74.助けたお礼に、凄いアイテムいただきました
妖精族『ノッカー』の族長が、孫娘を助けてくれたお礼に受け取ってほしいと言った途端、突然、大きな板が現れた。
空間からいきなり現れたので、おそらく族長は『アイテムボックス』スキルを持っているのだろう。
この板……よく見たら、ドアだ。
枠があって、取っ手が付いている。
開閉できる感じだ。
「これは、いったい?」
「それは、『ノッカー』の秘宝『ノッキングドア』なのですじゃ。
助けが必要な時に、このドアをノックしてくれれば、駆け付けましょう。孫娘を助けてもらった礼なのじゃ」
「もしかして……転移門ですか?」
「転移門ほど大掛かりではないが、敢えて言うなら超簡易型の転移門ですのう。
離れた鉱山に行く時などに使うのじゃが、一回きりの使い捨てなのですじゃ」
「一回きりとは言っても、転移門なんですよね? そんな貴重なものを、ほんとにいただいていいのですか?」
俺は、改めて確認した。
なんとなくだが、周りにいる他の『ノッカー』たちが、ちょっとざわついていたのだ。
「良いのですじゃ。貴重なものとは言っても、我々が作っておるから、大丈夫なのじゃよ」
おっと、すごい情報だ。
自分たちで作ってるのか。
「すごいですね。簡易型とは言え、転移門を作れるなんて……」
「なに、我らの技術はそれほど高くない。
実は、転移系の魔法道具は、これしか作れんのじゃ。
ご先祖様が手に入れた設計図があってのう。
その通りに作っておるだけなのじゃよ。
安全装置としての仕様なのか、一回使うと壊れて、使えなくなるのじゃ。
我々には、改良する力がないから、そのまま作っておるだけなのじゃ」
「そうなんですね。でも設計図通りに作れるというだけでも、すごい技術だと思いますが……」
「まぁ、そこは長年の蓄積があるからのう。
まぁそんなことよりも、そういう事情じゃから、遠慮せずに受け取って欲しいのじゃ」
「はい分りました。ありがたく頂戴いたします」
「これは、誰にでも渡すものではない。
本当に恩義を感じておるから渡すのじゃよ。ふっはっは」
族長さんはそう言うと、少しイタズラな笑みを浮かべた。
妖精族は気難しい存在なのかと思ったが、意外と人当たりが柔らかい感じだ。
「それから……可能性の問題として、そちらが呼ばなくても、何か危険を知らせるために訪れる可能性がある。
その場合は、先にこちらがノックするのじゃ。
すると、ドアからノック音が響くから、ノックをし返すのじゃ。
そうすれば、ドアが開くのじゃ」
「はい分りました。今の話からすると、お互いに行き来するときは、必ずドアをノックする音が発生するということなのですね?」
「その通りなのじゃ。まぁこれも一種の安全装置なのじゃ。突然現れて、寝首をかかれるなんて事は起きない。
必ずノック音が響くことになっておるのじゃ。
安心安全の設計なのじゃよ。ふっはっは」
族長は、愉快そうに笑った。
「ヤマトお兄ちゃん、ありがとなのです。また会いたいなのです」
別れの雰囲気を察知したのか、キュキュちゃんが、俺の手を掴んで、改めてお礼を言ってくれた。
「俺たちは、ここから東の方向の大きな台地の上に住むつもりだから、よかったら遊びにおいで。
あーもちろん、遠いから一人で来ちゃダメだよ」
「わかってるのです」
キュキュちゃんは、明るく可愛い、いい笑顔を作った。
キュキュちゃんは、存在自体がとてもキュートで可愛いので、ラッシュを始めとした女子たちがすっかり気に入って、代わる代わる抱きしめていた。
俺たちは、『ノッカー』たちに改めて挨拶をし、別れた。
妖精族と言われなければ、人族と思ってしまう感じだ。
なんとなく、全体的に小柄な人が多いような感じはするが。
雰囲気も、気さくで陽気な感じの人たちである。
俺としては、妖精族とファーストコンタクトという感じだが、いい距離感で、お互いに信頼を勝ち取れそうな感じの出会いになって、良かったと思っている。
それにしても、一回きりの超簡易型とは言え、転移門と言えるような魔法道具をもらえてしまって、かなり驚いた。
そしてなんとなくだが……一回使って壊れても、俺の『献身』スキルを発動すれば、修復できるのではないだろうか……。
もしかしたら、事実上、無限に使えるのでは?
いずれ、この『ノッキングドア』を使う時が来て、壊れて使えなくなったら、試してみよう。
魔境遠征初日から、妖精族の出会いという思ってもみないことが起きた。
まだ日は沈んでいないが、今日は引き上げることにする。
もともと半日の予定の遠征で、様子見的に出かけただけなのだ。
日が暮れる頃には、戻ろうと思っていた。
少しだけ早いが、切り上げることにしたのだ。
なんとなくイベントが終わって、一段落みたいな気持ちになったし。
さっき、キュキュちゃんを助ける時に倒した狼魔物は、すべて俺たちがもらうことになったので、それだけでもかなりの数だ。
ここに来る途中で倒した魔物もいるので、半日弱の遠征で五十体ぐらい倒したことになる。
今まで倒した分も含め、肉としては、食べ切れないぐらいある。
後は、せっかく倒した魔物素材を、どこかで換金したいのだが、今の俺たちにその手段はない。
やるとすれば、『カントール王国』のどこかの街に潜入して、商会に買取を依頼するしかない。
まぁクラウディアさんの故郷であるデワサザーン領まで行けば、安全に換金できるだろうが、気軽に行ける距離ではない。
当面は、保存しておくしかないだろう。
ちなみに遭遇した魔物との戦いでは、みんなある程度、新しい武器を使いこなしていた。
もっとも、イリーナは、新しい武器ではないが。
ラッシュは、使う短剣が二本とも超高性能になったので、普通の魔物なら、最初の斬り付けで倒せていた。
クラウディアさんの『火縄魔銃』も、威力抜群で、もともと腕のいいクラウディアさんは、遠距離からの狙撃で脳天をぶち抜いて、瞬殺していた。
一度『火銃モード』で、火の玉を発射して倒していたが、焼けて魔物素材が痛むので、一度しか使わなかった。
倒すときに、素材の傷み具合を考慮して倒せるのだろうから、かなり余裕があるということだ。
ただ、魔物素材の確保が目的ではなく、武器を使いこなしたり、レベルを上げるということが目的なので、気にせずに倒してくれていいんだけど。
それからフランソワの『魔刀 出刃包丁』による斬撃波は、かなり強力だった。
まだ精度が高くないので、前衛のラッシュに下がってもらって、練習を兼ねて魔物に対して放ってもらったが、威力は抜群だった。
当たれば、深傷を負わせ、一発で倒せるくらいの威力である。
もっとも、狙いを外すと周りの木を倒していたりして、混乱する局面もあった。
木が、自分たちのほうに倒れてきたりして、焦る局面があったのだ。
魔物討伐遠征だと言うのに、なぜかみんな楽しそうに、キャッキャ言いながら、新武器の使用感などを語り合っていた。
今後の成長は、かなり期待できると思う。
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