54.熊と狼と着ぐるみと
クマ型ゴーレム通称『クマゴロウ』のエクストラモードとも言うべき『ウルフユニットモード』の起動によって、クマゴロウの体内から子犬サイズの狼型ゴーレムが五体出現した。
クマと五体の狼で、クマゴロウなのかと勝手に思いを馳せ、勝手にゲンナリしている俺を見かねたのか、『大剣者』が追加の説明をしてくれた。
「ウルフユニットは、それぞれ単独で魔法AIを搭載していますので、別々に指示を与えることができます」
なるほど、早速試してみよう。
俺は、子犬——いや、ウルフたちに指示を与えてみた。
……ふふ、面白い。
一体目は、その場でぐるぐる回っている。
犬が自分の尻尾を追いかけて、ぐるぐる回ってる状態だ。
二体目は、穴を猛烈に掘っている。
三体目は、木の枝に噛み付いてぶら下がっている。
四体目は、地面でローリングしている。
五匹目は、まるでヤギのように垂直にジャンプを繰り返している。
全て俺が出した指示だが……ちょっと遊んでしまった。
そして言うことを聞いてくれると、見た目が真っ黒で鋼鉄でも可愛く感じてしまう。
というか、そもそもこのウルフユニットは何のために存在しているんだろう?
普通に考えれば、攻撃に使うんだと思うが……まさか愛玩用じゃないよな?
そんな質問を、『大剣者』に投げかけてみると、
「ウルフユニットの特徴は、クマゴロウの子機でありつつ、単騎で自律行動できることです。
クマゴロウが牽引する戦車の周囲をガードしたり、情報を収集することが可能です。
戦闘用ユニットと言うよりは、様々な局面で柔軟に運用できるマルチユニットと言うことでしょう。
一応武装としては……鼻の部分に魔法銃の系統の武器が内蔵されていて、発射することができます。
あとは、通常の格闘すなわち噛み付きや爪での攻撃も可能でしょう。
それ以上の武装は、確認できません。
ただ、口の噛み合わせが特殊な機構になっています。
先端は鋭い牙のパーツがありますが、奥の部分は、柔らかい粘着性のパーツを装備していて、様々な物にフィットして固定することができます。
つまり口を使ってしっかり掴むことができると言うことです。
したがって、剣を噛ませて武器として使わせることも可能です」
なるほど。
攻撃にも使えるし、警戒任務や哨戒任務もできるということか。
優秀じゃないか、子犬たち、いや、ウルフたち。
「『ウルフユニットモード』起動時には、『クマゴロウ』にも変化があります。
オープンした背の部分は、ウルフユニット排出後は、コックピットになります。コックピットとは、騎乗する場所と理解してください。
つまり『クマゴロウ』を騎馬のように使って、戦うこともできるわけです」
そんな機能まであるのか。
実際に確認すると……確かに開いた背中がそのままになっていて、中には椅子のようなものが内蔵されている。
実際そこに座ってみる。
すると短かった背もたれが、ぐっと伸びてきてフィットした。
同時に後方からアームが伸びて、ローブのようなものを、後から俺にあてがった。
これを着ろと言うことなのか?
「それは、このモードに内蔵されている装備で、任意に利用することが可能です。
『ベルセルクコスチューム』という名の装備で、フード付きローブです。
高い防御力を持っています」
そんなものまで……。
俺は、袖を通してみた。
意外に軽い。
ローブには、全体にクマの毛のようなものが付いている。
クマの毛皮のローブみたいな感じだが、実際の材質は違うようだ。
触ると固い感じなのだが、重くは無い。
そしてなぜかフードのところが、クマの頭のデザインになっている。
耳もついている。
口から下がない状態で、そこから自分の顔が出るのだ。
これは、はっきり言って、めちゃくちゃ“恥ずい”のでは?
そしてこれはもしや……伝説の『着ぐるみアーマー』というやつではないだろうか?
何かの英雄譚で、読んだ記憶がある。
まぁそれはどうでもいいんだが。
とにかく、これを着て戦うのは、恥ずかしすぎる。
ここで着てしまった事は、大失敗だ。
と思っていると……
「先輩、めっちゃ可愛いです!」
「うんうん、ヤマト君、素敵!」
「ヤマト君って、何でも似合うのね」
「なんかいい。それ着て生活したら?」
ラッシュ、クラウディアさん、フランソワさん、イリーナさんが、ニヤニヤしながらそんなこと言った。
そんなこと言われると……なおさら恥ずい。
ラッシュとクラウディアさんは、本気で喜んでる感じだけど、フランソワさんとイリーナさんは、軽く俺で遊んでる感じだ。
俺は、『クマゴロウ』を降りて、『ベルセルクコスチューム』も脱いだ。
ラッシュたちが着たいと言うので渡したら、喜んでキャッキャ言いながら順番に着ている。
みんなで、可愛いとか言いながら、大盛り上がりだ。
クマゴロウが四体いるから、四人分の『ベルセルクコスチューム』が出せてる。
そんなに気に入ったなら、みんなで着ればいいんじゃないだろうか。
ちなみに、俺は絶対に着ないけど!
そしてそもそも、そんなに可愛くはないと思うんだが。
フードの部分のクマ顔は、まあまあリアルだと思うけど……。
まぁ防具として優秀なら、接近戦をするラッシュとかが使う分にはいいと思う。
ただ女子四人全員がこれを着ているのは……俺的には、微妙でしかない。
改めて思うが、この武装の開発者は、“遊び心”という名の“おふざけ”をしているのではないだろうか。
あえてクマの顔をつける必要ないはずだ。
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