62.真の魔王への決意
三人称視点です。
王都、王城内の王国軍第二大隊駐屯所
「エドガー将軍、どうでした?」
「おや、渋い顔だ……」
「こりゃ、まいったね。話を聞くのが怖いや」
国王との謁見から帰ってきたエドガー将軍を、将校たちが取り囲む。
「どうしたもこうしたもねーよ。この国は、俺が思ってた以上に腐ってるな。俺の見込みは、甘かったようだ。まったく……」
そう言って吐き捨てた将軍を見て、将校たちはため息をつく。
「やはり、あらぬ方向に話が行ったということですね?」
不安げな表情で確認したのは、情報官の女性将校アガサだ。
彼女は『鑑定』スキルを持ち、ヤマトが『光の聖者』の『称号』を持っているのを、確認した人物である。
エドガー将軍は、面倒くさそうにしつつも、国王との話の詳細を伝えた。
「そんな話になったんですか? まいりましたね将軍」
「あの勇者ジャスティスも気に入らなかったが、ジェイスーンも似たようなもんですね」
「なんだって、そんなやつばっかりなんだ。『勇者選定機構』なんて、ぶっ潰しちゃいますか?」
「悪魔が現れて、そしてジャスティスが魔王に覚醒して、そんな時に、まだヤマト殿にちょっかい出すんですか?」
「そうですよ。聖剣を取り返すって言ったって、ジェイスーンじゃぁ、使いこなせないに決まってる」
「頼めた義理じゃないが、頭を下げて、ヤマト殿に協力を依頼すべきなのに……」
将校たちは、それぞれに憤慨する。
「ああ、陛下も宰相閣下も、そんな簡単なことがわからないんだよ、不敬罪になっちまうが……呆れるぜ」
エドガー将軍は、再び吐き捨てる。
「また俺たち、魔境に行かされるんすかね?」
「いや、それはねーだろ。おそらく第一大隊か、第三大隊になるだろうよ」
「私たち、これからどうするんですか?」
あえて難しい問いかけをするアガサ。
彼女は、情報担当官であり、かつ作戦立案も担当する隊の頭脳なのである。
「どうするもなにも、兵士は国の命令で戦うしかねーからなあ。やってられねぇが。ふう、みんなで冒険者にでもなるか?」
半分やけくそでエドガー将軍は答えたのだが、なぜか将校たちは皆賛成の声を上げた。
「将軍、大将軍に話をして、大将軍から陛下に進言してもらうっていうのはどうですか?」
「いや、陛下のあの感じじゃ、無駄だな。大体今の大将軍には、そんな期待できないだろ?」
意味ありげに微笑むエドガー将軍に、アガサは苦笑いで頷いた。
今の大将軍は、大将軍と言いつつ、王に意見することなどできる人間ではないのである。
「将軍、前の大将軍モーリス様に、話しに行ってみてはどうでしょう? 引退されているとは言え、まだお力のある方ですし……」
「まぁそうだな……あのじじいの意見でも聞きに行くか……」
「私もお供します」
「わかった。連れて行こう。残りのお前らは、しっかり訓練しておけよ! また悪魔と戦ったときに、死なれちゃ困るからな!」
「「「はい、将軍」」」
エドガー将軍は、大きく頷きながら、駐屯所を後にしたのだった。
◇
王都、とある場所
「ぐっ、つっ……」
「あら、目を覚ましたようね、ジャスティス」
「お前は、ユーリシア……」
「おぼろげながらでも、記憶はあるでしょ? あなたは見事に落ちたのよ。そして『魔王』の『称号』を得た。素晴らしいわ」
満足げに微笑むユーリシア。
「お前、何を……。そうだ、俺はあの時……魔王、魔王になったのか!?」
だんだん意識がはっきりしてきたジャスティスは、自分のステータスを確認し、『称号』に目を止める。
あの時の記憶はおぼろげにしかないのだが、どういう状況だったのかは、大体わかる。
「確か俺は……周りの者を殺した……そして、ヤマトに攻撃されて……何者かに背中から刺された気がする……」
「そうよ。あなたは、ジェイスーンに殺されたのよ。
まぁ正確には踏みとどまってるけどね。いえ、より正確には、死んだけどその首輪の力で、あなたの魂を離さなかったの。だから踏みとどまって蘇生した。
だからこうして、生きている。私に感謝することね」
「首輪? ん、これは、お前がはめたのか!?」
首輪に手を当て、イラつくジャスティス。
「それはあなたを強くするもの、死から救ったものよ」
「くそ! 外れないぞ、この首輪」
「外れないわよ。あなたの体の一部になってるんだから。あなたの魂を、がっちり掴んでいるのよ。それに言ったでしょう? 首輪のおかげで、あなたはより強い力を得ることができる。だから外そうなんて考えないことよ」
「くそ……。なんでこんなことに……。それに魔王になったなんて信じられない……」
「飲み込みが悪いわね。あなたは勇者の器じゃない、魔王の器だったってことよ。魔王として、この世界を手に入れられるんだから、いいじゃない」
「何だと……というか、そもそもお前なんで?」
「ははは、私? 私は悪魔契約者、悪魔と契約しているの。この国を滅ぼすためにね。愚かな者ども殲滅してくれるのよ。はははは」
嗜虐の笑みを浮かべるユーリシア。
「と言う事は、お前、国に恨みがあるのか?」
「ふふふ、もちろんよ。悪魔と契約までしたのよ」
「どんな恨みが?」
「はは、それは私の個人的なこと。ほっといてちょうだい。まぁ、いずれ気が向いたら話してあげるわ。それよりこれからどうするの?」
「どうするって?」
「もう勇者になんか戻れないのよ。あなたが闇に落ち『魔王』の『称号』得た事は、もう国王も国の中枢の者たちも知ってるはずよ」
「……くそ」
「悔しがる事は無いわ。あなたのやる事は、全く変わらないじゃない。だって勇者になって自分の思うように、好き勝手にやるつもりだったんでしょう? 魔王だって同じこと。いや、それ以上のことができるわよ」
ユーリシアによる、まさに悪魔の囁きだった。
「これから真の魔王となって、好きなだけ暴れなさい。好きなだけ人を殺すといいわ」
さらに続けるユーリシアの言葉に、ジャスティスは、なぜか気持ちがすっきりするのを感じていた。
開き直ったのである。
「まぁいい、勇者で無くなったって言うならしょうがない。この国に、そしてあのヤマトに災厄をまき散らしてやる!」
「期待してるわ。大丈夫、あなたには悪魔がついているから。国の見掛け倒しの軍隊なんかより、よっぽど強力よ」
「悪魔か、そうだ、悪魔の力を利用して、俺がこの国を、この世界を手に入れてやる!」
混乱から覚醒し、真の魔王への覚醒を決意するジャスティスであった。
そして今までに味わったことのない最高の高揚感で、高笑いを続けるのだった。
——ふふふ、馬鹿ね。利用されるのは、あなたの方なのに、ふふふ
ほくそ笑むユーリシア。
「さてジャスティス、早く本調子になることね。まずはこの王都を血の海にしましょう。ふふふふふ」
「ハハハ、そうだな。そして納得だ。お前はまさに、悪魔の使いだな。ハハハ。だがいいだろ。お前に乗ってやる。まずは、この王都を血で染め上げ、真の魔王の力を手に入れる! そしてこの国全土、さらには、あのヤマトを俺が蹂躙してやる! ハハハ」
ジャスティスの狂気の笑いが、響き続けていた。
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