72.内海を目指し魔境遠征
これから、魔境の調査を兼ねた魔物狩り遠征に出発する。
広大な『北端魔境』の調査と言っても、かなりの時間を要する。
そこで、どの方向から先に調査するかについて、みんなで話し合った。
俺たちの拠点である『魔境台地』のすぐ北側の山脈を調査するのが、妥当なところであるが、一旦棚上げし、西に向かうことにした。
西の端まで行けば、海に出る。
そこは、内海と言われている海だ。
同様に東の果てまで行くと海に出る。
こちらは、外海と言われている。
また北側の山脈を越え、さらに果てまで行けば海に出る。
ここも外海と言われている。
『北端魔境』及び『カントール王国』がある大地は、島なのだ。
ジパン群島と言われている五つの大きな島からなる諸島群の一つである。
東宮島と呼ばれている。
東宮島の西の内海の更に西には、同じような大きさの島があり、西宮島と言われている。
東宮島と西宮島の間の海が、内海と言われているのである。
この内海を北上すると、北宮島があり、南下すれば南宮島がある。
また内海の中央には、中宮島がある。
これが主要な五つの島で、その他にもサイズが小さくなるが、多くの島々が周辺にあるのだ。
ジパン群島の五大島の中で、中宮島以外には、独立した国がある。
群島の中心に位置している中宮島だけは、ジパン群島の力場の中心であり、神聖な場所ということで、不可侵領域となっている。
また霊域であるとも言われているのだ。
言い伝えでは、妖精族が管理をしているとも言われているが、何かの結界が働いていて、近寄ることができないらしい。
五大島の他の島にも、小さな国があるが、ジパン群島の安定に大きな影響があるのは、五大島にある大国である。
大国といっても、西にある大陸の大国と比べれば、どの国も小さいようだが。
現在は、大陸にある様々な国々との交易は、ほとんど行われていない。
大陸とはそれなりに距離が離れていることと、大陸との間の海に魔物の領域があって、通常の船では行き来することが難しいのだ。
ごく稀に、強力な装備の船が西宮島や南宮島にやって来ることがあるようだが、東宮島の『カントール王国』には、なかなか来ないのである。
なぜ俺たちが西側の内海に向かって遠征を決めたかと言えば、内海に面した場所に将来的に拠点を作りたいと考えたからだ。
海産資源の確保ももちろんだが、将来的には近隣の国と交流する可能性もあるとクラウディアさんが提案したからだ。
クラウディアさんの地元のデワサザーン領も、この内海に面している。
デワサザーン領の北には、アギダーン領があって、そのさらに北が、この『北端魔境』の一部になっている。
ただ、内海を目指すと言っても、南北に細長い東宮島の北側五分の一が『北端魔境』であって、その東西の距離もかなり長いわけである。
東西だけの感覚で言えば、『魔境台地』は、ほぼ中間地点ぐらいにあるから、内海まではかなりの距離なのだ。
故に、調整しながら、少しずつ進んでいくしかないのである。
まぁ主目的は、魔境の調査と、レベルアップだから焦る必要はない。
クマ型ゴーレム『クマゴロウ』が牽引する鋼鉄馬車『戦車』で遠征に向かうが、四台とも出動することにした。
四台の『クマゴロウ』に、一応担当をつけたので、ならし運転という意味もあるのだ。
『クマゴロウ』には、識別のために名前をつけた。
一号が、『イチゴロウ』という名前で、ラッシュがメインで担当する。
牽引するのは、戦車一号機の『居住戦車』だ。
二号の『ニゴロウ』は、クラウディアさんが担当し、牽引するのは、二号機『ラウンジ戦車』だ。
三号の『サンゴロウ』は、イリーナに担当してもらう。
牽引する三号機は、『人員輸送戦車』だ。
四号の『ヨンゴロウ』は、フランソワに担当してもらう。
牽引する四号機は、『マルチ輸送戦車』である。
本来はこの戦車も、人員輸送用で、ぎっしりと椅子が配置してあったのだが、半分撤去し、物資も詰めるようにした。少し改造を加えたのである。
女子メンバーたちに、『クマゴロウ』四体を担当として割り振ったわけだが、魔力を流して起動することと、簡単な指示を出すこと以外は、特にやる事は無い。
もっと言えば、『クマゴロウ』の操作自体、『大剣者』ができるので、彼女たちが無理にやる必要もない。
だが、今後いろんな局面で役立つように、そして使いこなせるように、普段から使ってもらうことにしたのだ。
指示して戦闘させることもできれば、子犬、いや狼たちを出して、周辺警戒や情報収集をすることもできるわけだし。
◇
頑張って進んでいるが、予想通り歩みは遅い。
馬車がまともに通れないような鬱蒼とした場所が多いのだ。
そんなところは、木を切り倒して、道を作りながら進んでいる。
『大剣者』も、『聖剣 カントローム』も、『聖槍 カントウロウム槍』も、切れ味抜群で、大木を根本から切断できるので、かなり助かる。
平らな道を作るために邪魔な木の根も、聖槍の技コマンド「聖なる地層」を使って、一度穴を掘って、埋め戻せば除去できるのだ。
そんな感じで道を切り開きながら、その周辺の野草や果実の調査をしたり、襲ってくる魔物を撃退したりしているのだ。
ただ、この改造した戦車のおかげで、移動自体は楽である。
移動中は、各『クマゴロウ』は、自動で牽引してくれるので、担当者が付いている必要もない。
みんな二号車『ラウンジ戦車』に乗って、お茶を飲みながら優雅に移動できるのだ。
一応、交代で一人が『オートホース』に乗って、状況確認しながら進んではいるが。
みんなでブラックベリーの自生地を見つけて、採取していると、ラッシュが突然立ち上がり、耳を済ました。
「先輩、今悲鳴が聞こえませんでしたか?」
ラッシュは、『聴力強化』スキルを持っているわけではないが、もともと耳が良い。
俺は、『聴力強化』スキルを発動して、耳を澄ます——
ん、確かに悲鳴だ!
「『大剣者』、向こうの方角だ。何かわかるか?」
「探知できる範囲内では、魔物などの気配は確認できません。かなり距離があるのでしょう」
「そうか。でも悲鳴は確かに聞こえた。まずは行ってみよう!
みんな、俺とラッシュで先行する。
馬車で来れるところまで来て。
その後は、待機するか、馬車を降りて追って来るかの判断は、クラウディアさんに任せる」
「わかったわ」
クラウディアさんが即答し、イリーナ、フランソワが首肯する。
俺は、ラッシュと二人『オートホース』に騎乗して、悲鳴の方向に向かった。
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