせる。


「ミーア、いいんだよ。『勇者選抜レース』なんてものは、そもそも大した価値は無い。

 それよりも、お前に大きな変化が起きたのじゃろ?」


「え、おばあちゃん、どうして?」


「それは、私が夢を見たからよ」


 そう言って、ゆっくり前に出たのは、母親のサレナだった。


 彼女は、ミーアに『勇者の可能性』という『称号』が現れた時も夢に見ており、今回の『勇者』の『称号』についても、夢で見ていたのだ。


「お母さん、ただいま。また夢に出てたの?」


「そうよ」


「お姉ちゃん、お帰りなさい」

「姉ちゃん、お帰り」

「ねぇね、おかえりなさい」


 母親の後ろから照れ臭そうに顔を出したのは、妹のキャンベリーと、弟のラックス、末の妹のクラインだった。


「みんな、ただいま!」


 そう言ってミーアがしゃがむと、三人の妹弟たちは一斉に駆け寄り抱きついた。


「ミーア、元気そうで何よりだ」


 低い声で、ぼそっと呟くように声をかけたのは、父親のブラックンだ。


「お父さん、ただいま」


 一家総出の出迎えであるが、後ろには島民たちも控えていた。

 島総出での出迎えだったのである。


 『勇者の可能性』の『称号』を得て、王都に行ってから、ミーアは島民全員の期待の星になっていたのだ。


 今回、『勇者』の『称号』を得たであろうことも、皆知っているのである。


 ただ人々の本当の気持ちは、『称号』に関係なく、村の大事な若い娘が無事に帰ってきてくれた、そんな嬉しさでいっぱいなのであった。


「おばあちゃん、私、『勇者』の称号を頂いたの」


 ミーアは、改めて報告した。


「そうか。大変な使命を背負ったのう。

 伯爵からも連絡を受けたが、時を同じくして魔王と悪魔も現れてしまったようじゃ。

 この『ジパン群島』を定期的に襲う『魔王戦』が、始まってしまうようじゃな……」


「私も伯爵閣下から聞いて、知ったばかりよ」


「ふむ。いやがおうでも、お前は使命を果たさねばならん。辛い道のりになるやもしれぬぞ」


「うん、わかってる。『勇者』の『称号』をいただいたって事は、やるべきことがあるって事だと思う。

 ただ……おばあちゃん、私、王国の『勇者選定機構』に戻るんじゃなくて、別の人たちと一緒に戦おうと思ってるんだけど……その相談もしたかったの」


「『光の聖者』だね。これも情報は得ておる。

 それがいい。今の機能不全に陥っている王国で戦っても、多くの民を救うことはできんじゃろ」


「じゃぁ……それでいいの?」


「もちろんじゃ。我らは、古の海洋民族『シークレットマリナー』の末裔。

 人々を助けようとするときに、古の力が復活するとされている。

 国などは、時の流れと共に移り変わるもの。重要ではないのじゃ」


「うん、ありがとう。じゃ私、早速、クラウディアさんたちがいる『北端魔境』に向かうことにするよ」


「ああ、急いだ方がいい。封印を破り『天船(あまふね)』を解き放とう!」


「え、それって、語り継がれている空飛ぶ船?」


「そうじゃ。ブラックン、準備は整っておるな?」


「はい、母上」


 ミーア父親のブラックンが返事をし、遠隔操縦装置『コントローラー』のスイッチを入れた。


 すると、『トブシマー』の山の一部がスライドし、その内部から中型船サイズの飛行艇が発進した。


 空を飛行して現れた帆船ガレオン船タイプの船に、ミーアを始めとした島の者たちは驚き、そして感動していた。


 実際に稼働している状態を見るのは、初めての者がほとんどだったのだ。


 白と青を基調にしたボディが陽光に輝きながら、ミーアたちがいる入り江に、静かに着水した。


「すごい、これが『天船(あまふね)』」


 驚くミーアの手を取って、族長のシーアが皆に告げる。


「大きな騒乱が始まる。時があまりない。我とミーアで出立する。皆、やるべきことはわかっておるな?」


「「「はい」」」


 集まってきていた島民たちが、一斉に返事する。


「では、いくぞ、ミーア」


「はい」


 族長とミーアは、『天船』から伸びるスロープに駆け上った。


「お姉ちゃん、お気をつけて!」

「姉ちゃん、がんばれ!」

「ねぇね、がんばって!」


 妹弟たちの力一杯の言葉に、ミーアは振り向き、手を振った。


 そして、『天船』は浮上し、出発するのであった。


「まずは、デワサザーン伯爵と話しに行く。その後は、すぐに『北端魔境』に行くよ!」


「はい!」


 勇ましい祖母の言葉に、決意を込め返事するミーアであった。



読んでいただき、誠にありがとうございます。


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次話の投稿は、明日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 飛行帆船、ザイダベックかプレアスターか、ガレオン船っぽかったら宇宙大魔艦か。ロマンあふれるスペースファンタジー、じゃなかった異世界ファンタジー!
[一言] 飛空挺が出て来たのなら物語は、中盤に差し掛かったと言うところかな。 最終的には月に行くのかな?。 それとも魔大陸?。
[一言] > 母親の後ろから照れ臭そうに顔を出したのは、妹のキャンベリーと、弟のラックス、末の妹のクラインだった。  ミーアってSEEDの歌姫(偽)か! 弟妹は歌姫(真)と……或いはミーアの元ネタのミ…
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