75.勝手に建国を宣言
半日弱の魔境遠征を終えて、『魔境台地』に戻って来た。
だいぶ日が暮れてきているが、最後にもう一つだけやることがある。
『ショウナイの街』に、行くことだ。
実は、みんなで冗談半分で話していたことを、実際に行うことに決めたのだ。
それは国を宣言して、今度攻めてきたら戦争だと脅しに行くことである。
まぁ悪魔も出現し、魔王も誕生してしまった状況で、俺に再度ちょっかいをかけてくるとは思えないが、一応、伝えるだけ伝えておこうということになったのだ。
万が一襲ってきたときには、迎撃し、戦争賠償請求をしてやろうと本気で考えている。
相手をしているのも、煩わしいからね。
実は、これには、他の布石も含まれている。
相手がどう思おうと、国を宣言した者に襲いかかって来たら、当然報復される覚悟をするべきである。
報復として、『ショウナイの街』を制圧するつもりだ。
転移門がある『ショウナイの街』を押さえてしまえば、こっちから王都を攻めることもできる。
そして、転移して来れないように、破壊してしまうという手もある。
今の時点でやってしまうのが一番確実なのだが、今やると、こっちが戦争を仕掛けたことになりかねないので、それは自重した。
ヤマトとして、俺が個人的な復讐としてやるのは、別に構わないと思うが、一応国として、今後有利に交渉を進めるられるように、という配慮である。
これはクラウディアさんのアドバイスで、国を名乗って活動する以上、それなりの大義名分というものを重視した方が良いということなのだ。
ということで、俺は『オートホース』に乗って、ひとっ飛びで北門までやって来た。
門が閉まるギリギリだが、間に合った。
門番の衛兵に話しかける。
「悪いんだけど、守護と話がしたいんだ。呼んで来てもらえないかな?」
「これはヤマト殿、守護様と話があるのですね。では私が守護屋敷までお送りいたします。
私は以前、魔境で助けていただいた第一小隊の隊員です。
安全に守護屋敷までお送りしますので、ついてきてください」
そう言うと、もう一人の門番に目配せをして、俺を案内してくれた。
普通で考えれば、俺を捕まえる罠という可能性もあるが、はっきり言って、衛兵に今の俺を捕まえることはできないだろう。
まぁ油断大敵ではあるが。
少しして、守護屋敷に着いた。
門のところで待っていると、慌てて守護が走って来た。
「貴様は、ヤマト! 何しに来た? まさか、私の、私の命を……」
すごい慌てているが、俺が殺しに来たと思っているのか?
俺は、守護の言葉は無視して、書状を渡す。
「これは……?」
「国王陛下に伝えていただきたい。
俺は、『北端魔境』に国を作った。
それゆえに、今度俺に対し武力行使をしようとやって来た場合、戦争行為とみなす。
それ相応の迎撃をするし、我々が勝った場合は、賠償を請求することになる。
ただ、我々の方から、『カントール王国』に何かするつもりはない。
この『北端魔境』で、静かに暮らしたいだけだ。
手出し無用と改めて伝えて欲しい」
「な、何を勝手なことを! 国を作ったなどと……」
守護は、動揺しながらも俺の書状に目を通した。
「ヤマダイ国……それが、国の名前なのか?」
「そうだ。
この街に住んでいる冒険者が、魔境に入ることは、わが国への侵略行為となる。
故に、罪人として送られてくる者を、冒険者として魔境に送った場合、侵略行為と見なし、この街に反撃する。
その時最初に成敗するは、守護殿だ。ご注意を」
俺はそう言って、守護を脅した。
「ひぃぃぃぃぃ」
守護は、びびって尻餅をついてしまった。
我ながら、結構めちゃくちゃなことを言っているが、これにも狙いがあるのだ。
こう言っておけば、罪人として送られて来た者を、魔境に入れることを、躊躇うはずだ。
そして、しばらく魔境には、入れないだろう。
抜本対策とはならないだろうが、一時的にでも命を落とす者を減らすことができるのではないかと考えている。
まぁ他の手段で罪を償わせる為に、鉱山送りとかにされる可能性はあるが。
俺は、うろたえる守護をスルーして、屋敷から立ち去った。
ちなみに、国の名前は『ヤマダイ国』にした。
何か名前をつけなきゃいけないという話になったので、『魔境台地王国』でいいのではないかとみんなに提案した。
単純に『魔境台地』に作る国だからである。
だが、いまいちインパクトが弱いとみんなに指摘されて、みんなの意見に任せることにした。
クラウディアさんが中心になって話し合った結果、『光の聖者』である俺を前面に出したほうがいいという話になった。
そして、『ヤマト魔境台地王国』という長たらしい名前になった。
名前のインパクト的にも、俺としてはかなり微妙だが、一旦その名前になった。
後で変更するのもありだろうし。
ただやはり長いので、約して『ヤマダイ国』となったのである。
実は、古の英雄譚に出てくる帝国の名前になぞらえてもいるのだ。
このジパン群島にあったという『ヤマタイ大帝国』になぞらえている。
『ヤマタイ大帝国』は、通称『ヤマタイ国』とも言われているのだ。
完全にその辺を意識している名前である。
俺的には、本当は、かなり微妙だ。
二番煎じ感が否めないし、なぞらえる国が凄すぎて、名前負け感もあるんだよな……。
まぁ気にするのはやめよう。
俺の個人的な思いを置いておけば……知らない人はいない伝説の国と似た響きの国名なので、それなりのインパクトがある。
それゆえに、最初はインパクト重視ということで、良いだろう。
五人で国を名乗るなんて、正気の沙汰ではないが、どうせイカれているなら、古の大帝国を目指すというのも悪くない。
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