69.聖槍も修復完了。そしてまたもや凄い使い方
最後に残ったのは……『聖槍 カントウロウム槍』の主要残骸だ。
穂先が付いていて、柄が途中で折れている。
完全に壊れていて、穂先もボロボロだ。
このままでは、ただのゴミである。
俺の『献身』スキルで修復するのが前提で、現れた気がしてしょうがない。
まぁ俺の『固有スキル』の機能だし、そういう物を引き寄せることもあり得るのだろう。
ただそもそも、『献身による加護ガチャ』で現れる物は、一体どこから来るのか?
地上のどこかに埋もれている物を引き寄せているのか、神の保管庫にでもあるのか、まぁ考えたところで答えは出ないわけだが……。
「これは間違いないですね。名前からして、王家に伝わっていた伝家の宝刀の一つですよ」
クラウディアさんが、腕組みしながら言った。
「そうなんですか?」
「今では知っている人は限られていますが、三百年前の魔王戦の時に、当時の勇者が使っていたはずです。
記録では、破壊され失われたと言うことになっています。
それがどこかにあって、どういう原理か分かりませんが、ここに来たということですよね、きっと」
「名前からして、『聖剣 カントローム』のシリーズみたいな感じですか?」
「そうです。この地方に伝わっていた聖なる武具です。これも確か……『カントール王国』ができる以前の国が持っていたのを、接収したんだと思います」
なるほど。『聖剣 カントローム』と同じシリーズなら、性能は間違いないだろう。
「じゃあ、早速『献身』スキルを発動して、修復を試みます」
俺の言葉に、待ってましたとばかりに、みんなが笑顔で頷く。
そして俺は、『献身』スキルを発動する。
案の定、一気にHPが1になった。
そして、肝心の槍は、穂先の部分と残っている柄の部分がある程度使えそうな状態になったが、折れた部分についてはまだ修復していない。
俺は、回復を行いながら追加で五回ほど『献身』スキルを発動した。
ふう……完全に近い状態に修復できた。
途中で、失っていた柄の部分も再生されたのだ。
見事な槍だ。
うっすらと青く輝いている。
柄の部分が青く金属質な感じだ。
穂先は、一般的な槍の穂先のように見える。
俺は、早速手に取り、使ってみることにした。
『聖剣 カントローム』を最初に手にした時と同じように、魔力とは違う生命エネルギーのようなものを吸い上げられる感覚がある。
その感覚に任せると、聖剣の時と同様に、体の一部のようにしっくりくる感覚が伝わってくる。
この槍も、特殊な技コマンドを備えているようだ。
発動真言と使い方のイメージが流れて込んでくる。
そのイメージのまま……穂先を斜め前にして地面に突き立てる。
そして、発動真言を唱える。
「聖なる土刃!」
突き立てた槍の前方に、瞬く間に、一直線の鋭角な土の刃が盛り上がる。
地面が五十センチくらい鋭角に盛り上がって、一直線の刃を作った。
まるで地面自体が、刀になったようだ。
この直線上にいる敵は、下から足を切り付けられることになる。
この土の刃は、地面からの高さ、直線の長さ、強度などを、念で調整できるみたいだ。
ふと思ったが……もしかしたら、違う用途にも使えるかもしれない。
俺は、再度、技を発動する。
今度は、盛り上がるエッジを平坦にして、横幅を三十センチくらい、高さを二十センチくらい、奥行きを五十メートルくらいでイメージする。
そして、盛り上がる土は、できるだけ柔らかいイメージだ。
——ズン、ズズズゥゥゥン
おお! なんかいい感じだ!
イメージ通りに、土が盛り上がった。
硬さも、まあまあ柔らかい。
これなら使い込めば、イメージ通りのものが作れそうだ。
俺が今作ったのは、何を隠そう、野菜を作るときのウネだ。
ついつい違う使い方が、閃いてしまったのだ。
でも確信した!
この槍は凄い!
使いこなせるようになれば、土を耕すことと、ウネを立てることが一瞬でできてしまう。
農作業の重労働な部分が、解消できてしまう。
なんか、この聖なる武具のシリーズって、めっちゃ国づくりに役立つ!
『聖剣 カントローム』は、土木工事に使えるし、『聖槍 カントウロウム槍』は、農作業に使える。
凄すぎる!
俺は、一人で感動し、ニヤニヤしていたのだが、ふと気がつくと、女子たちが不思議そうな顔で俺を見つめている。
やばい、変な奴だと思われているかも。
俺は、今作った土の盛り上がりが、野菜を育てるためのウネであることを説明し、この『聖槍』が農作業に使えることを発見し、喜んでいたのだと説明した。
みんな若干引き気味だったが、ラッシュだけは……
「さすが先輩です! 今度は聖槍の力を引き出すだけじゃなくて、農業に使うなんて凄すぎます!」
と素直に感動してくれていた。
ありがとう、ラッシュ。
聖槍の力は、これだけではない。
もう一つ、発動真言が思い浮かんだ。
「聖なる地層」
槍の穂先を地面に向け、発動真言を唱えると、イメージした範囲のところに大穴が開いた
巨大な落とし穴が、一瞬で作れてしまった。
これはすごい!
戦いで役立ちそうだ。
そして……大穴を元に戻すこともできる。
穴を開けたときの土砂を、どこかに保存してるのだろうか?
その原理はわからないが、対象を落としたまま復元すると、生き埋めにできるみたいだ。
生き埋めとは……凶悪な技だ。
そしてまた、つい違う使い方が思い浮かんでしまった。
これをうまく使えば、魚の養殖池とかが簡単に作れるかもしれない。
いかんいかん、また農業の発想になってしまった。
それはさておき、簡単に穴が掘れるということは、戦闘陣地を作るときに、塹壕なども簡単に作れるのだ。
また、この『魔境台地』の断崖の前の部分に堀を作って、断崖に取り付けないようにすることもできそうだ。
その堀で、魚の養殖をしてもいいかもしれない。
もう一つ、発動真言が思い浮かんだ。
「聖なる火山灰」
前方に向けた穂先から、細かな粒子の灰が放出され、それが渦を巻きながら竜巻状になって移動する。
おそらくこの中に捕えられたら、視界も奪われるし、呼吸もまともにできないだろう。
かなり苦しいに違いない。これまた恐ろしい技だ。
なんとなくだが……この技を出した後に残る灰は、土に混ぜたら作物に良いような……いかんいかん、また農業発想になってしまった。
今は亡き両親とともに、野菜作りは一通りやっていたから、一度農業のことを考え出すと、ついついそういう発想になってしまう。
草木を焼いた草木灰を、土に混ぜて育ちを良くしていたのを思い出してしまったのだ。
まぁその発想は置いといて、この攻撃は敵集団の動きを止めるのに良さそうだ。
総括して、この槍もやはり強力だ。
そしてどう考えても俺は、優秀な農作業員を確保してしまったようだ。
ありがたいことだ。
試しに、この聖槍と、聖剣を他のメンバーにも使ってもらってみたが、やはり普通の武器として使うことはできても、特殊な技コマンドは出せなかった。
ただなんとなくだが、ラッシュとクラウディアさんは、いい線行っていたような気がしないでもない。
俺が技を引き出せるのは、やはり『聖者』の『称号』があるからだろう。
現時点では、『聖者』か『勇者』の『称号』がなければ、本当の力は引き出せないのだ。
一息ついたら、新たな武器を手に、魔境の探索を兼ねた魔物狩りに行こう。
みんなレベルアップに向けて、やる気満々だ。
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