57.真逆が好きなイリーナと、回復魔法の使い手フランソワ
新加入の二人、第二位の勇者候補パーティーで魔法使いポジションを担当していたイリーナさんと、ヒーラーポジションを担当していたフランソワさんのレベルとスキルを確認させてもらった。
イリーナさんは、黒に赤い縁取りが施されたローブとつばの広い帽子をかぶり、いかにも魔法使いといったスタイルだ。
サラサラな赤髪が、肩まで伸びている。
年齢は十九歳ということなので、俺より一つ上だ。
一メートル以上ある長い杖を持っていて、杖の頭頂部はハンマーのような形になっている。
それなりに左右にせり出しているので、杖自体がT字形っぽくなっている。
魔法使いポジションの人の基本の戦闘スタイルは、遠距離からの魔法攻撃になるわけだが、彼女は前に見たときに杖のハンマーの部分を使って、殴りつける接近戦もこなしていた。
接近戦もできる魔法使いというのは、かなり珍しいと思う。
彼女の杖は、ハンマーのようになっている場所に、氷を纏わせることができる特殊なものだ。
前に見たときには、杖に氷魔法をかけて凍らせているのかと思ったが、そうではなく、杖自体に内蔵されている機能とのことだ。
魔力を流して、『アイスロックハンマー』という発動真言を唱えると、ハンマー部分に氷が現れ、攻撃力を高めることができるのだそうだ。
幼い時に魔法を教えてくれた師匠がいて、その人から譲られた特別な杖らしい。
『ハンマーワンド——氷戦鎚』という名前の、『極上級』階級の『魔法の武器』だそうだ。
魔力効率を高めたり、魔法の威力を高めるという通常の魔法の杖が持つ能力と、ハンマー部分を使った武器としての能力、氷を纏って威力を強化する能力があるわけだ。
イリーナさんの話によれば、ハンマーの部分を対象に押し当てて、氷を纏わせ継続的に魔力を流すと、押し当てた対象をも凍らせることが可能らしい。
ただ、対象が大きいとかなり大変らしいので、戦闘では使いにくいとの事だった。
イリーナさんは、レベルが42だったが、今回の戦いで一つ上がって43になったそうだ。
彼女が所持しているスキルは、『通常スキル』のみだが六つ持っている。
『火魔法適性』は、『火魔法』に対する同調性の高さを表していて、『火魔法』の系統のスキルが発現しやすかったり、威力を高める効果があるとのことだ。
『火耐性』は、火に対する耐性で、火傷を負いにくくなるのだ。
『火魔法』を使う者は、自分が傷つかないように、このスキルが発現する場合が多いようだ。
『火魔法——火弾』は、下級の火魔法で、火の弾丸を打ち出すものだ。
『火魔法——火球』は、中級の火魔法で、ボールサイズの火球を打ち出すものだ。
『杖術』は、杖での戦闘に強化補正がかかるスキルである。
『戦鎚術』は、ハンマーでの戦闘に強化補正がかかるスキルである。
まさに、魔法を使いつつ接近戦もこなせるスキル構成だ。
今後さらに力をつければ、本当に接近戦主体で戦えるようになるかもしれない。
その場合は、『アタック魔法使い』みたいなポジションになるのだろうか?
なんか格好悪い……『マジックアタッカー』とか、そんな感じの方がいいな。
そんな話をしたら、
「それいい! 『マジックアタッカー』なんかかっこいい! 私、接近戦、本気で頑張ろうかな」
相変わらずノリのいいイリーナさんは、そんなことを言っていた。
改めて考えると、イリーナさんは、真逆のものが好きなのかもしれない。
スキルは火魔法なのに、杖の能力は氷だし、遠距離攻撃主体の魔法使いなのに、近距離接近戦ができる。
めちゃくちゃな感じが面白い。
次は、ヒーラーポジションのフランソワさんだ。
彼女の装備は、白をベースとした衣装で、スカート丈が短く腕の袖のところが広がっている。
少し着物に似たデザインだ。
所々に黄緑の配色もちりばめられている。
着物は、『カントール王国』の民族衣装のようなもので、様々なデザインがある。
今流行のデザインは、露出の多いものだが、彼女の装備衣装はそれと似た感じなのだ。
フランソワさんは、スラッと背が高く、緑髪が胸まで伸びている。
彼女もイリーナさんと同じ十九歳なので、俺より一つ歳上になる。
彼女も、杖を使っているが、六十センチ位の短い杖だ。
魔力効率を高めたり、魔法の威力を高めるという通常用途の杖だ。
特に変わった機能は無いそうだ。
今までは回復専門だったが、今後はイリーナさんのように、戦闘もできるようになりたいと言っていた。
確かにそのほうが、本人の安全度も高まるからいいと思う。
レベルは41だったが、今回の戦いで42に上がったとのことだ。
彼女が持っているスキルは……レアな魔法スキルである『回復魔法』が五つだ。
『回復魔法適性』は、『回復魔法』の系統のスキルが発現しやすかったり、威力を高める効果があるものだ。
『回復魔法——ヒール』は、下級の『回復魔法』で傷の治療ができる。
『身体力(HP)』の回復ができるのである。
『回復魔法——回復弾』は、下級の『回復魔法』で、離れた対象者に回復の弾丸を飛ばし癒すスキルとのことだ。
戦闘中に離れた場所にいた俺を回復できたのは、これがあったからのようだ。
『回復魔法ハイヒール』は、中級の『回復魔法』で、ヒールの強化版である。
『回復魔法——リカバリーポイズン』は、毒消しの魔法で、大体の毒は消せるらしい。
『回復魔法』は、かなりレアな魔法スキルで、発現する者は、非常に少ないということだ。
もともと魔法スキルは、発現しにくいスキルと言われている。
そんな中で発現する者も、『火魔法』『水魔法』『風魔法』『土魔法』の四つが発現する場合が、ほとんどなのである。
それ以外の『光魔法』『闇魔法』『雷魔法』『氷魔法』などは、なかなか発現しないレアな魔法なのである。
そして、それ以上に発現しにくい魔法もあって、その代表的なものが『回復魔法』なのである。
スーパーレアな魔法と言っても、いいのかもしれない。
回復の効果のある魔法スキルは、一般的な属性の魔法にも存在している。
例えば、『風魔法——癒しの風』などは、ヒールと同様に回復させることができる。
ただ、これは様々な風魔法の中の一つでしかないのだ。
『回復魔法』の場合は、『回復魔法』という独自の括りで、様々な回復に関する魔法が身に付くのである。
これが極めてレアな理由だろう。
『回復魔法』スキルは、あの悪魔契約者だったユーリシアも持っていたわけだが、ユーリシアにしろ、フランソワさんにしろ、この極めて珍しい魔法スキルを持っていたので、勇者候補パーティーのメンバーとして召集されたということだろう。
フランソワさんには、更なる『回復魔法』スキルの取得を期待したいところだ。
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